新・ことば事情
7277「天皇陛下の『正殿』のアクセント」
新天皇即位の一連の儀式の一つである、
「即位礼正殿の儀」
の中の、
「正殿」
のアクセントですが、普通は、
「セ/ーデン」
というように「平板アクセント」ですよね。
でも、10月29日に行われた「饗宴の儀」第三日の挨拶で、「天皇陛下」は、
「頭高アクセント」
で、
「セ\イデン」
と話されていました。記録しておきます。
これに関連して、
「宮殿」
のアクセントについては、ことし(2019年)4月の用語懇談会放送分科会で討議されたことがありますので、ここに写しておきますね。
*「宮殿」のアクセント=2019年4月
(テレビ東京)皇居の「宮殿」の読み方・アクセント。「キュ\ーデン」と「頭高」だと言われるのだが、「NHKアクセント新辞典」には「平板」の「キュ/ーデン」しか載っていないが、各社どうされていますか?
(MBS)「キュ\ーデン」という「頭高アクセント」は「宮内庁の発音」に合わせているのだろう。
(テレビ東京)その通り。
(テレビ大阪)「和風総本家」のナレーションで「キュ\ーデン」と「頭高」で読んだら、視聴者から「キュ/ーデン(平板)ではないのか?」と問い合わせがあったことがある。宮内庁に「どちらが正しいのか?」と問い合わせたところ「どちらが正解とも言えない」と。「では、『キュ\ーデン』と『頭高』で言う人はいるのか?」と聞いても「答えられない」とのことだった...。
(日本テレビ)うちでは「宮殿」も「正殿」も「平板」で「キュ/ーデン」「セ/イデン」としている。宮内庁や皇族・皇室には「上方(京都)のアクセント」が残っているので、「頭高」の「キュ\ーデン」「セ\イデン」になっているのではないか?
(テレビ朝日)ちなみに「正殿」の読みは「セイデン」だが、伊勢神宮のみ「ショーデン」だ。
(MBS)うちは、「"座"禅」と書いたら「うちの宗派では『"坐"禅』だ」というクレームが来たことがある。一般的には「"座"禅」だろう。
(MBS)そもそも日本に「宮殿」はなかった。明治以降のことだ。それ以前は「宮殿」と書いて「くうでん」と読んで、仏壇の中に入れる「厨子(ずし)」のことをそう呼んでいた。明治以降使うようになった「きゅうでん」という呼び方を、「くう」ではないと強調するために、「頭高」で「きゅう」を強調して「キュ\ーデン」と呼ぶのではないか?
ということで、陛下をはじめ宮内庁の方々は「宮殿」「正殿」を「頭高アクセント」で、
「キュ\ーデン」「セ\イデン」
とおっしゃるようです。でも、放送では「長音」で「平板アクセント」です。
(追記)
「令和ことば事情7152『宮殿』のアクセント」もお読みください。
(2019、11、27)