新・ことば事情
7194「味気のない人生」
日本テレビの7月スタートの水曜ドラマ『偽装不倫』の第1回を見ていたら、主人公の杏さんが、
「味気のない人生」
と言っていました。それを聞いて「おや?」っと思ったのは、
「味気ない人生」
とは言いますが、「の」を入れた、
「味気のない人生」
と言えるのか?ということです。
杏さんの発言では「味気」という名詞があって、それを「の」でつないで、否定の「ない」が付いているようなのですが、こういった場合、もし、の語が成り立つなら、
「『ない』を『ぬ』に置き換えることが出来るはず」
です。でも「味気ない」の「ない」を「ぬ」に置き換えると、
「味気ぬ」
となって、語として成り立たない。
また、『広辞苑』『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『精選版日本国語辞典』『三省堂国語辞典』『現代国語例解辞典』『三省堂現代新国語辞典』『新選国語辞典』『岩波国語辞典』では、「味気ない」は載っていますが、
「味気」
という名詞は、載っていませんでした。
「味気」というのも「当て字」のようで、昔は「あじきない」と言ったと。
つまり、「あじけ・ない」ではなく、
「あじけな・い」
という語構成ではないか。語幹が「あじけな」で活用語尾が「い」。
ということで「味気のない」という言葉は「間違い」なんじゃないかなあと思いました。