9719「派遣か?派兵か?2」

2025 . 1 . 10

9719

 

 

2024年10月24日の「ミヤネ屋」で、北朝鮮が1万2000人の兵を、

「ロシアの応援のために送る」

方針だというニュースを伝えました。その見出しが、

「ロシアに 1万2000人派兵か?」

でした。しかし、一般的に「派兵」は、

「戦地(敵がいる場所)に兵を派遣すること」

ですから、これでは、

「北朝鮮が、ロシアを相手に戦うために兵を送る」(つまり「ロシアを攻撃」する)

ように見えてしまいます。

そこで「ロシアに」の「に」の代わりに「支援」にして、

「ロシア支援」

にすると落ち着きます。これは一種の、

「合成の誤謬(ごびゅう)」

になっているのでしょうね。この日は、

×「ロシアに 1万2000人派兵か?」→○「ロシア支援 1万2000人派兵か?」

×「ウクライナ侵攻を続けるロシアに 1万2000人派兵」

→○「ウクライナ侵攻を続けるロシア支援で 1万2000人派兵」

としました。

年が変わって、2025年1月9日の「ミヤネ屋」でも、北朝鮮兵をロシアに送ったこと

に関するフリップで、

「北朝鮮兵のロシア派遣」

という一文が出て来ました。「兵」を「派遣」したと。これなら「ОK」ですね。

「兵を派遣する」=「派兵」

ですが、「派兵」には「2つの意味」があって、「1番目の意味」は、

「敵国と戦わせるために、戦地へ兵を派遣すること」

で、「2番目の意味」として、

「戦闘応援・支援のために、友軍・同盟国に兵を派遣すること」

もあると考えられますね。

「国語辞典」で「派兵」を引いてみました。

「三省堂国語辞典」=(文)軍隊を派遣すること

「精選版日本国語大辞典」=を派遣すること。兵をさしむけること。

「デジタル大辞泉」=軍隊を派遣すること。(例)海外に派兵する

「明鏡国語辞典」=戦地や駐留地に軍隊を派遣すること。(例)海外に派兵する

「新明解国語辞典」=軍隊を派遣すること。(例)海外派兵

「岩波国語辞典」=軍隊を派遣すること。⇔撤兵(例)海外派兵

「現代国語例解辞典」=を派遣すること。

「新選国語辞典」=軍隊を派遣すること

「大辞林」=軍隊をある地域に派遣すること。出兵。(例)海外に派兵する

これで見ると「軍隊を」派遣するとする辞書と、「兵を」派遣するという辞書があります

ね。分けてみましょう。

*「軍隊」(7種類)=三省堂国語辞典・デジタル大辞泉・明鏡国語辞典・新明解国語辞典・岩波国語辞典・新選国語辞典・大辞林

*「兵」 (

種類)=精選版日本国語大辞典・現代国語例解辞典

でした。ポイントとしてはもう一つ、「軍隊」や「兵」を、

「どこへ派遣するか?」

これについて書いてあったのは。

*「明鏡国語辞典」=『戦地や駐留地に』軍隊を派遣すること。

*「大辞林」=軍隊を『ある地域に』派遣すること。出兵。

で、「明鏡」が一番分かりやすいかなと思いました。

令和ことば事情8350「派遣か?派兵か?」もお読みください。

 

(2025、1、9)