8871「蕎麦を手繰る」

2023 . 2 . 16

8871

 

 

「蕎麦を手繰(たぐ)る」

という表現があります。江戸落語などで出て来ますよね。

これを聞いて思ったのは、なぜ「蕎麦」は「手繰る」と言うのに、「うどん」は「手繰る」と言わないのか?ということです。ましてや「きしめん」をや。

「蕎麦」以外で「手繰る」ものを考えてみると・・・

「糸」「綱」「ザイル」「記憶(の糸)」

と言ったところでしょうか。つまり、

「細いもの」

は「手繰る」が、

「太いもの」は「手繰らない」(手繰れない)

のではないか?と思いました。

「手繰る」を辞書で引くと、『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『明鏡国語辞典』『現代国語例解辞典』などには、

「(糸状のものを)両手を交互に引いて手元へ引き寄せる」

「記憶などを、順を追ってたどる。一連の話などを順々に引き出す」

という意味はありました。やはり「糸」みたいに「細いもの」ですね!でも、

「蕎麦を手繰る」

は載っていません。

『新明解国語辞典』には、「たぐる」の「用例」の一つとして、

「そばをたぐる」

が載っていました!

そして『三省堂国語辞典』には、「3番目の意味」で載っていました!

*「たぐる」=(3)(古風)(そばを)いそがしくすする。

 

そうそう、「いそがしくすする」いい感じですね。そんな感じ、そんな感じ!「ズルズル」と「ゆっくりと」すすってはいけない。

『岩波国語辞典』にも載っていました。「(2)の3番目(ウ)」として載っていました。

*「たぐる」

(1)両手を交互に動かして、手元に引き寄せる。(例)綱をたぐる。

(2)たぐる=(1)ように(細長いものを)動かす。

(ア)たどって導き出す。(例)「記憶をたぐってみて分かった」「筋をたぐればそういう事だ」

(イ)相撲で、突っ張って来る相手の腕を引いて相手の体勢を崩す。(例)「たぐっておいて突き落とす」

(ウ)麺類を箸で口に運ぶ(例)「そばをたぐる」

 

これは、「例」は「そば」ですが、語釈は、

「麺類」

になってるなあ。いいのかなあ。「うどん」や「きしめん」も、たぐれるのかなあ?

『新選国語辞典』も「3番目の意味」で載せていました。

*「たぐる」

(1)手もとへくりよせる。(例)「ロープをたぐる」

(2)順を追って引き出す。(例)「記憶をたぐる」

(3)箸でつまんだそばを汁につけ、口からすすりこむ。

 

これこれ!「そば」で「そばつゆ」につけてから食べるところまでが「たぐる」ですよね!

「うどん」じゃないのよ「たぐる」は!(「飾りじゃないのよ涙は」的に読んでください。)

一応、グーグル検索(2月15日)では、

「そばをたぐる」  =   3200件

「蕎麦をたぐる」  =21万9000件

「蕎麦を手繰る」  =22万9000件

「うどんをたぐる」 =   1500件

「うどんを手繰る」 =   3430件

「きしめんをたぐる」=      5件

「きしめんを手繰る」=      9件

「ラーメンをたぐる」=      5件

「ラーメンを手繰る」=   2550件

ということで、やっぱり基本的に、「麺類」で「手繰る」のは、

「蕎麦・そば」

ということですね!「きしめん」は手繰らないのよ!(「手繰れない」のよ!)

 

 

(2023、2、15)