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河野消費者担当相が霊感商法対策へ

【独自解説】霊感商法検討会出席の紀藤弁護士が「相談窓口」に関する3つの改善案を提言、被害者救済に必要なのは「刑事事件の処罰対象になること」

 いわゆる“統一教会”の問題を巡り、霊感商法など悪質商法へのさらなる対策が求められる中、8月29日、消費者庁が「霊感商法」の対策を検討するための「霊感商法対策検討会」の初会合を開きました。会合に出席した紀藤正樹弁護士が、今後検討会で議論すべき問題を解説します。

「霊感商法対策検討会」のメンバー

 会合はインターネットで一般公開され、河野消費者担当相は「“霊感商法”は『物品の販売』ということだが、“寄付の問題”も指摘されている。『消費者契約法』のみならず『特定商取引法』といった、消費者庁が所管する法令の中でどのような対応ができるのか、遠慮なく議論をいただきたい。場合によっては、消費者庁の担当の枠を超え、政府に対して提言するということになるかと思う。境界を定めずにご自由にご議論いただきたい」とコメントしました。

2018年に改正された「消費者契約法」

 河野大臣が議論を促した2つの法律ですが、まず「消費者契約法」は2018年に改正され、取消・無効の範囲が拡大されました。「悪霊が憑いている。この壺を買えば悪霊は去る」と言った“霊感商法”も対象になり、契約から5年以内なら取消が可能となっています。

「特定商取引法」とは?

 もう一方の「特定商取引法」は、商売の仕方自体を規制するもので、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的としています。違反すると「行政処分」「罰金」「懲役」が科せられます。

紀藤正樹弁護士

Q.“霊感商法”は、「消費者契約法」だけでは対応できないのですか?
(紀藤弁護士)
「この場合民事事件になるんですが、民事の場合は、被害者が身銭を切って裁判をすることになりますので、被害金額の低い方だとなかなか難しくなります。ですので、全員を救済しようとなると、刑事事件の処罰対象になるようにして、警察が動くようにしないといけないと思います。警察が動くとなると、組織犯罪として組織的に加害者を処罰できます。『特定商取引法』は、マルチ商法以外に訪問販売や通信販売も対象なので、そういう中に“霊感商法”も入れて罰則を付ける、という手もあると思います。『特定商取引法』は、“目的不告知”=目的や正体を隠すことも禁止されていますので、宗教であることを隠しにくくなります。“統一教会”は、正体を隠すことを繰り返していますので、『特定商取引法』は馴染むんじゃないかと思います。どちらにしろ『消費者契約法』一本では、“霊感商法”と言われているものを全部救うことはできないと思います」

献金や寄付は対象になる?

Q.献金や寄付の場合も適用できるのでしょうか?
(紀藤弁護士)
「『消費者契約法』は、契約を前提としています。形がないサービスも適用されるので、例えば“お祓い”であっても、お金を払って“お祓い”というサービスを提供されているので、契約になります。ただ、『献金』というものが民法上どういう性質のものか、はっきりしていないのです。『献金』は“贈与”なのか、“落としたもの”なのか、という議論さえあります。神様に捧げたものは、そこに“落としたもの”で、それを神主や住職がもらうという発想もあります。『無主物先占論』というのですが、持ち主がいないモノは誰がもらっても良いという考えです。『喜捨=喜んで捨てる』 という考えもあるので、法的に献金や寄付が『贈与』なのか『無主物先占』なのかという議論があって、法律上も民法学者の中でも定まっていないんです。ですので、まずは定めていただかないと、『消費者契約法』の対象になるかどうかも分からないんです。今回の会合に民法学者も二人入っていますので、二人にも検討していただきたいと思っています。『消費者契約法』の対象では無いとなると、新法を作らないといけません」

Q.一旦信者になって継続的に献金をしている場合は、どういう法律で対処できるんでしょうか?
(紀藤弁護士)
「2018年の改正で『消費者契約法』は、“だます行為”に加えて“状況の利用”も取消の対象にしています。教団が信者に行うマインドコントロールは、“だます行為”とウィークポイントを突くなどの“状況の利用”の複合的な方法なんです。一旦騙された人は、教団と依存関係を続けるので、ウィークポイントを突くとお金を出し続ける状態になります。こういう状態の継続利用も『消費者契約法』の取り消し対象にして、『特定商取引法』でも継続的な行為も対象にすれば、規制できると思います」

仏の“カルト認定”の基準

Q.今の法律で、“統一教会”を一気に解散させることは可能なんでしょうか?
(紀藤弁護士)
「解散命令は宗教法人法に定められています。しかしそれを出す基準が無いんです。無いことが混乱をきたしている原因なので、例えばフランスの『セクト規制法』などを参考に指標を作ることが重要だと思います。」

紀藤弁護士が提言する3つの問題意識

Q.「霊感商法対策検討会」に出席してみて、この会合への要望などありますか?
(紀藤弁護士)
「3つの問題意識があります。まずは、民間の相談窓口を一度調査するべきだと思います。日本脱カルト教会・仏教相談センター・日本基督教団など、民間団体にも相談窓口があって、個別の集計があります。行政が運営する消費生活センターなどの相談だけでは、全部を拾いきれないと思います。次に、相談窓口を民間委託することも必要ではないかと思います。“カルト的宗教団体”に関する相談には、専門性が必要です。国だけに相談窓口を置くことが、本当に正しいのでしょうか?最後に、カルト側から見た場合、“中立的窓口”を設置すべきです。相談窓口は、カルト側から“サタンの窓口”と言われ、信者は相談しにくいんです。過去の例でも、こちらには相談に来なかったということがあります。例えば『いのちの電話』みたいな窓口は、貴重な窓口だと思います」

(情報ライブミヤネ屋2022年8月30日放送)

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