滋賀県大津市で、17歳の兄が6歳(小1)の妹に暴行を加えて死なせた事件の続報を、在阪他局の11月10日のお昼のニュースで放送していました。
その中で女性アナウンサーが、
「腹や背中を足蹴りにするなど」
という原稿を読んでいました。本来は「足蹴り」ではなく「足蹴」で、
×「あしげりにする」→〇「あしげにする」
と読むのが正しいと、日本新聞協会新聞用語懇談会編『2007年版』の中の「放送で標準とする読み方例」に載っています。でもよく考えると、
「足蹴(あしげ)にする」
というのは、
「実際に足で蹴ること」
を指すのでしょうか?イメージとしては、
「門前払いにする」「悪(あ)しざまに扱う」
ようなニュアンスを感じます。
『広辞苑』で「足蹴(あしげ)」を引くと、
(1)足で蹴ること。
(2)転じて、他人にひどい仕打ちをすること。(例)人を足蹴にする
とあり、「足で蹴ること」は「原義」ではあるものの、「足蹴にする」は「別の意味」になっています。そもそも「蹴る」という行為は「足」でしかしませんよね。
「手で蹴る」
というのはおかしいし、「蹴る」のは「足で」に決まっているのだから、実際に「足で蹴る」
ことは単に、
「蹴る」
でよいのであって、「足蹴にする」とは言わないのではないでしょうか?
『明鏡国語辞典』は「第2版」(電子版・2021-2015)では、2つ目の意味に関して、
「恩人を足蹴(あしげ)にするとは何事だ」
という例文を挙げ、「語法」として、
『「蹴(け)」は、下一段の文語動詞「蹴る」の連用形から。これを五段で使う「足蹴(あしげ)りにする」は今なお慣用になじまない。』
と、「足蹴りにする」の存在は認識しているが「認めない立場」でした。
今年(2021年)出た「第3版」では、「使い方」として、
『「蹴(け)」は、文語の下一段動詞「蹴る」の連用形から。これを現代語の五段で「足蹴(あしげ)り」とするのは標準的でない』
と、微妙に表記を変えつつ、やはり「認めない立場」を取っています。
また、読売テレビやNHKの同じニュースでは
「暴行を加え」
というような表現にとどめていて「足蹴り」は出て来ませんでした。


