新・ことば事情
7290「シはBかHか」
「音名」
というと「イタリア語」の、
「ドレミファソラシド」
が一般的ですよね。「和語」(日本語)では、
「ハニホヘトイロハ」
です。これが合唱をやっている私たちから言うと、「ドイツ語」で、
「C(ツェー)D(デー)E(エー)F(エフ)G(ゲー)A(アー)H(ハー)」
です。だから、「救急車のサイレン」の音階(音名)は、
「シーソー、シーソー」
で、これを「ドイツ語」で言うと、
「HG(ハーゲー)、HG(ハーゲー)」
になります。これは私が中学時代に、音楽とドイツ語が好きな母から聞きました。もう40年以上前の話ですね。
この話を辛坊さんにしたところ、
「『シ』は『H』じゃないだろ、『B』だろ」
と言われました。そして、ウクレレをやっている辛坊さんは、スマホの「音叉アプリ」を出して、
「ほら!」
と見せて来ました。たしかに「シ」は「B」になっていました。
そういえば、中学時代に「ギター」をかじった頃には「B」のコードがありましたね。
なぜだろう???
ネット検索してみたところ、こういう問題について解説しているサイトがありました。
「スガナミ楽器」のサイトです。
https://www.suganami.com/info/44155
詳しくはそれを読んでいただければいいのですが、簡単にまとめてみると、
『「h」の音名は、もともと「b」だった。そもそも音階の中で「悪魔の三全音」と言われた音程がシとファの音に生じる響きで、使ってはならない音程とされていた。どうしても避けられない場合は、「シ」の音を「少し低く」歌っていた。この「『シ』は低く歌う」指示として、「b(小文字のB)」が楽譜に記載された。これが「シ」の音以外にも、低く変化させる時は「丸いb」、高く変化させる時は「四角いb」を書くようになる。のちの「♭(フラット)」と「♯(シャープ)」になった。「b」の丸い部分を四角に書いて、さらに四角の各辺を伸ばして尖った感じを強調すると今の「♯(シャープ)」になる。
その「中間」の「♮(ナチュラル)」は、
「シャープでもフラットでもない、角ばったb」
=「四角いbだけど、シャープほど鋭くもないデザイン」
になったと。
こうして「シ」の音は、「低いシ」は「♭(フラット)」、「元々のシ」は「♮(ナチュラル)」で書かれるようになった。さらにその後、「元々のシ(♮)」は、
「印刷の都合で『h』と書かれるようになった」
という説が有力。(「♮」の「下の横棒」を取ると「h」のようになる。)
(他には「『g』の次が『h』だから」という説もあるようだ。)
これが、ドイツ語で「b」が「h」と呼ばれるようになった経緯の一説。
<参考:吉松隆著『調性で読み解くクラシック』(yamaha music media corporation)>
なのだそうです。
それにしても、なぜ「ドイツ」だけ?
これに関して、指揮者の小久保大輔先生に伺ったところ、
「もしかしたら、楽譜の印刷=グーテンベルクの活版印刷=ドイツが関係しているのではないか?」
という貴重なご意見を頂きました。ありがとうございました。
結論!
「音名は、クラシックではドイツ式(H)、ポピュラーでは英米式(B)を使う」