「蕎麦を手繰(たぐ)る」
という表現があります。江戸落語などで出て来ますよね。
これを聞いて思ったのは、なぜ「蕎麦」は「手繰る」と言うのに、「うどん」は「手繰る」と言わないのか?ということです。ましてや「きしめん」をや。
「蕎麦」以外で「手繰る」ものを考えてみると・・・
「糸」「綱」「ザイル」「記憶(の糸)」
と言ったところでしょうか。つまり、
「細いもの」
は「手繰る」が、
「太いもの」は「手繰らない」(手繰れない)
のではないか?と思いました。
「手繰る」を辞書で引くと、『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『明鏡国語辞典』『現代国語例解辞典』などには、
「(糸状のものを)両手を交互に引いて手元へ引き寄せる」
「記憶などを、順を追ってたどる。一連の話などを順々に引き出す」
という意味はありました。やはり「糸」みたいに「細いもの」ですね!でも、
「蕎麦を手繰る」
は載っていません。
『新明解国語辞典』には、「たぐる」の「用例」の一つとして、
「そばをたぐる」
が載っていました!
そして『三省堂国語辞典』には、「3番目の意味」で載っていました!
*「たぐる」=(3)(古風)(そばを)いそがしくすする。
そうそう、「いそがしくすする」いい感じですね。そんな感じ、そんな感じ!「ズルズル」と「ゆっくりと」すすってはいけない。
『岩波国語辞典』にも載っていました。「(2)の3番目(ウ)」として載っていました。
*「たぐる」
(1)両手を交互に動かして、手元に引き寄せる。(例)綱をたぐる。
(2)たぐる=(1)ように(細長いものを)動かす。
(ア)たどって導き出す。(例)「記憶をたぐってみて分かった」「筋をたぐればそういう事だ」
(イ)相撲で、突っ張って来る相手の腕を引いて相手の体勢を崩す。(例)「たぐっておいて突き落とす」
(ウ)麺類を箸で口に運ぶ(例)「そばをたぐる」
これは、「例」は「そば」ですが、語釈は、
「麺類」
になってるなあ。いいのかなあ。「うどん」や「きしめん」も、たぐれるのかなあ?
『新選国語辞典』も「3番目の意味」で載せていました。
*「たぐる」
(1)手もとへくりよせる。(例)「ロープをたぐる」
(2)順を追って引き出す。(例)「記憶をたぐる」
(3)箸でつまんだそばを汁につけ、口からすすりこむ。
これこれ!「そば」で「そばつゆ」につけてから食べるところまでが「たぐる」ですよね!
「うどん」じゃないのよ「たぐる」は!(「飾りじゃないのよ涙は」的に読んでください。)
一応、グーグル検索(2月15日)では、
「そばをたぐる」 = 3200件
「蕎麦をたぐる」 =21万9000件
「蕎麦を手繰る」 =22万9000件
「うどんをたぐる」 = 1500件
「うどんを手繰る」 = 3430件
「きしめんをたぐる」= 5件
「きしめんを手繰る」= 9件
「ラーメンをたぐる」= 5件
「ラーメンを手繰る」= 2550件
ということで、やっぱり基本的に、「麺類」で「手繰る」のは、
「蕎麦・そば」
ということですね!「きしめん」は手繰らないのよ!(「手繰れない」のよ!)