WOWOWでスポーツ中継を担当している、同期の柄沢晃弘アナウンサーと、フェイスブックで話していたら、彼から、
「昔、TBSの新人研修で(彼はTBSからWOWOWに転職した)『袖すり合うも他生の縁』が正しい、と教わった覚えがあるんだけど、どうも『袖振り合うも他生の縁』も間違いではないみたいだね」
と書いて来たので、
「え!?『袖振り合うも他生の縁』が正しいんじゃないの?『すり合うも』は聞いたことがないなあ。そもそもこれは『多少の縁』ではなく『他生の縁』が正しいってよく聞くけど」
という話をしました。
翌日、グーグル検索をしてみたら(12月4日)、
袖振り合うも他生の縁=2万1200件
袖擦り合うも他生の縁= 3400件
袖触り合うも他生の縁= 894件
袖触れ合うも他生の縁=2万4600件
でした。やっぱり、「擦り合う」よりは「振り合う」のほうがずっと多いですね。でも一番多いのは「触れ合う」なのかあ。
この話を、12月4日に開かれた「新聞用語懇談会」の放送分科会(オンライン開催)で質問したところ、新聞協会の関根健一用語幹事から、
「それ、『新聞用語集2007年版』の『誤りやすい慣用語句』に載っていますよ」
と言われました。
え!?気付かなかった!
早速、手元にある『新聞用語集』の389ページを開くと、果たして載っていました!
「袖振り合うも多少の縁」
→袖振り合う(触り合う、触れ合う、すり合う)も多生(他生)の縁
つまり「袖振り合うも多少の縁」は「間違い」で、正しくは、
袖振り合うも多生の縁
袖振り合うも他生の縁
袖触り合うも多生の縁
袖触り合うも他生の縁
袖触れ合うも多生の縁
袖触れ合うも他生の縁
袖すり合うも多生の縁
袖すり合うも他生の縁
という「8通り」あって、新聞用語懇談会としてはこの「8通り」を、
「全て認めている」
という立場なんだそうです。
えーーーー!!典型的な。
「諸説あり!」
ですねえ。
『共同通信記者ハンドブック第13版』(2016年)の「誤りやすい語句」(484ページ)にも載っていましたが、こちらは、
「袖すり(振り、触れ)合うも多少の縁」
→「・・・多生の縁、・・・多生の縁」
となっていて、前半部分は「すり合う」「振り合う」「触れ合う」の「3通り」を認め(「触り合う」は認めていない)、後半は「多生の縁」「他生の縁」の「2通り」を認めているので、「3×2=6通り」
の表現を認めていることになりますね。
読売新聞社の『読売スタイルブック2020』の「誤りやすい慣用語句、表現」には載っていませんでした。
『朝日新聞の用語の手引き・改訂新版』(2019年)は「誤りやすい慣用句・表現・表記」(623ページ)に、
「袖振り合うも多少の縁」→「袖振り合うも多生の縁」
▽「多生」は仏教用語で、多くの生を経ること。
として「1種類」の表記・表現だけを認めていました。
『改訂新版・毎日新聞用語集』(2007年)は「誤りやすい慣用語句」(392ページ)に、「袖触れ合うも多少の縁」→袖すり合う・振り合う・触れ合うも多生の縁
~「多生」は「他生」とも書く。
として、前半は「すり合う」「振り合う」「触れ合う」の「3通り」、後半は「多生」「他生」の「2通り」で、
「3×2=6通り」
の表記を認めていますね。本当に表記・表現に関しては諸説あるものの、やはり
「『多少の縁』は間違い」
という一点においては共通しているようです。