新・読書日記 2019_094
『平成史』(片山杜秀・佐藤優、小学館文庫:2019、5、7)
30年余り続いた「平成」が予定通りつつがなく終了し、時代は「令和」に変わったが、もう慣れちゃったね。
この文庫本は「平成」が終わってすぐの「5月7日」に出ている。もう週刊誌並みのスピードです。単行本は「去年4月」に出ているので、その後の「平成の最後の1年余」が欠けていたのだが、文庫版では「平成最後の年の分」も付け加えられ、まさに「完全版」と言えるだろう。この一冊で「平成」が分かると思う。
「知の巨人」2人が、「平成」を、最初は5年ごとに、その後現在に近付いて来たら2~3年ごとに輪切りにして、分析していくという形の本書。
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バブル崩壊と55年体制の終焉(1989-1994)
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オウム真理教がいざなう千年に一度の大世紀末(1995-1999)
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小泉劇場、熱狂の果てに(2000-2005)
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「美しい国」に住む絶望のワーキングプアたち(2006-2008)
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「3・11」は日本人を変えたのか(2009-2012)
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返って来た安倍晋三、そして戦後70年(2013-2015)
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天皇は何と戦っていたのか(2016-2018)
そして、「文庫版新章」として「平成が終わった日」が加わっている。佐藤さんの「あとがき」は、まさに「平成が終わった日=4月30日」に書かれているのだから、その徹底ぶりには恐れ入る。リアルタイムだ。
対談部分も勉強になるが、そこに出て来た出来事などを、章末ごとに詳しく解説してくれているのも良い。
【佐藤】「民主主義の意思決定には時間がかかる。でも現在はその時間の経過に耐えられない。だから意思決定に時間をかけない独裁体制を求めてしまう。そしてそれが世界のトレンドになりつつある。日本でも安倍政権に独裁に近い権力を与えなければならないと考えるようになった。安倍一強時代は、国民の集合的無意識が成り立たせているのです」
【片山】「デモクラシーの崩壊、議会制民主主義の機能不全ですね。」
こんなにズバッと、本質を言い当てた言葉があるだろうか。
佐藤氏は、刑務所で確定死刑囚・坂口弘氏と"交流"があった、という。その坂口氏の2005年に作った歌(短歌)の中に、こんなのがあったと言う。
「七月を<ナナガツ>と読む 若き女(ひと)の放送が 気にかかるかな」
この「若き女」って「赤江珠緒さん」ではないかな?と思いました。
また、巻末には佐藤さんが推す「平成ブックリスト50」が!その50冊のうち、私は15冊読んでいた。「平成史シネマ&ドラマリスト300」もあって、30の内私は10見ていた。まずまずか。同時代人として。
その最後に挙がっていたのは、天海祐希主演で、日テレで2005年に放送されたドラマ『女王の教室』だ。実はこのところ、このドラマの一場面をSNG上でよく見かけるのだ。
というのは「女王」である天海祐希の"あのセリフ"が、現在を予言しているかのようだからだ。それは、こんなセリフ。
『いい加減、目覚めなさい。日本という国は、そういう特権階級の人たちが、楽しく幸せに暮らせるように、あなたたち凡人が安い給料で働き、高い税金を払うことで成り立っているんです。そういう特権階級の人たちが、あなたたちに何を望んでいるか知っている?
今のまま、ずーっと愚かでいてくれれば良いの。世の中の仕組みや、不公平なんかに気付かず、テレビや漫画でもボーッと見て何も考えず、会社に入ったら上司の言うことをおとなしく聞いて、戦争が始まったら真っ先に危険な所に行って戦ってくれば良いの。』
・・・・。当時は荒唐無稽に思えたこのセリフだが、今、聞いてみると、ぞっとするね。