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【独自解説】容疑者4人の取り調べで強盗グループ全容解明なるか?ポイントは「携帯履歴」「金の流れ」そして「供述の矛盾」専門家が解説
2023年2月8日 UP
2月7日、全国で相次ぐ連続強盗事件の指示役「ルフィ」とみられる4人のうち、2人が日本へ強制送還されました。残る2人についても、現地での裁判が棄却され送還されることが決まっています。元警視庁警視の櫻井裕一氏が、今後の捜査のポイントを解説します。
2月7日、フィリピンから日本へ移送されたのは、今村磨人容疑者(38)と藤田聖也容疑者(38)です。2人は被害額60億円以上の大規模な特殊詐欺事件に関与したとして、移送中の航空機内で「窃盗の疑い」で逮捕されました。千葉・成田空港に到着後、東京都内の警察署に身柄を移し、特殊詐欺事件について本格的な調べを始めると共に、強盗事件の指示役とされる「ルフィ」との関連についても調べる方針だということです。
一方、残る渡辺優樹容疑者(38)と小島智信容疑者(45)については、フィリピンで続いていた裁判が送還の妨げとなっていましたが、2月7日に裁判所は公訴を棄却しました。この決定を受け、フィリピンのレムリヤ法相は「2月8日に2人を強制送還する」としています。
Q.フィリピンでの移送の際は、何台もの車列に囲まれるなど厳戒態勢がとられていましたが、襲撃の恐れがあったということなのでしょうか?
(元警視庁警視 櫻井裕一氏)
「それが一番だと思います。襲撃の恐れがあるため、武装した警官も大勢いますし、当然厳戒態勢で飛行機まで連れて行かなくてはいけないという、フィリピン政府の考え方だと思います」
Q.空港内を歩かせるのにも危険があったわけですよね?
(櫻井氏)
「はい、狙撃される可能性がありました」
Q.先に2人の容疑者が送還されましたが、あと2人の帰国を待って取り調べを始めるのでしょうか?
(櫻井氏)
「先に着いた2人は、到着時点で弁解録取の手続きを取ってから、すぐに取り調べに入ります」
Q.勾留期限を考えて、まずは窃盗で逮捕して、特殊詐欺事件・広域強盗と逮捕していく流れがあるのでしょうか?
(櫻井氏)
「窃盗では勾留期間が20日間ありますので、その間に容疑をかため、起訴に持っていきます。その後、強盗事件の証拠をかためて次々に逮捕していく、もしくは窃盗で起訴にならなくても、特殊詐欺事件の別の件で再逮捕を繰り返していくのではないかと思います」
Q.4人が所持していた携帯電話やタブレット端末など合計24台をフィリピン当局が押収して、証拠として日本側に引き渡したということですが、まずは逮捕されている実行役と4人の指示役とのやり取りを照らし合わせていくのでしょうか?
(櫻井氏)
「そうですね。一番の壁は、押収した携帯電話について『これは俺の物ではない』と言う可能性があることです。その場合は、その携帯電話は誰が使っていたのかを決めなくてはなりませんので、壁があります」
Q.押収した携帯電話に付いた指紋などは、証拠にならないのでしょうか?
(櫻井氏)
「指紋が一致すればいいのですが、例えば2~3人で回して使った場合、この事件のときは誰が使ったのかを判断するのは非常に難しいと思います」
Q.今後の捜査のポイントは、携帯電話の履歴情報とお金の流れの2つなのでしょうか?
(櫻井氏)
「そうです。携帯の解析もそうですが、お金の流れもポイントです。60億円を奪って2000万円ずつ何回か運んだとしても、まだまだ余っています。その金がどこに行っているのか、その金を回収しているのは誰なのか、これを解明していかないと組織には繋がらないと思います」
Q.指示役の4人の中の誰かがトップで、「自分は怖くて言うことを聞いただけ」という供述をする容疑者も出てくると思いますが?
(櫻井氏)
「あると思います。供述の中でお互いがお互いを責め合うようなこともありえます。しかしそうなると供述にボロが出てくるので、そうなると供述の内容から容疑の裏付ができることも考えられます」
Q.この4人の上には何層にも上役がいるとされていますが、組織の頂上まで暴けるのでしょうか?
(櫻井氏)
「今後の捜査に期待するしかないのですが、この4人の取り調べで捜査員は取調会議をして、容疑者の供述の矛盾点を見ていきます。『この容疑者がこう言っている』というというのは容疑者には言えませんが、取調官はその情報を持って取り調べをしますので、取調官の技術で上手く引き出していければいいなと思っています」
(「情報ライブミヤネ屋」 2023年2月7日放送)