新・ことば事情
7202「少しく」
「ゴジラ」のテーマソングの作曲で知られる、伊福部昭著『音楽入門』を読んでいたら、第11章に、
「さきに、少しく触れたところですが」
と出て来ました。この、
「少しく」
ということば、最近は見かけませんね。若い人は、
「間違い!」
と言いそうですが、そもそもこれは、どういった由来の言葉なのでしょうか?
『精選版日本国語辞典』を引いてみたら、こう載っていました。
*「少しく」(「すこし」「すこしき」を形容詞のように意識してその連用形として作り出された語)わずかに。ちょっと」
として用例は「今昔物語(1120年ごろか)」というのですから、かなり古いですね。しかしその後のもう一つの例は山田美妙の『武蔵野』(1887年)と随分、時代が下ります。
「語誌」としては、
「『すこしき』が中古に生じていたのに対して、『すこしく』は例挙のように『今昔物語集』に数例あるほかは確例がなく、その一般化は近世のようである。形容動詞の『すこしき』が『わずかだ』という意味のほか『小さい』という意味でも用いたのに対して、『すこしく』は『わずかに』という意味でのみ用いる点が異なる」
とありました。
やはり、比較的「限定的な使用」だったようです。現代では、まず使わなくなった言葉の用法のように思います。