新・読書日記 2020_018
『なぜオスカーはおもしろいのか?~受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』(メラニー、星海社新書:2020、1、24)
著者のメラニーさんは、映画会社勤務。専門家である。
アカデミー賞授賞式の直前に読みました。いろんな流れがよく解りました。
特に今回は、「英語の映画」ではない映画として初めて、韓国映画の「パラサイト」が「作品賞」を受章するなど4部門を受賞するという快挙を成し遂げましたが、実はここ4年ぐらい前から、その伏線があったと言います。
具体的に言うと、これまでアカデミー賞は白人男性ばかりが受賞していて、黒人・有色人種や女性監督は、ほとんど受賞していません。女性監督では唯一、イラク戦争を題材にした「ハート・ロッカー」で、2010年3月の第82回アカデミー賞の「監督賞」を、「キャスリン・ビグロー」が初めて受賞しました。しかしその後も「女性監督」は「監督賞」を受賞していません。
背景には、アカデミー会員が、そもそも「白人男性が多かった」ことがあります。そこで、当時の映画芸術科学アカデミー(AMPAS)会長(2013年~17年)で黒人女性であるシェリル・ブーン・アイザックスが「2020年までに、女性と非白人の会員数を倍増させる」と宣言。その結果、2019年の招待者842人のうち、女性の割合が50%と過去最高、有色人種の割合は29%で、出身国数は59か国になったというのです。アカデミー協会員の招待者数も、2010年の135人から、2018年には928人にも増えています。「一部の権限を持った人」から、「より広く映画に関わる人たち」の賞にしようという試みなのでしょう。
また、「オスカー配給会社」とも呼ばれアカデミー賞を牛耳っていた配給会社「ミラマックス」の「ハーヴェイ&ボブ・ワインスタイン兄弟」の力が衰えたのも、アカデミー会員の増加が影響しているかもしれず、それによって過去の「セックスキャンダル(セクハラ)」が暴かれていき「#Me Too」運動が起きたと。アカデミー会員の数の増加や「オスカー配給会社」のことは知りませんでした。
また(アメリカの映画はもちろん英語ですが)、外国語の映画は、大体吹き替えられている。それが最近「字幕」の映画も増えて、アメリカ人も「字幕に慣れてきた」という話なども書かれていました。
アカデミー賞の裏側を知るには、大変面白い、参考になる本でした!