新・ことば事情
7189「ブレーキを踏み間違えた可能性」
「可能性」
という言葉は、
「まだ、起こっていないことが、今後起きるのかどうか」
について語る場合に使いますね。
「景気が良くなる可能性」「AIが更に進化する可能性」「日本が優勝する可能性」
といった具合です。ただ、
「悪いこと」「都合の悪いこと」
に使うと、いささか具合が悪い。例えば、
「交通事故に遭う可能性」「台風が直撃する可能性」
といった場合です。こういう時は、「可能性」の代わりに、
「恐れ」
を使って、
「交通事故に遭う恐れ」「台風が直撃する恐れ」
と言うべきでしょう。
ただ、タイトルに掲げたような場合はどうか。つまり、
「ブレーキを踏み間違えた可能性」
これは「恐れ」にしなくてよいのか?
これは「可能性」で良いのですね。
たしかに、これは「事故が起きて、その原因を調べている段階」の一文ですので、
「事故は、悪いこと」
なのですが、「恐れ」にしなくてもよいと思います。理由は、
「すでに(事故が)起きているから」
起きてしまった「過去のこと」についての「原因分析」には「恐れ」は使わないのです。あくまで「恐れ」は、
「今後起きる可能性のある悪いこと」
について使います。「原因分析」は「真理を追求」するものですから「可能性」を使えるのですね。