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『道浦TIME』

新・ことば事情

7304「『美女と野獣』の原題」

ディズニーのミュージカル映画『美女と野獣』のDVDを見ました。これまで、劇団四季のミュージカルとかアニメでは見ましたが、映画は初めて見ました。音楽が、聴き慣れた心地良いディズニーミュージックで、よくできた映画だなあと思いました。いろんな問題を示唆していますね。

それを見て言葉上で気になったのは、この物語『美女と野獣』の原題である、

「Beauty and the Beast」

です。「Bea」まで「頭韻」を踏んでいるんですね「B&B」。わっ、毒ガスだ!と言っても通じませんよね、もう。コマネチ!

横道にそれましたが、気になった点は、

「なぜ『Beauty』には定冠詞の『the』が付かずに、『Beast』には付くのか?」

という点です。

ネット検索してみると、やはり同じ疑問を抱いた人がいました!

たとえば、古くは2005年の「教えて!goo」に、

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1312105.html

『抽象名詞としてのBeautyならばtheがつかないのも納得できますが、ここでのBeautyは「美女」という意味です。これが可算名詞ですので、a beautyやthe beautyなどとすべきだと思うのですが、どのように考えたら良いでしょう。。。(中略)映画のタイトルなのでなので、ゴロの良さも含め文法通りではない、ということなのでしょうか。』

という疑問に対して、「ベストアンサー」は、

『映画、音楽、表、新聞など、何かのタイトルにおいては頻繁に冠詞やbe動詞などが省略されます。(中略)基本的に「主語+動詞(+...)」という形になっていない文では、あまり冠詞を付けません。例えば、

「Merry Christmas! Happy new year!」

とは言いますが、

「A merry Christmas! A happy new year!」

とは言わないのです。(中略)ちなみにBeautyは(中略)「ある美女」というだけでよければ、あえてtheは付けないことになります。』

というものでした。なるほど。

また、2009年のヤフー知恵袋の「ベストアンサー」では、要約すると、

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1130980406

・原題は「La Belle et la Bête」で、元々フランスの民話。単なる主人公の名前を並べた題名。フランス語ではtheに相当する「la」がBella(=Beauty)にもついているが、英語と文法が異なり、つけないわけにはいかないから。

・「単なる美女と野獣の恋物語」の描写ではなく、もっと人間全体に通じる教訓的なことをタイトルにこめているように読み取れる。「美」という抽象概念を「beauty」と無冠詞で書くことで「the beauty(=特定の美人)」という個体的な意味からイメージを拡張させ「みかけの美しさ」とすることで「the Beast(<こちらは普通名詞なので無冠詞単数にはできない)=人間が持つ野獣性、あるいは見かけの醜さ」と対比していると感じる。

・「ストーリーにこめられたメッセージ性」を意識して、あえてtheをはずし、「美と野生」「心の美しさと見かけの凶暴さ」「内面と外見」という意味合いにしたのではないか。

と言うようなものでした。

なるほど「beauty」は「美女」ではなく、本来は、

「(抽象的な)美」

と訳すべきであったというのですね。これは説得力がありますね。納得しました!

(2019、12、20)

2019年12月20日 12:34