河井前法相夫妻の公設秘書らが公職選挙法違反の疑いで逮捕された事件に関連して出て来る、
「ウグイス嬢」
という言葉ですが、放送では普通、
「〇〇嬢」
という表現は「女性軽視・差別」という「ジェンダーの視点」から使われないのですが、この「ウグイス嬢」に関しては、もう職業として成立しているからか、NHKも言い換えはしていません。私が見た3月9日夜の「NHK7時のニュース」でも
「いわゆるウグイス嬢」
として使っていました。
また、今年5月に開催予定でしたが新型コロナウイルスで中止になった「関西地区新聞用語懇談会」で、アンケートだけ行われました。そこで選挙で「ウグイス嬢」という表現を使うか?直すか?聞いてみました。例文は以下のようなものです。
「3人は選挙期間中、ウグイス嬢14人に対し、法定支給限度額を超える報酬を支払った疑いが持たれている。」
結果は、
「直す」=9社 「直さない」=10社
と、真っ二つに割れました。
「直す」と答えた社の理由は、以下の通りです。
【朝日新聞】選挙マニュアルの「気になる表現」に挙げられており、基本的に「(車上)運動員」などに言い換える。ただ、どういう人を指すのか分かりにくいため、あまり望ましくはなかったが「車上運動員(通称・ウグイス嬢)」とした例もある。
【毎日新聞】用語集に規定。言い換え例は「女性アナウンス係」としているが、河井夫妻の記事では「車上運動員」としている。
【産経新聞】車上運動員。基本は直すが、識者の談話などの場合そのまま使用することもある。
【共同通信】当社の用字用語集は性差別を助長しないようにするため「男性側に対語のない女性表現は原則として使わない」と決め「婦警」「未亡人」などは言い換えるようにしている。「ウグイス嬢」もこれに分類されると解釈して、現状では「アナウンスする車上運動員」などとしている。ただ個人的には、用字用語集の規定が独り歩きして、差別的ではない表現まで排除してしまっているという印象がある。警察官や配偶者に先だたれた人のように、男性もいるのに女性にだけ固有の呼び方がある場合と異なり、選挙カーの「ウグイス嬢」や、今はほとんどいなくなった「エレベーターガール」はそもそも女性しかいない職業。男性側に対語がないのは女性を特別扱いしているからではなく、男性がいないからであって、女性を見下している、あるいは差別を助長しかねない表現だと断定はできない。ウグイス嬢という言葉を使用する、という判断も否定できないものと考える。
【MBS】ウグイス嬢の前に『いわゆる』をつけるか、『ウグイス嬢と呼ばれる運動員』とする。
【中国新聞】「車上運動員(の女性)」「アナウンスを担当する車上運動員」などに直す。「○○嬢」は原則使わない本紙方針に従い「うぐいす嬢」は原則使わない。野球などでも「場内アナウンサー」にしている。
【愛媛新聞】車上運動員。カギカッコでくくる発言であれば直さない。
◆場合による
【テレビ大阪】「ウグイス嬢」は、主に「野球の場内アナ」と「選挙カーで応援を呼びかけるアナウンサー」の2つを指すが一般的に認知は広い。性差など不快感を与えないケースなら許容。
【山陽新聞】差別・不快用語とまでは規定されていないようだが、現実に使用例は極めて少ない。
一方「直さない社」の意見は、以下の通りです。
【読売新聞】スタイルブックで「使用可」。多用されている。
【読売テレビ】今回の河井案里議員の事件ですでに定着し使われている。苦情もない。ことし1月15日のNHKのお昼のニュースでも使っていた。用語懇談会では2014年11月の熊本での合同総会で「選挙用語の注意語」について討議された際に「朝日新聞」さんから、禁句ではないが『気になる表現』として、「刈り場」「浮動票」「大票田」「独自路線」「独自の戦い」「マドンナ候補」「街宣車」などと並んで「ウグイス嬢」は使わないようにしているという意見が出ただけだった。ちなみにことし1月にMBSに意見を聞いた際は「野球中継」に関して「『ウグイス嬢』とは放送しない。『場内アナウンス』という。男性は『スタジアムDJ』と呼ばれることも。」という意見だった。
ということでした。
そして、ご存じのように今月(6月)、河井前法相夫妻も公職選挙法違反容疑(買収)で逮捕されました。