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【独自解説】来年にも「札幌五輪」決定!?バッハ会長の本音は?招致に必要なコトは?金銭面・条件面は大丈夫?専門家「IOCにも歩み寄りが必要」
2021年12月20日 UP
2030年冬季オリンピック 札幌が有望視!
12月13日、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長が、札幌テレビの単独インタビューに応じ、2030年冬季五輪の“札幌招致”について「バッハ会長から高評価を得た」と話しました。2022年にも開催地が決まりそうですが、果たして札幌になる可能性は高いのでしょうか?バッハ会長の本音や、そのために必要となる今後の動きについて、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが解説します。
Q.バッハ会長が2030のオリンピック開催地として札幌に関心を示しているようで「札幌にはすべてそろっている」と言っていますが、これは本音でしょうか?
(二宮清純氏)
「これは本音だと思います。というのも、バッハさんは1972年の札幌オリンピックの時にちょうど18歳。バッハさんは西ドイツの出身ですが、秋にはミュンヘンのオリンピックもあったわけです。一番多感な時期ですから、札幌に対する思い入れが強いっていうのは事実だと思います。ただ、もともと札幌は、2026年に立候補していたんです。ところが2018年が平昌、2022年が北京ということで、アジアの3大会連続は難しいだろうということで、2030年になったわけです。また、2018年に北海道胆振東部地震があったので、それで招致活動を一度中断せざるをえないという背景があったわけです。バッハさんは『2030年にはコロナはないだろう』と言っていて、自然災害やそういうことまでは見通せないとは思いますが、ただ、バッハさんが札幌を候補地として考えているのは本音だと思います。2020東京大会のマラソンや競歩を、東京が暑いということで北海道でしたということもIOCの提案だったわけですから、そういうところでも、まだ手応えはあると思います」

2012年の段階で猪瀬元東京都知事は、「2020年東京オリンピックは、40年前の五輪施設をそのまま使うので、『世界一カネのかからないオリンピック』なのです」と投稿していました。しかし、招致をしたときの予算はおよそ7340億円だったのに対し、結局総経費の見込みは1兆5000億円となり、当初の2倍以上となりました。
Q. これは延期や、国立競技場のデザインの直し、そしてコロナ対策などでお金がかかったということなんでしょうか?それとも、元々これだけお金がかかるものなのでしょうか?
(二宮氏)
「おっしゃったように、コロナ対策というものがありました。そしてテロ対策だとか、いろんなお金がかかったというのはその通りなんですが、もともとこの予算にはカラクリがあるんです。この7340億円の予算は、オリンピックのためにスタジアムを改修したり、建設したり、いわゆる“本体工事費”なんです。つまり周辺整備、例えば道路とかは含まれていないんです。IOCはコンパクトなオリンピックということを言ってますから、予算の見栄えをよくするために、数字を小さくしてるわけなんです。しかしそこは、あとになって『倍かかりました』というのではなくて、ちゃんと公にして、実際はこのくらいかかりますよと、はっきり市民に伝えるべき。『それでも開催意義がこれだけのものがありますよ』ということを問うんだったら、僕はいいと思います。ただ、東京大会も最初(の開催意義)は、東日本震災大震災からの復興だったわけです。それがコロナに打ち勝った証しとか、コンセプトがコロコロ変わりました。そうではなくて、『開催意義は何なのか』を、明確にすべきだと思います。そして、開催都市契約を結ぶのは市長さんです。実際今は、テロ対策だとか、コロナの水際対策とかで、非常に国の世話になり、国が財政保証をしているといっても、やはりオリンピックは都市開催ですから、これはやはり市長がどのように説明するか、力量が問われるんだろうと思います」
Q.1兆5000億円かかった東京オリンピックですが、これはもしコロナがなく、世界中からお客さんが訪れ、東京や福島、北海道、大阪などに人が集まってきていたら、それ以上の経済効果が得られたのでしょうか?
(二宮氏)
「そのインバウンドを中心とする経済効果が狙いだったのですが、外国からお客さんを入れることができなかったということで、そのあては完全に外れてしまったわけです。今回の札幌の場合、2030年がどうなってるか分かりませんけれども、2030年度末に(新函館北斗~札幌間の)新幹線が開通するんです。ですからおそらく、そのこととリンクする、ということがひとつ。そしてもうひとつは、1972年に、オリンピックをバネにして札幌は国際都市になりました。そのときに、市街地の地下街や地下鉄の整備が進んだんです。それが老朽化しているということは、(整備を)もう1回やりたいと。だからこそ、『今回の開催意義はこれですよ』っていうことを、私は出す必要があるのではないかと思います」
不平等な開催都市契約「IOCも謙虚な姿勢必要」

東京オリンピックの開催都市契約とは、東京都・IOC・JOCの3者の間で結ばれる契約で、IOCに対する請求の補償については、「東京都・JOC・大会組織委員会は、IOCおよびその関連会社に発生するすべての損害・訴訟・損失・支出などを補償・防御し免責する義務を負う」と定められています。さらに、「開会中止の権限はIOCのみが持ち、中止の判断は戦争状態や内乱など、IOCが『参加者の安全が深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠』がある場合」とされています。
Q.これはつまり、すべての権限はIOCにあるのに、IOCはリスクを背負わないことになってる、ということですね?
(二宮氏)
「そうですね。特に今回の東京オリンピックで、『アルマゲドンになっても開催するんだ』っていうIOCの幹部の方もいらっしゃいましたけれども、今まではそういう一部の人しか知らなかったことが、明らかになってきたなと思うんです。今、開催都市に手を挙げるところが非常に少なくなってきてる中で、IOCも、このオリンピックムーブメントをレガシーとして伝えたいのであれば、歩み寄らないといけません。『自分たちは全て正しいんだ』と、赤字なったら開催都市に全部押し付けて、自分たちは高級ホテルで貴族的な優雅な生活を送っている、ということが今回明らかになりましたけれど、そうではなくて、やっぱり歩み寄って、お互いにオリンピックをやりましょうよと、そういう謙虚な姿勢が求められると思います」
招致のカギ

北京オリンピックは、カザフスタンのアルマトイとアピール合戦になり、最終的に44対40で中国での開催が決まりました。2030年冬季オリンピックでは、札幌以外にもソルトレークシティー(アメリカ)やバンクーバー(カナダ)など、計5都市が名前を挙げています。二宮さんは、招致するためには「北海道民への説明力とIOCに対する交渉力がカギとなるため、秋元札幌市長の力量が問われることになる」と提言しています。
(二宮氏)
「IOCも2019年にルールを変えて、今は投票方式ではないんです。一本釣りするんです。ですから、2030年の夏の大会が、もうブリスベンに決まっちゃったんです。ですから、恐らく第1ステージ・第2ステージで分かれて審査をするんですけど、今年の秋にはもう決まる可能性が高いと思うんですよね。このいい点は、投票しないわけですから裏金が飛び交わないわけです。しかし悪い点として、市民や住民の意向が反映される前に決まりかねない、ということがあるわけです。来年の1月に札幌市は、住民や市民に説明すると言っていますが、ここで市長が、どれだけ開催意義を自らの言葉で問えるかどうか、それならやっていいよねと思ってもらえるかどうか、ここが一番大事な点になってくるだろうと思います」
(情報ライブミヤネ屋 2021年12月15日放送)