新・ことば事情
7280「月娥」
ことしはずっと、民主化運動と中国本土の闘いが続いて収まらない「香港」。
「親中派」「民主派」
に分かれていますが、その香港の行政長官は、
「林鄭月娥」
という女性ですね。
「りんていげつが」
と読みます。「てい」の漢字が「亭」ならば、
「月亭可朝」
みたいで、「林亭月娥」、落語家か漫談家のような感じですが、漢字が違います。
この人の名前を初めて聞いた・目にしたとき、私は、
「月娥」
という文字に惹かれました。「男声合唱」をしている人で、この文字を見たら絶対に思い出すのは、
「石家荘にて」
という詩(曲)だと思います。多田武彦作曲の男声合唱組曲、
「草野心平の詩から」
の中の一曲です。「石家荘」というのは、中国の今もある地名ですが、そこで出て来る
「月娥」
というのは実は、
「遊女のこと」
だと、楽譜の注釈に書いてありました。草野心平の体験の中から出て来たものでしょうが、それを見てから、私はずっと中国では、
「月娥=遊女」
という意味だと思っていましたが、香港の行政長官になるような女性に、親が、
「遊女」
と名付けるはずもなく、これは実は、
「草野心平のなじみの遊女の名前が、たまたま今の香港行政長官と同じ『月娥』という名前だった」
というのが真実でしょう。40年近く誤解したままでしたのが、今回の香港の動乱のおかげで、気付かされたのでした。
「蛾」
というのは、日本では「害虫」のような「嫌われ者」のような感じがありますけど、たぶん中国では、
「美しい蝶」
の意味なんでしょうね。たしか「月」は、日本だと、
「ウサギが餅をついている」
様に見えると言いますが、中国では、
「蛾が羽根を拡げている」
というように見えると聞いたことがあります。
(2019、11、27)
(追記)
視聴者の方、と言うか、このブログの愛読者の方から、
「月『蛾』と『虫へん』で書いているが、正しくは『女へん』の『娥』ではないか?」
とご指摘を受けました。
ご指摘通り、私が書き間違っていました。漢字は全部直しました。
ありがとうございました!
そうすると、ちょっと意味が通りにくいところもありますが、そこは、ほぼそのままにしています。悪しからず。