9458「つゆだくの『だく』」

2024 . 7 . 3

9458

 

 

あまり牛丼屋さんには行かないのですが、たまに行くので、

「つゆだく」

という言葉は知っています。

「つゆ(汁)を『だくだく』にかけること」

ですよね。この

「だくだく」

は、

「汗を、だくだくかく」

のように、

「液体が流れる様子を指す」

のだと思っていました。しかしきのう、ふと、

「あれ?もしかしたら『つゆだく』の『だく』は、『たくさん』が連濁して『だく』なのではないか?つまり『つゆだく』は『つゆだくさん』の略なのではないか?」

と思ったのです。「○○だくさん」という連濁で、まず思い浮かぶのは、

「子だくさん」

ですが、それを略して、

「子だく」

とは言いませんよね。だから、あまり気付かなかったのかもしれませんが。

『三省堂国語辞典・第八版』で「つゆだく」を引いてみると、やっぱりちゃんと載っていました。(載っていると思いました。)

*「つゆだく(汁だく)」=(俗)(どんぶり物などで)汁(しる)をたくさん入れること。(例)牛丼をつゆだくでたのむ。

これは「俗語」というよりも、もう、

「牛丼用語」

なのではないでしょうか?「丼物」と言っても、「うどん」や「親子丼」では言いませんよね。あとは、可能性として言いそうなのは、

「天丼」

かな。この語釈に、

「汁をたくさん」

とあります。やはり「つゆだく」の「だく」は「たくさん」だったのか。

念のため「だくだく」を引くと、

*「だくだく」=あせや血などが<たくさん/次から次へと>流れ出るようす。(例)あせがだくだく(と)流れる。

とあって、ここでも、

「たくさん」

という言葉が出て来ますので、「だくだく」も「たくさん」と関係あるかもしれません。

「汗がだくだくと流れるさま」は、

「汗だく」

と省略して言いますね。おお、「つゆだく」と同じ形だ!

例としては「汗」が挙げられていますが、

「血」

も語釈にあります。しかし「血」の場合は「だくだく」ではなく、

「どくどく」(ドクドク)

のような気がします。そして「ドクドク」になると「たくさん」よりは、

「擬声語」

のような気がします。「ドクドク(と)」は、

「体外に血が流れ出る様子」

を指していて、これが「ン」がついて、

「ドクンドクン」

だと、

「一定のリズムで、体内で血が流れる様子」

「血を流す心臓(ポンプ)の鼓動」

を表しているような気がします。そして「だくだく」も「どくどく」も「液体が流れる様子」ではあるのですが、単なる「水」が流れるのではなく、

「ある程度粘り気のある液体が流れる様子」

を指す気がします。

また「ドクドク」ではなく「ドキドキ」となると、もう完全に、

「胸(心臓)の鼓動」

を指しています。「ドキ」という鼓動によって流れる液体(血液)は「ドク」なのですね。液体の濃度によって、

「キ(ki)」という「イ母音」

が、

「ク(ku)」という「ウ母音」

になる。つまり、

「少し、籠った音になる」

ということなのでしょうか。

ものすごく観察されて作られてきた言葉なのかもしれません。

そんな気がしました。なかなか面白いですね!

 

(2024、7、3)