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梅宮アンナさんも体験した「実家じまい」の苦労

【独自解説】5年間で15倍!急増する「実家じまい」の相談、行動を起こす際のポイントは?貸すべき?売るべき?“負の資産”を残さない方法を専門家が解説

 2022年、父・梅宮辰夫さんが遺した邸宅を売却した梅宮アンナさん。彼女のように「実家じまい」について考える人が今、増えています。ライフステージの変化に伴い、多くの人が直面する実家の持て余し。「実家の整理」に関する相談件数は、年間約4万件近くに達しています。そんな実家や空き家の処分について相談を受ける、NPO法人空家・空地管理センター代表理事の上田真一さんが「実家のしまい方」について解説します。

※梅宮アンナさんの実体験は、関連記事リンクよりご覧ください。

“負の資産”を残さないために…「実家じまい」の実情

NPO法人空家・空地管理センター代表理事 上田真一さん

 上田さんによると「実家じまい」とは、終活の選択肢、または空き家となった実家に区切りを付け“負の資産”を残さない手段のこと、を指します。

Q.住み続ける場合は負の資産にはならず、空き家になると負の資産になるということですか?
(NPO法人空家・空地管理センター代表理事 上田真一さん)
「“経済的な負の資産”という面ももちろんあると思いますが、やはり『実家をどうしよう』と悩まれる方は非常に多いので、“精神的にも負担になる”という意味での負の資産という形にならないように、ということです」

「実家じまい」の現状

 実家の整理の相談件数は、2018年は約2500件でしたが、2022年は12月9日までの時点で約3万8000件に上り、5年間で約15倍と急増しています。実家を手放すきっかけは、「住む人がいない」「両親ともに亡くなった」「維持管理が大変」などが多くあげられています。また、空き家を売却するまでの期間について、上田さんは「相談から1年未満と3年以上の二極化しているイメージ。実家を手放したくないと相談に来るが、何から手をつければいいか分からず、行動を起こせない人が多い」と言います。

Q.「実家じまい」をすることが家族間で決まっていればいいですが、その一方で何から始めたらいいから分からなくて、売却するまでの期間が延びてしまう、という方もいらっしゃるのですね?
(上田さん)
「そういうケースも非常に多いですし、あとは親御さんが『実家じまい』『自宅じまい』に後ろ向きな方も非常に多くいらっしゃるので、そうなると期間が長くなってしまいます」

Q.住んでいる両親が「実家じまい」に向けて動いてくれたらいいですが、そうでない場合は子ども達もなかなか言いにくいですよね?
(上田さん)
「そうですね。最後は親御さんに全部決断してもらわないといけないので、お子さん達ができることは働きかけであったり、相談をしたりというところなので、どうしても時間が経ってしまいます。女性のほうが長生きなので、最後は女性が決めるケースが多いのですが、やはり『お父さん(夫)との思い出』を大事にされて、決断ができないという方も多いです」

経験者が語る「実家じまい」の難しさ

大井あゆみさんの実体験 (©大井あゆみ/二平瑞樹(光文社))

 メディア運営系の会社代表でライターの大井あゆみさんは、「実家じまい」の実体験を執筆し、半年にわたった実家の整理について紹介しています。大井さんは両親が60代前半で、32年間住んだ大分県の実家を売却し、現在は子ども達が暮らす東京で、賃貸住宅に暮らしています。大井さんから両親へ「実家じまい」を提案したということですが、そこに至るまでには「両親を住み慣れた実家から離すことが、本当に2人のためになるのだろうか?」「私と弟の実家がなくなってしまうのは、すごく寂しいことなのでは?」という葛藤もあったと言います。

Q.大井さんの場合はご両親の理解があったと思いますが、人間関係が全くない場所に行くとか、知らない土地に住むというのは、歳を重ねるごとにハードルが高くなっていきますよね?
(上田さん)
「そうですね。早いうちから相談を始めておくのはすごく大事だと思います。ご両親が亡くなるのが見えてきてしまうと相談もしづらいですし、親としても素直に受け入れづらいので、早めに相談できたことが、おそらく大井さんのケースでも大事だったのではないかと思います」

Q.子どもからすると、親にどう話し始めたらいいか迷うと思いますが?
(上田さん)
「『しまう』ということを目標にせず、まずは実家について家族で話し合うことでいいと思います。例えば、『将来、体が弱ったときの住まいをどう考えている?』とか、『私たちは離れて住んでいるから、どうしたらいいかをそろそろ考えていかないと』という、話しやすいところからでいいと思います」

祖母の家は「実家じまい」できず… (©大井あゆみ/二平瑞樹(光文社))

 大井さんの場合、ご両親とは話し合いの結果「実家じまい」できましたが、母親と祖母の間では、祖母に「私が死ぬ前に実家を処分なんて、財産目当てじゃないのかい?」と言われそうだということでなかなか話し合いができず、やがて祖母が認知症になり、相談できないまま亡くなったため、祖母の実家は現在も手つかずのままだということです。大井さんは「我が家では、母が積極的にお金の話をしてくれたが、母は祖母と『実家』に関する話し合いができなかったことを、とても後悔していた」と言います。

Q.親が突然認知症になった場合、話しが上手くできないということも考えておかねばなりませんね?
(上田さん)
「そうですね。親が認知症になってしまうと、親の自宅、実家は原則として売却ができなくなってしまいます。認知症になってしまうと、裁判所が成年後見人をつければ売却できますが、これも本人が売却していたであろう理由が必要になります。例えば、片づけが大変とか、管理が大変、今高く売れるから、という理由では、裁判所は許可をくれません。老人ホームの費用が足りないから、元の家を売って老人ホームの費用に充てる場合などは許可をくれますが、原則として売れなくなってしまうというのが、非常に大きな問題としてあります」

「貸す」場合と「売る」場合のポイントは?

戸建てに必要となる年間の維持費(地方)

 地方の戸建ての年間維持費は、固定資産税や都市計画税、水道、電気、庭の剪定費など、年間20万~30万円ほどかかるといわれています。

Q.誰も住んでいないけど、とりあえず置いておこうとしても、維持管理費は大きいですね?
(上田さん)
「そうですね。例えば『雨漏りした』なんてことになると、何百万という費用が追加でかかってくることもあります。人が住んでいない家を管理するのは、非常にお金がかかるのです。都市部の戸建てだと税金も大きいですし、隣の家も近いので、木なんかが越境してしまうと、役所を通してすぐにクレームがくることも多いです」

「実家」はどうするべき?

 それでは「実家」は、売る?貸す?住む?どうすればいいのでしょうか?空き家の多い地域では、売却や賃貸に苦労することもあるため、まずは「地域名 空き家」で検索すると、その状況や目安を調べることができるということです。

Q.日本全国どこでも出てくるのですか?
(上田さん)
「そうですね。今、自治体で空き家に関する情報はまとまっていたりするので、空き家バンクや空き家の計画のようなものを確認できます」

実家を「貸す」場合のポイント

 「賃す」場合は、事前のリフォームなどが必要になってきます。外壁や水回り、屋根を直すなど、費用が数百万円単位になります。賃貸で損をしないための目安は、家賃10万円以上で、リフォーム代が10年以内に回収できるかがポイントだということです。

実家を「売る」場合のポイント

 上田さんは、「貸主責任のリスクやリフォーム費用が高額なことから、売却が多い。賃貸を選ぶ人は限られる」と言います。「売る」場合は、まず信頼できる不動産会社を探すことが必要です。田舎であれば、空き家バンクも利用できるということです。

Q.移住したい人とマッチングができれば、一番いいですよね?
(上田さん)
「そうですね、今は田舎に住みたいっていう方は結構いらっしゃるので。ただ空き家バンクなどでも、すぐに使えるような家は取引に繋がっていきますが、そうでない場合は売れなかったりもします」

Q.「建物付き」と「更地」、売るならどちらが良いのでしょうか?
(上田さん)
「住宅が建っているとすると、生活をするための土地なので、ビルなどと比べると固定資産税や都市計画税など、税金が安くなります。しかし解体して更地にしてしまうと、ビルを建てることも駐車場にすることもできるということで、税金が上がります。ですので、建物が付いたまま売却活動をして売れたら解体する、という方法もありますが、やはり購入する側としては、更地になっていたほうが広さや日当たりなども確認できますし、特に都市部、大阪市内などは、土地にいっぱいに建物が建ってしまって、大きさがよく分からない土地も結構あったりするので、そういう意味では解体をしたほうが、早く高く売れる可能性もあります」

プロが提言する「実家の整理」の方法

「実家の整理」で困る物 (©大井あゆみ/二平瑞樹(光文社))

 実家の整理をする中で、大井さんが一番処分に困ったものは「仏壇」だと言います。仏壇を処分する場合、まずは「魂抜き」という、仏壇にお経をあげて魂を供養する儀式のために、お布施が数万円かかり、さらに供養業者に依頼するか、自分で粗大ごみに出す選択をしなくてはならないということです。

Q.仏壇を粗大ごみに出すというのは、抵抗があると思いますが?
(上田さん)
「扱いとしては家具になるので、粗大ごみとなっていますが、金属も結構使われているので、仏具店や寺などに相談をすると引き取ってくれるところもあります」

プロが提言する整理方法

 (一社)実家片付け整理協会の渡部亜矢代表理事は「片づけは思い入れの少ないモノから!」としていて、実家の整理はまず生活動線(玄関・廊下・階段・トイレ・部屋の床)から始め、その次に生活空間(リビング・寝室・クローゼット・キッチンなど)、そして書斎・趣味の部屋など時間のかかるところを後にすると、はかどるということです。処分に迷うときは「いる」「いらない」に分け、3秒以上迷ったら「一時保管する」という3つの法則で進めることを提言しています。

Q.時間をかけて考える、ということですか?
(上田さん)
「詰まってしまうと、もう全部が捨てないものになってしまうので、一回横に置いておいて、また後で考えるということです」

Q.通帳や貴金属などは、事前に確認しておかなければなりませんね?
(上田さん)
「そうですね。財産の一覧みたいなものは、すぐに渡さなくていいので、できれば親御さんのほうで作っておいて、遺言書なんかと一緒に挟んでおいてあげるといいと思います」

「実家じまい」で複雑な胸中に… (©大井あゆみ/二平瑞樹(光文社))

 大井さんは「実家じまい」を終えたときに母親から、「実家を売ってごめんなさい」とメッセージが来たと言います。その真意を問うと、「子どもたちの実家がなくなってしまって、それでなんか悪いなって思ってね」と言われ、「そうか、お母さんは私たちの心配をしてくれているんだ」と感じたということです。大井さんは「親が元気なうちに『実家じまい』をすることは、すべての親に当てはまるものではなく、親がどう生きたいか、コミュニケーションを取った上で進めていくことが大切だと思う」と話しています。

Q.実家があると、兄弟や親戚が集まれる場所がありますが、それを売ってしまう罪悪感が親御さんにはあるということですね?
(上田真一さん)
「そうですね。やはり『実家はみんなのもの、家族のもの』という意識がありますので、親御さんも悩みますし、お子さんも悩みますし、みんなで話し合っていかなければいけないことだと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」 2022年12月19日放送)

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