「病棟」シリーズの第3弾。
第1弾は「2024読書日記049」に書いた「後悔病棟」
第2弾は「2024読書日記073」に書いた「希望病棟」
どれも「同じ病院」の女性医師たちが主人公で、主人公は入れ替わる。
「第1弾」では「ルリ子医師」、
「第2弾」では「摩周湖医師」(変わった名前!)、
そして、この「第3弾」では金髪の元暴走族だけど両親が医師というお嬢様「香織医師(30代半ば)」と「看護師のマリ江(50)」のコンビが、半年だけの約束で「女性刑務所の医師と看護師」として派遣される。
その際に、
「胸に当てると患者の気持ち・つぶやきが聞こえる聴診器」
を二人で使って、受刑者の気持ちや境遇を知り、罪を犯した経緯を知る。そして出所した後の待遇改善がなければ、またここに舞い戻ってしまうので、その「原因を排除しよう」と奔走する二人。「バディもの」になっている。「犯罪」は「本人のせい」でもあるが、こと女性受刑者に限っては「社会のせい」である部分が大きいということを、著者は述べたいのではないか。
巻末の解説は、「無実の罪」で収監されたことがある元・厚労省次官の村木厚子さん。女性で、しかも無実とはいえ「刑務所」のような「拘置所」に収容された経験のある村木さんは、この小説には「3つのリアル」があるという。
1つ目は「罪を犯す人のリアル」
2つ目は「刑務所の中での暮らしのリアル」
そして3つ目が「世間(の目)のリアル」だと言う。
私も読んでいて「よくこんなに詳しく書けるなあ、実際に、かなり取材をされたのかなあ」と思った。
村木さんは、のちに、
「この仕事をしていて、一番つらいことは何ですか?」
と女性刑務官に聞いたことがあるという。その答えは、
「刑務所から送り出した人が、また帰ってきた時です」
と答えたという。
村木さんによると、近々刑法の改正で「懲役刑」「禁錮刑」が廃止され、「拘禁刑」が創設される。つまり「刑務所」は受刑者を懲らしめのために労働させる場所ではなく、その人が更生してやり直すために働いて教育を受ける場所に変わるのだ。
そういった時代の流れを、この小説から読み取ることができるだろう。