新・ことば事情
7327「『ネギトロ』と『トロタク』」
北海道に旅行してお寿司を食べました。回らないヤツです!
その際に、
「ネギトロ(巻き)」と「トロタク(巻き)」
というお寿司を食べました。「ネギトロ」は知っていますが、「トロタク」というのはあまり聞きません。「キムタク」みたいです。「キムチとタクアン」。
板さんによると「トロタク」は「北海道発祥」だとのことで、要は、
「『ネギトロ』の『ネギ』の代わりに『細かく刻んだタクアン』が入っている」
のですね。「トロ(マグロ)の赤」と「タクアンの黄色」が、見た目にもきれいです。「でも『ネギトロ』は『トロ』が後ろなのに、『トロタク』は『トロ』が先なのはなぜでしょう?なんで『タクトロ』ではないの?」
と板さんに聞いたら、
「さあ?語呂が良いからじゃないですか?」
と「寿司」を食わずに「肩透かし」を食いました。
寿司も食わなきゃと「トロタク」を食べてみると、へえー、おいしい!タクアンの歯ごたえもいいなあと思っていたら、板さんが、
「ネキトロは『葱』と『トロ』だと思っているでしょう?本当はそうじゃないんです。『ネギ』は『葱』じゃなくて『こそげ取る』という意味の『ねぎ取る』の『ねぐ』という言葉から来ているんです」
と言うではないですか!思わず、
「本当ですか?知らなかった!」
とメモして大阪に帰って来て、辞書をいくつも引いてみたけど、載っていない。かつがれたのかなあ。それとも「アイヌ語」から来ているのかなあ。
「ねぐる」
で載っているのは、「ネグる」、つまり
「ネグレクトする=無視する」
という言葉だけ。
「サボタージュする」→「サボる」
「タクシーに乗る」→「タクる」
のような作り方の言葉ですね。
そうか、わかった!
「マグロの身」の握りずしのネタになる「トロ」の部分以外の部位が、
「ネグられた部位」
で、「ネグられたトロ」が、
「ネギトロ」
なのかもしれませんね!知らんけど。でも「ネギ」と「トロ」だと思うけどなあ。
それよりも驚いたのは、「ネギトロ」を載せている辞書が少ないことです。
手元の「23種類」の辞書で「ネギトロ」を「載せていた」のは、「約3分1」の、
「7種類」
でした。それは、
〇広辞苑(6版・2008)
〇明鏡国語辞典(2版・2011)
〇三省堂国語辞典(7版・2014)
〇NHK日本語発音アクセント新辞典(2015)
〇広辞苑(7版・2018)
〇大辞林(4版・2019)
〇岩波国語辞典(8版・2019)
そして「載っていなかった」のは「16種類」。
×デジタル大辞泉(電子辞書)
×新明解国語辞典(3版・1985)
×新明解国語辞典(4版・1992)
×NHK日本語発音アクセント辞典(1998)
×新潮現代国語辞典(2版・2000)
×新明解国語辞典(5版・2000)
×三省堂国語辞典(5版・2001)
×明鏡国語辞典(初版・2002)
×新明解国語辞典(6版・2005)
×精選版日本国語大辞典(2006)
×三省堂国語辞典(6版・2008)
×岩波国語辞典(7版・2009)
×新選国語辞典(9版・2011)
×新明解国語辞典(7版・2012)
×現代国語例解辞典(5版・2016)
×三省堂現代新国語辞典(6版・2019)
でした。