新・ことば事情
7376「團十郎と団十郎」
3月2日の「読売新聞・夕刊」で、ことし「十三代目・市川團十郎」を襲名する市川海老蔵さんを取り上げていました。
その中で、海老蔵さんを指す「十三代目」には、旧字体の「團」で、
「團十郎」
で表し、それ以外は略字体(新字体)の「団」を使った、
「団十郎」
が使われていました。使い分けには何か理由があるのでしょうか?海老蔵さんサイドから、
「十三代目に関しては、旧字体を使ってくれ」
という要望があったのでしょうかね?
役者にとっては、名前はその「字体」も含めて、
「ブランド」
であり、
「字体も固有名詞」
ということなんでしょうね。
昔、作曲家の團(だん)伊玖磨(いくま)さんは、郵便物の宛て先に、新字体の「団」で、
「団 伊玖磨様」
と書かれていると、受け取らなかったそうです。
「俺は『團』だ!断じて『団』ではない!故にこれは俺宛ての郵便物ではない」
ということだったんでしょうねえ。
(2020、3、9)
(追記)
3月12日の「産経新聞・夕刊」に、「十三代目・市川團十郎」の特集記事が載っていました。ここでは、「十三代目」以外で使われているものも、全て旧字体の「團」を使った、
「團十郎」
で、「団十郎」ではありませんでした。そこは「読売新聞」とは違うんですね、「産経新聞」は。
(2020、3、12)