新・読書日記 2019_101
『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治、新潮新書:2019、7、20)
著者は精神科医、臨床心理士で、立命館大学産業社会学部教授。年齢(生年)が書かれていないが、顔写真が現在のものだとすると、40~50代の働き盛りだと思われる。
ショッキングなタイトルに惹かれて購入。いや、タイトルの下の帯に、実際に「円いケーキを3等分に切れない実例図」が描かれて(再現されて)して、それに対して「え?本当に?」と思ったのが購入・読み初めのきっかけだった。
医者の立場から見て、「非行少年に見られる特徴」として次の5つを上げている。
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認知機能の弱さ
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感情統制の弱さ
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融通の利かなさ
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対人スキルの乏しさ
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身体的不器用さ
そして、現在(1970年代以降)は「IQ70未満」が「知的障害」とされているが、かつて1950年代の一時期は「IQ85未満」という基準だったと。しかし「85以下」だと全人口の16%が該当して多すぎるということから「70未満」になった。
その結果「IQ70~84」の「境界知能」の子どもたちが14%ぐらい、いることになると。そして、この子供たちが「普通の子ども」と同じように扱われていることに問題があるのではないか、と指摘している。
それはある面、真実なのかもしれないが、この考え方は何か危険性を秘めている気がする。犯罪の予防的観点から拘束などをすることは、基本的人権を侵すと思う。しかし、教育的観点から、こういった人たちに対処していく方法には、効果はあるのかなとも思った。
さまざまな「理解できない事件」が起こっている現代、一つの考え方なのかなとも思った。
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