7758「京都五山の送り火」

2020 . 10 . 23

7758

 

9月にオンラインで開催された新聞用語懇談会放送分科会に向けて、各社から出された「質問」に対する、これまた各社からの回答がまとまって送られてきました。

その中の一つは、毎日放送の委員から出た質問で、

「『京都五山送り火』の表記・や読み方について」

というものでした。

これまで毎日放送では

「五山の送り火」

と言うと徹底してきたが、ことし(規模縮小だったが)報道デスクから、

「『京都五山送り火』と『の』が入らないのが正式名称のようだ」

という問い合わせがあったそうです。調べてみたら観光協会のHPや保存会の名称は、

「京都五山送り火」

と「の」が入っていなかったそうです。しかし「『の』無し」で読むと違和感があるので、画面表記=「京都五山送り火」

読み=「京都五山の送り火」

としたそうですが、各社は表記や読みをどうしているか?というもの。

各社の意見は、

(NHK)伝統行事の正式名称としては、「京都五山送り火」(きょうとござんおくりび)で、通称として「五山の送り火」という言い方をすることもある。

(日本テレビ)今年8月のニュース原稿の読みでは「五山送り火」を使用した。

(フジテレビ)関西テレビからの原稿は、「五山の送り火」だったが、同じ原稿の中に「京都五山送り火連合会によると~」という文もあった。

(テレビ朝日)過去10年の原稿検索では、ほとんど「五山の送り火」だった。テロップ等の表記では短い方が好まれるので「五山送り火」としても、耳で聞いてわかりやすいことや視聴者に伝わりやすいことなどを基準に考え、音声で読むときは「の」を入れている。

(テレビ東京)「大文字五山送り火」という原稿は2件あった。「五山の送り火」は3件だった。読みとしては「ござんのおくりび」が自然だと感じる。京都観光オフィシャルサイト(https://ja.kyoto.travel/event/major/okuribi/)では「京都五山送り火」(きょうとござんおくりび、とのフリガナあり)だった。ひとつのイベントとしては「京都五山送り火」だが、「京都五山」の「送り火」という説明の言葉だと考えると、「の」が入ったほうがしっくり来る感じだ。

(共同通信)新聞記事は「五山送り火」と表記している。放送記事も「五山送り火」(かぎかっこ付き)で「ござんおくりび」とルビを振っている。「五山の送り火」とはしていない。

(時事通信)5年で1件だけ記事が見つかった。「京都五山送り火」と「の」は入っていなかった。

(朝日放送)表記・読みともに「五山の送り火」が基本。

(テレビ大阪)今年6月のニュースでは「五山送り火(ルビ=ござんおくりび)」で放送した。5月の特集では「五山の送り火」で放送するなど統一されていない。「五山送り火」より、間に「の」を入れるほうが、音声では認識しやすく違和感もないので、原稿読み以外では「五山の送り火」を使用することはあると考える。

という意見が寄せられました。

 

「読売テレビ」からは私が、

『「京都五山の送り火」に関しては2009年6月の放送分科会で、やはりMBSさんの提議で1度話し合われている。その際には、MBSさんから当時改訂された『毎日放送用語ハンドブック』が紹介され、その中に、

「○ 五山の送り火  × 大文字焼き」

と書かれていたと記録している。

読み方で「の」が入るかどうかという問題に関しては、

「菅原道真」

の読み方に「の」が入るかどうかと同じではないかと思う。つまり「表記上」は「の」が入らないが、「読み」では「の」を入れる。

歌舞伎の名題・外題などにも、

「寿曽我対面(ことぶき そがのたいめん)」

「弁天娘女男白浪(べんてんむすめ めおのしらなみ)」

のように、よく見られる。

「菅原道真」も昔は「の」が入ったが、最近は「の」が入らないで読む傾向があるようだ。つまり、昔は必ずしも「言文一致」ではなかった(表記に「の」が無くても、意味上必要ならば「の」が入った)が、最近は「言文一致」が徹底しすぎて「『の』と書いていないから『の』は入れない」と思っている人が多いということではないか。「歴史上の人物」や「歴史ある行事」等の読み方に、「現代の言文一致」は必ずしも当てはまらないということなのではないか。』

と回答しました。

 

(2020、10、23)