新・ことば事情
7192「きな臭い」
7月18日に発生した京都アニメーションへの放火殺人事件、大変な惨事となってしまいました。亡くなった34人もの方々に哀悼の意を表し、ケガをされた方の一日も早いご回復を願います。
さて、事件の翌日のお昼に、他局のニュースを見ていたW報道部長が、
「道浦さん、ちょっといいですか」
と声をかけて来ました。
「さっき、他局の中継で『現場では、きな臭いにおいが立ち込め』と言っていたんですが、この場合『きな臭い』で良いんですか?」
「たしかに『きな臭い』は、『事件か何かが起こりそうな、不穏な雰囲気を表す言葉』として使われますね。ちょっと辞書を引きましょう」
ということで『広辞苑』を引いてみました。
*「きなくさい(きな臭い)」=(1)紙・綿・布などのこげるにおいがする。こげくさい。(2)硝煙のにおいがする。戦いや物騒なことが始まりそうな気配である。(例)きな臭い情報が流れる。(3)なんとなくあやしい。うさんくさい。(例)きな臭い男。
これで言うと、放火現場は、(1)の意味で言えば間違いではありませんが、普通、
「きな臭い」
は(2)の意味で使うことのほうが多いように感じます。
(1)の意味を指し示す場合は、ダイレクトに、
「焦げ臭い」
と言うのではないでしょうか?
*「こげくさい(焦げ臭い)」=物の焼け焦げるにおいがする。(例)焦げ臭い御飯。
いかがでしょうか?