「待兼山奇談倶楽部」とは、大阪大学に最寄りの「待兼山駅」の駅名が変わることをきっかけに「9月で閉店」する「1階が本屋さん・2階が喫茶店」という兄弟がやっているお店の2回の喫茶店で、閉店までの6か月間、月に1回、「待兼山」にまつわる「不思議な思い出話を聞く会」を開こうということになって、地元の人でも知らなかった「歴史」が語られる。それを「本」にして残そうという、そういうお話。
実際の阪大の最寄駅は「石橋駅」で、それが「阪大前石橋」に駅名変更されたが、これは「小説」だから、阪大の敷地内に実在する「待兼山」を「駅名」にしたのかなと思っていたのだが・・・。
小説の月刊誌で連載されていたもので、僕は生まれて初めて「小説の月刊誌」を毎月買って読んでいた。こういやって単行本・一冊にまとまると、また趣が変わる。全体を通しての「背骨」みたいなものが見えてきた。そして「メタバース的世界」という最後の展開も、この単行本を読んで初めて分かった気がした。
「第1話」から「第7話」までなのだが、スタートは「待兼山ヘンジ」。1年に1度だけ、ビルの間から見える夕日の風景。そして「ロッキー・ラクーン」はビートルズと競馬、「戦場」ならぬ「銭湯のピアニスト」はストリッパー、「ジェイクとあんかけうどん」は戦死した息子とフィリピン人ハーフのボクサー、「恋するマチカネワニ」は化石とボーイズラブ、「風をあつめて」は朝鮮戦争と反戦運動・反戦歌に「はっぴいえんど」、そして「青い橋」と「赤い橋」。
うわー、こうやって見ると題材がてんこ盛り!お話の玉手箱やなあ。
「喫茶マチカネ」、行ってみたかったなあ・・・ってそれは実在しないのか、「小説」だから。楽しかったです!
そして不思議なことに、本当に家の近くの本屋さんが、この7月31日で「閉店」になったのでした。このタイミングで、かあ・・・。そこの、この本のPOPには、増山さん自筆も文字が書かれて飾られていました。忘れられない一冊になりました。