『聞いたり聞かれたり』(和田誠、七ツ森書館:2013、11、25)

2020 . 5 . 22

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去年10月に亡くなったイラストレーターでエッセイスト、映画監督の才人・和田誠さん(1936、4、10~2019、10、7)。平野レミさんの夫で、上野樹里さんの舅。息子さんはバンド「トライケラトプス」のリーダー。

この本は7年前に出た時に買って「積ん読」になっていた。ようやく読んだ。

「聞いたり」は和田さんがインタビュアーになってインタビューした内容。

「聞かれたり」は、逆に和田さんがインタビューされたもの。

これらは、和田さんが関わっていた『話の特集』と『キネマ旬報』という雑誌でインタビューしたものですね。

すごい人だったなあと改めて感じる。

30年来、毎週購入してる『週刊文春』の表紙のイラスト、いまだに和田さんの絵が使われている。もう、変えられないものね。ぜひ続けてください。

それで和田さんがインタビューした相手がまたスゴイ!

「勝新太郎・森繁久彌・立川談志・太地喜和子・内藤陳・岩城宏之。」

全員、すでに「故人」である。もう、話は聞けない。

それは「あとがき」で和田さんも書いているが、別に「亡くなった方ばかりを集めよう」としたのではないそうです。たまたま。そして和田さんも「故人」になってしまったわけですが・・・。

全部、おもしろい。相手のことを、本当に和田さんがよく知っているし、好きだからこそ成り立つインタビューですね。文字通り、

「inter(内面へ?)」を「view(のぞく)」

ができています。本当はこの本に載せたかったのに載せられなかった人は「坂本九」と「向田邦子」だったと書かれているけど・・・お二人とも飛行機事故で亡くなってらっしゃいます・・・。

そして和田さんが「インタビューされた」のは、自分が監督として撮った4本の映画に関するインタビュー。最初の一本は、阿佐田哲也(「朝だ!徹夜」の駄洒落ペンネーム)原作の

『麻雀放浪記』。

これは、角川春樹さんと話している時に「脚本を書きたい映画はある?」と聞かれて答えて、「絵コンテつきの脚本」を角川さんに見せたら、絵コンテを見た角川さんから、

「これならもう『監督』をやって撮ったら?」

と言われて「監督」をすることになったと。

そして和田さんの映画には欠かせない、

「真田広之さん」

だが、最初、その役には、

「松田優作さん」

を当て込んで、本人も乗り気そうに見えたけど、

「主役じゃなきゃ、嫌だ」

というようなことで流れて、真田さんになったと。それは知りませんでした。

 

きのう、東京高検の黒川検事長が「賭け麻雀」を『週刊文春』にすっぱ抜かれて「辞職」に追い込まれたが、『週刊文春』と言えば「和田誠さん」ではないか!その和田誠の初監督作品が『麻雀放浪記』って、全てはつながっているな!

黒川検事長の「賭け麻雀」で阿佐田哲也『麻雀放浪記』を思い浮かべたのは、私だけではなく、けさ(5月22日)の日経新聞朝刊1面のコラム「春秋」でも触れていた。やっぱり、そうなるよね。その、

「麻雀放浪記」→「映画」→「和田誠」→「週刊文春」

に、つなげればよかったのに!

 

 

(2020、5、20)