Top

『道浦TIME』

新・読書日記 2019_152

『虐待死~なぜ起きるのか、どう防ぐのか』(川﨑二三彦、岩波新書:2019、7、19)

昨今、増加しているように感じる「虐待死」。

なぜ、かわいい我が子を死に至らしめるのか?という怒りと疑問がフツフツと湧いてくるのだが、必ずしも私と同じような恵まれた(虐待など受けない)家庭環境ではなく育って、また同じように、また恵まれない環境で子育てをせざるを得ない人たちが数多くいるのも現実。もちろん、だからと言って子どもを死に至らしめることが、許されるわけはない。

サブタイトルにある「なぜ起きるのか」と知って「どう防ぐのか」につなげていかなくてはならない。そのためには多くの事例に当たって、その原因と対策を考えることが大事である。著者は、大学卒業後32年にわたって「審理判定員(児童心理司)」や「児童福祉司」として京都府の児童相談所に勤務していた「その道のプロ」である。「現場」の状況をよーく分かっている。本書では、その具体的事例がたくさん出て来るのだが、読んでいると気が滅入ってくる。

中でも、これはニュースでも見たことがあるが、「代理ミュンヒハウゼン症候群」の母の手にかかった子どもたちは、本当に逃れようのない状況である。こんな精神の病があるんだと、改めて恐ろしくも思った。

子どもを産み育てるにも「試験」が必要なのではないか?とも思ってしまったが、そんなことをすれば、より一層少子化が進むだろう。命を育てることの難しさが、重くのしかかって来る・・・。


star3

(2019、11、20読了)

2019年11月25日 19:50