新・読書日記 2020_008
『隠蔽捜査8 清明』(今野敏、新潮社:2020、1、20)
少しネタバレ。
この週末、元ソフトバンクの社員がロシアのスパイに情報を渡していたとして逮捕された。スパイ、活動してるんだ、日本で・・・。というニュースの中、この本を読んだ。こちらは中国のスパイが出て来る。
このシリーズは大好きで、主人公の竜崎警視正、キャリアで40代後半なのに警視庁・大森警察署長に"左遷"されて、普通は警察を止めるのに黙々と与えられた任務を全うする。今度は神奈川県警の刑事部長に"栄転"してすぐの物語。
気になった表現や内容のメモ。「れっきしとした」の使い方。
*「れっきとした刑事事件だ」(107ページ)
*「日本はれっきとした民主国家だよ」(153ページ)
*警察は住所を知るために、宅配業者の配達記録を調べる(138ページ)
ところどころ、話の本筋とは関係なしに著者の思いが、竜崎など登場人物の口を借りて出て来る。例えば、153ページ。
『伊丹が苦笑を浮かべる。
「言論の自由を求めて、この日本にやってくるとは皮肉な話だな」
竜崎は言った。
「日本はれっきとした民主国家だよ」
「本気で言っているのか」
「勿論本気だ。少なくとも、そういう制度になっている。それが北朝鮮なんかとは違うところだ。中国ともロシアとも違う。」
「おまえのようにたてまえを信じられれば幸せだよな」
伊丹がそう言うと立ち上がった。』(153ページ)
言葉遣いに関しても、登場人物に「著者の私見」をしゃべらせる。
『「では、私に気を許してくださったと考えさせていただいてよろしいのですね」
まどろっこしい言い方だ。最近は、特に謙譲語を多用し過ぎる気がする。「...させていただく」という言葉が耳につくのだ。
もしかしたら、芸能人がテレビなどでそれを多用するからかもしれない。いずれにしろ、慇懃無礼に感じる。
芸能界はしきたりが多く、自然とそういう話し方が身につくのかもしれないが、一般視聴者を対象とする番組の中でまでそんな言葉遣いをする必要はないと、竜崎は思う。』(159~160ページ)
195~196ページには、「中国人の名前は漢字で書いて、何で現地読みをしないんだ?」という疑問を呈する竜崎が、奥さんに「そんなのヨーロッパだって、ロシアのピョートル大帝がピーターだったり、カエサルがシーザーだったりするじゃないの」と一蹴されているのが面白い。
本書のタイトルの「清明」は「二十四節気の一つ」だが、それがなぜタイトルになったのか?それは中華街の料理店で見つけた「杜牧」の詩に由来する。
詳しくは読んでみてね!