新・ことば事情
7329「まぶたが熱くなる」
雑誌「映画秘宝3月号」が1月21日発売号を最後に、25周年にして休刊となるそうです。それを知らせた「HMV&BOOKS渋谷店」のツイッターに、
「町山智浩×柳下毅一郎の2人の対談は読む前から、目蓋が熱くなります」
と記されていまし。この中に、
「目蓋(まぶた)が熱くなる」
とあったのですが、これは普通は、
「目頭が熱くなる」
と言うのではないでしょうか?
グーグル検索してみたら(1月23日)
「まぶたが熱くなる」=8万5100件
出て来ました。しかしこれは「目の上が熱くなる症状(病状)」も含んでいたので「感動」を加えて検索したところ、
「まぶたが熱くなる・感動」=3万6800件
でした。以下、
「目蓋が熱くなる・感動」 = 754件
「瞼が熱くなる・感動」 = 5040件
「目頭が熱くなる」 =9万 900件
でした。
ためしに中堅のTアナウンサーに、
「感動して涙が出そうになることを、慣用句で何て言う?」
と聞いたら、案の定、
「『まぶたが熱くなる』?」
と言うではありませんか!「え?」と問い直すと、
「あ、『目尻が熱くなる』かな?」
いやあのね、それは「目頭」だよ。「目頭」には「涙腺」があってそこから涙が出る時に熱く感じるんでしょ、「目尻」に涙腺はないですから!
そして昼ニュースが終わったばかりの中堅~ベテランのMアナウンサーに聞いたら即答で、
「『まぶたが熱くなる』ですか?」
と正解を出しました。さすが!そしてさらに、
「若い人なんかは、泣いたことが恥ずかしい時に『目から汗が出た』とか言いますね」
という情報も、もらいました。それは今は関係ないですが、貴重な情報ありがとう。
国語辞典を引いてみたら、やはり、
「深く感動して涙が出そうになること」
の意味での用例で、
「目頭が熱くなる」
は載っていましたが、「まぶたが熱くなる」は載っていませんでした。
「まぶた」の用例では、「眠くなる」意味での、
「まぶたが重くなる」
や、「懐かしい風景などが思い出される」意味での、
「まぶたに浮かぶ」
しか載っていませんでした。恐らく、これらの「混交表現」で生まれたのが、
「まぶたが熱くなる」
なのではないでしょうかね。
と、ここまで書いて、さらに手元の国語辞典・合計14種類を調べたら、「2019年1月10日発行」と奥付に書いてある、
『三省堂現代新国語辞典』
に、唯一「まぶたが熱くなる」が載っていました!
そして「まぶたが熱くなる」の意味は、
「(感動や悲しみで)涙が目に浮かぶ」
と、「悲しみ」もその理由に入れていました。「目頭」は「感動」しか書かれていません。新たに使い分けの表現として出て来たのでしょうかね?
注目の言葉ですね、これは。