9142「やもお」

2023 . 10 . 5

9142

 

たまたま京都・三条の「ブックオフ」で見つけた、斎藤茂吉「赤光」の復刻本を読みました。あの有名な、母の臨終の際の情景を詠んだ、

「のど赤き 玄鳥(つばくらめ)二ツ 梁にゐて たらちねの母は 死にたもうなり」

で有名な歌集で、明治38年から大正2年までに詠まれた歌を収録しています。

その中に、

「上(かみ)の山の 停車場に下り若くして 今は鰥夫の おとうと見たり」

という歌がありました。この、

「鰥夫」

という難しい漢字の言葉、読み方は、

 

「やもを」(やもお)

 

だそうです。つまりこれは、

「『やもめ』の対語」

ですね。男女で、

「女=やもめ」「男=やもを」

ということか!「やもめ」は知っていたが「やもを」という言葉は知りませんでした。

大体「やもめ」は、

「寡婦」

と書きますよね。そして男の独り者は、

「男やもめ」

と言いますよね。

「女やもめに花が咲き、男やもめにウジが湧く」

と言うではないですか!あの「男やもめ」が「やもを」だったのか!

「三省堂国語辞典・第八版」を引いたら、「やもお」は、なんと、

「空見出し」

ですが載っていて、

「『やもめ(鰥夫)』を見よ」

となっていました。すごいな、「三国」!「やもめ」を引くと、なんと「2つ」も載っていました。

*「やもめ(寡婦)」=夫と死別した女性。後家。未亡人。

*「やもめ(鰥夫)」=妻と死別した男性。男やもめ。やもお。

漢字は違うけれども、やはり男女とも「やもめ」と言ったのですね。

そこから「やもめ」と「やもお」に分かれたのか?それとも「やもめ」と「やもお」が「やもめ」に統合されたのか?どちらなんでしょうか?

現状では「やもお」が使われていないことから考えると、「後者」のような気がします。

大変勉強になりました。

 

(2023、10、5)