新・読書日記 2020_028
『訳詩集 月下の一群』(堀口大學、岩波文庫:2013、5、16第1刷・2017、4、26第3刷)
この詩集が最初に出版されたのは、1925年(大正14年)9月17日。フランスの近代詩人66人の作品・339編を収容して、第一書房から初版1200部、「定価4円80銭」で売り出された。当時の「4円80銭」は「破格の値段」(=高い)だそうだから、いまだと・・・「4万8000円」ぐらいかな?想像だけど。一応、昔の物価などを調べてみたら、
【1925年(大正14年)の物価】
白米(10kg) 3円20銭
給料(大卒初任給) 50円
金(1g) 1円73銭
ということです。
【今(2020年)は大体...】
白米(10kg) 3500円(1100倍)
給料(大卒初任給) 20万円(4000倍)
金(1g) 6400円(3700倍)
ですから、この3つから見るおおよその物価は、
「1000~4000倍」
になっているでしょう。そうするとこの詩集「月下の一群」(4円80銭)の現在におけるお値段は、
「4800円~1万9200円」
と、やはり、かなり高いですなあ。豪華本だとしても。
この詩集からの詩・5編に曲を付けた南弘明作曲の男声合唱曲『月下の一群』を、大学2年のときに歌い、東芝EMI(当時)で録音(レコーディング)もした。40年近く経って、今年秋に同志社グリーOBの皆さんと一緒にまた歌うことになり、「詩集」全体を初めて読もうと、この文庫本を手にした。文庫だけど、650ページもあるんですよ、これ!すごいなあ!
実際に歌った曲の歌詞が、この詩集の詩と、微妙に変わっているところも見つけました。
それと、詩人の似顔絵というかデッサンというかも載っているんですね。66人全員ではないですが。そのほか
「十法」
と書いて「法」は、
「フラン」
と読むのは知りませんでした。
そして、この詩集は「親友」の「佐藤春夫」に捧げられているのも知らなかったし、堀口大學が外交官の息子で、一高受験に失敗した後、慶應義塾大学に入ったものの、すぐに中退して父の赴任先のメキシコへ行ったというのも初めて知りました。33歳で1925年に帰国するまでの14年間のほとんどを海外で暮らし、ブラジルやベルギーにもいた。もちろんフランスにも。父の後妻はベルギー人で、礼儀作法に厳しかったと。ベルギーなんかは「月光とピエロ」の舞台なのではないかなあ。あ、これも「男声合唱曲」ですが。「高等遊民」だったんですね、大學は。
本格的に帰国する前の1923年の夏に一時帰国した際の9月1日、「関東大震災」に遭遇。東京・大森のホテルに佐藤春夫と一緒にいたそうです。この「月下の一群」の出版は、その2年後の1925年です。そういえば寺田寅彦は、関東大震災の日は、上野の美術館に「院展」を見に行った帰りに、カフェーでその感想を話し合っていた時に被災したと書かれたのを読んだことがありますが。
いろいろと新しい発見があった詩集でした。