9474「『真っ赤』とはどんな色か?3」

2024 . 7 . 9

9474

 

 

令和ことば事情9473「『真っ赤』とはどんな色か?」の続きと言うか、以前書きかけたまま(2004年1月11日)で、そのあとなんと「20年間」も、ほったらかしだったメモが見つかったので、それを出しておこうかなと。当時は、

「『真紅』か?『深紅』か?」

というタイトルでした。まずグーグル検索で(2004年1月11日)、
「真紅」・・・・7万4900件
「深紅」・・・・5万6700件
と、「真紅」が優勢。
『新明解国語辞典』を引くと、「深紅」の見出しはなくて「真紅」だけ載っていました。
「真紅」=濃い紅色。まっか。(表記)「深紅」とも書く。
とあるではないですか!?おんなじなの?
『新潮現代国語辞典』では、
「シンク(真紅・深紅)」=「まっかな色。しんこう。」
とやはり同じ表記、同じ意味でした。どうも「真紅」も「深紅」も同じ色みたいですねえ。
『日本国語大辞典』でも、「真紅」と「深紅」は同じくくりになっていて、
「しんく(真紅・深紅)」=「濃い紅色。正真のべに色。茜染(あかねぞめ)などのにせ染めに対していう。しんこう。」
とありました。染物の言葉なんですね、もともとは。用例では「深紅」を使っているのは「1907年」の夏目漱石の『虞美人草』を。また「真紅」の例としては「1951年」の大岡昇平『野火』を引いていました。どちらでもお好きな方をどうぞ。

(2004、1、11)


(追記)
1月11日の「日経新聞」の日曜版に連載されている「美の美」、特集は「琉球の宝物(中)」で今回は、
「強烈な太陽が生んだ紅型の色」
という大きな見出しがあって、「紅」の色について書いてあります。リード部分は、
「黄、赤、朱。鮮やかな色と大胆な図柄。紅型(びんがた)は沖縄を代表する染織物だ。いつ、どのようにして誕生したのか分からない謎めいた宝物だが、そこには沖縄ならではのチャンプルー(混ぜ合わせ)精神が脈打っていた。」
とあります。そして、真っ赤な地に龍が描かれた、
「紅色地龍宝珠雲文様紅型平絹袷衣装」
の写真がデーンと載っています。この、

「紅型(びんがた)」

というのも、「真紅」「深紅」に近いのかなあと思いながらこの記事を読みました。そして「紅(べに)」を「びん」と読むのが面白いと思うと同時に、「紅」を「べん」と読む、
「紅殻格子(べんがらごうし)」
を思い浮かべたのでした。あれも、赤いなあ。

(2004、1、19)

(追記2)
武庫川女子大学の佐竹秀雄先生からいただいた「スカーレットとは、何色か?」という質問に関する答えです。
*本当の「スカーレット」という色は『言泉』という大型の国語辞書がありますが、その最初に色名が色見本とともに挙げられています。そこには、「深紅」「緋色」「スカーレット」が別の色として掲げられています。そして、説明によると「スカーレット」はJIS慣用色名に含まれているということです。私が見た限りでは、「スカーレット」は(「深紅」よりも)「緋色」に明らかに近いようです。
しかし、これはあくまで現代日本語で、かなり専門的な色も入っていると思います。英語で赤系統の色がどれほど分類されているのか知りませんが、英語における赤系統の一般的な名前より、日本語で一般に使う色名のほうが多いのではないでしょうか。そのために、日本語のほうが多種類の赤が出てくるような気がします。
したがって、日本では「緋色ないしそれに近い色」が「スカーレット」と言えるのだと思います。しかし「深紅」は「スカーレット」とは言いにくいでしょう。
他方、英語の「スカーレット」の実情はわかりません。英語での色彩感覚では、日本語と違う基準があるのかもしれません。あるいは、ひょっとすると英和辞典などがあやしい。例えば、昔の翻訳家がいい加減な訳し方をしているために、そういう例があがっている可能性もないでもありません。

(2004、1、23)

(追記3)
近江源太郎監修『色々な色』(光琳社出版)という本によると、

「緋色(ひいろ)」=茜染めのわずかに黄みをおびた鮮やかな赤を指す色名ですが、もとは「緋(あけ)」「真緋(あけ)」といい、明るさを意味する「あか」と同じ意味を持っていました。火に通じ、「火色」(ひいろ)とも書きます。また「火」を「思ひ」の「ひ」にかけて「思ひの色」とも呼ばれます。熱い情熱をたとえたものでしょう。英語の「スカーレット」に当たります。

とありました。「火色」かぁ。そして「真紅」「深紅」については、

ベニバナだけで染めた色を「紅色(べにいろ)」「真紅(しんく)」「深紅(しんく)」などと称しました。

とあるほか、「紅(くれない)」については、

「ベニバナで染めた鮮やかな赤で、わずかに紫みによっています。『紅(くれない)』の名は『呉(くれ・中国)から伝わった藍』と言う意味の『呉藍(くれのあい)』が転訛したもの。当時、藍は染料一般をさしました。」

と書いてありました。

「くれのあい」→「くれあい」→「くれない」

か。勉強になりました。

(2004、2、15)

おかしいな。

これだけ詳しくいろいろ調べたのになぜ、ブログに出していないんだろうな?

 

 

(2024、7、9)