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『道浦TIME』

新・読書日記 2020_007

『オリオンと甘夏』(増山実、角川書店:2019、12、12)

オシャレなタイトルからは想像がつかないが、実はこれは「落語(家)」「噺家」のお話、「甘夏」というのは、主人公の女性落語家の芸名なのだ。オリオンは、星座の「オリオン座」で、重要な伏線となっている。舞台は大阪だが、九州も出て来る。広島・愛媛も。大体「西日本」やな。いろいろ話は予想外の方向に進んで行く。でも、現代の話。そして未来の話。

著者の増山さんは、以前「ミヤネ屋」の構成作家としても一緒にお仕事をさせていただいた時期もある。今やもう本格的な「作家」だ。でも時々、社内で会うけど。先日、お会いした際に「新刊出ました!」と教えてもらって購入、さっそく読みました。

いきなり、師匠が失踪した甘夏が一人前の落語家になって行く話。面白い!しかも舞台が大阪だから、なじみみもあるし。熊本・水俣は、やや唐突感があったが、これもちゃんと伏線は張られている。「伏線」が凄いね、増山さん!

増山さんは「失跡」という言葉を使っているけど、それは以前「踪」の字が「表外字」で使えなかったので、その言い換えとして使われていた言葉。2010年に「踪」が常用漢字になったから、今は「失踪」とルビなしで書けるんですよ。使った方がいいなあ。校閲担当としては、それが気になりました。


star4

(2020、1、20読了)

2020年1月30日 16:55