新・ことば事情
7257「遺作」
「ミヤネ屋」のADのO君から質問を受けました。
「『遺作』というのは、どの作品を指すのでしょうか?」
「そりゃあ、『死ぬ前の最後の作品』なんじゃないの?その意味では最新作でしょ。」
と答えて、辞書を引きました。まずは『広辞苑』。
「死後に残された作品。かたみの作品」
そうか、「最後の作品」に限らず、残された作品は「遺作」になるのか。そう言われたら、そんな気も。『明鏡国語辞典』は、
「死後に残された未発表の作品。また、生前の最後の作品。」
え?「未発表の作品」なの?もう一つの意味では「生前最後の作品」とあり、私が思っていた「遺作」ですね。『新明解国語辞典』は、
「故人の、未発表作品及び著作物(で、死後に公表された物)」
あら、これも「未発表の作品」ですね。『精選版日本国語大辞典』は、
「死後に残された作品」
そして『デジタル大辞泉』は、
「死後に残された未発表の作品」
以下、列挙します。
『大辞林』=死んだ人が残した未発表の作品。
『新選国語辞典』=死後にのこった未発表の作品。
『岩波国語辞典』=未発表のまま死後に残された作品。
『現代国語例解辞典』=死後に残された未発表の作品。
『三省堂現代新国語辞典』=死んだ人が残した、未発表の作品。
ここまでが「死後に残された『未発表』の作品」ですね。以下、
『新潮現代国語辞典』=死後に残された作品。
『三省堂国語辞典』=(1)死後に残された未発表の作品。(2)生前最後の作品。
どうやら、「遺作」には「3つ」意味があるようです。整理してみましょう。
(1)死後に残された「未発表」の作品
(2)生前「最後」の作品
(3)死後に残された作品
これに従って辞書を分類すると、
『大辞林』=(1)
『デジタル大辞泉』(1)
『新選国語辞典』=(1)
『岩波国語辞典』=(1)
『新明解国語辞典』=(1)
『現代国語例解辞典』=(1)
『三省堂現代新国語辞典』=(1)
『明鏡国語辞典』=(1)(2)
『三省堂国語辞典』=(1)(2)
『広辞苑』=(3)
『新潮現代国語辞典』=(3)
『精選版日本国語大辞典』=(3)
ということで、(1)の、
「死後に残された未発表の作品」
が一番多い。次に
「(3)死後に残された作品」
と広義で捉えたもの。そして、私が考えていた、
「(2)生前最後の作品」
という意味は、比較的新しいのではないか?と思われます。