新・ことば事情
7291「腕章を巻くのは右腕か左腕か?」
中継の際の「腕章」は、「左腕」に着けるのか?それとも「右腕」に着けるのか?
ことし9月、うちのアナウンサーが「腕章」を、
「右腕」
に着けて中継したところ、視聴者の方から、
「腕章は『左腕』に着けるものと決まっている!」
というご指摘を受けました。
私はこれまで特に何も考えずに、「右利き」なので右手を使って、
「左腕」
に腕章を着けていましたが、
「左腕に着けるもの」
というような"礼儀作法のようなもの"があるのでしょうか?
「右利きなので左腕に着ける」
のであれば、
「左利きの人が右腕に着ける」
のは自然と思いますが、いかがでしょうか?
なお、先日他局で「右腕」に腕章を着けている人も見かけました。(しかも「腕章」が「上下さかさま」でしたが・・・)
ということで各局のアナウンサー経験者などにご意見を伺ったところ、大体、皆さん、
「きまりはない」
としながらも、ほとんど全員が、
「腕章は『左腕』に巻く」
ようです。理由は、
「右利きなので、左でないと着けにくい」
のほか、いろいろ聞いてくださったり調べてくださって、
「喪章は左腕」
「軍隊の腕章は左腕。十字軍が起源」
というような、他の腕章の例を(中継の腕章とは違いますが)を記してくれた方もいらっしゃいました。そしてアナウンサー経験者ではないですが、NHKの時代考証を担当してらっしゃる、大森洋平さんにも伺ったところ、
「腕章は『左腕』に巻きます。なぜかはわかりませんが日本の憲兵、西洋のMP、衛生兵の赤十字、ナチスのハーケンクロイツ腕章、交通整理のお巡りさん、救急隊員、みな『左腕』です。日本の軍隊なら右腕にまいたら怒られるでしょう。腕章型の喪章も左腕で『ゴッドファーザー』葬式シーンでマフィアが皆そうしています。利き腕とは関係がないということのようです。一般的に『右が利き腕』なので、『利き腕でない左腕に巻く』というのは、一応の理屈になります。あと第二次大戦中のドイツ軍の衛生兵が、ロシア戦線で敵の狙撃兵に撃たれないように『両腕に巻いた』という話を聞いたことがありますが、これはあくまで特例。(かえって狙撃されたらしい。またイラクやアフガンでも、衛生兵はもはや赤十字腕章を付けません)
『そういうエチケット』として、職場でも励行された方がカッコイイですね。
僕もNHKの腕章を右に巻いている若手に対して『腕章は左に巻くものなのだ』と直させたことがあります。」
というお返事を頂きました。大森さん、ありがとうございました