新・ことば事情
7351「カードを切る」
1月8日放送予定の「ミヤネ屋」で、外交ジャーナリストの手嶋龍一さんと打ち合わせをしていた若手ディレクターが、
「手嶋さんが『外交カード』の『カード』という表現は、本当に紙のカードがあるように思えるからやめてほしい、と言っているのですが・・・」
とプロデューサーに言ってきました。うーむ、どうなんだろう?
一応、手元の国語辞典をいくつか引いてみたら、「選択肢」という意味の、例えば、
「核カードを切る」
という「カード」の意味を載せているのは、
『三省堂国語辞典・第7版』(2014、1)と『岩波国語辞典・第8版』(2019、11)
しかありませんでした!
去年9月に出たばかりの『大辞林・第4版』にも載っていませんでした。
そこで、2月の新聞用語懇談会放送分科会で、各社の意見を聞いてみました。
『アメリカによるイランのソレイマニ司令官殺害を受け「すわ、第三次世界大戦か?」と緊張した年明けの「ミヤネ屋」の放送でこの問題を取り上げた際に、「手段・方法・切り札」の意味での「カード」は使わないと、外交ジャーナリストの手嶋龍一さんから指摘を受けました。なぜ使わないかというと、その際はイラストで「紙のカードを何枚も持っているトランプ大統領の似顔絵」を描いていたので、本物の「(紙の)カード」と間違われないためにということと、「カード」が「切り札」の意味で解釈されないように、ということだそうです。この「手段・方法・切り札」の意味での「カード」を、ふだん我々は普通に使っています。ところが、手元の国語辞典約10種類を調べてみたところ、その「カード」の意味が載っていたのは『三省堂国語辞典』(2014年)と去年11月に出たばかりの『岩波国語辞典』だけでした。去年9月に出た『大辞林』にも載っていませんでした。これは「カード」の「新しい意味」なのでしょうか?結局、
×「禁断のカード」→〇「禁断の一手」「禁断の選択」
×「様々な計画カードから」→〇「様々な計画から」
と直して放送しましたが、各局では「手段・方法・切り札」の意味での「カード」を使われますか。』(読売テレビ)
「ルールを決めている社」は、ありませんでしたが、
(TBS)決めていない。番組判断。
(新聞協会・関根氏)一般的な場面の話?それともこのケースに限って?
(ytv)このケースに限っての話だと思う。
(共同通信)「解散のカードを切る」「交渉の切り札を切る」などで、たくさん使っている。スポーツで「選手起用(交代)」でも「カードを切りました」は使っている。
というような意見が出ました。