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『道浦TIME』

新・ことば事情

7186「命日」

6月に東京で開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、

「命日」

について質問しました。

『兵庫・明石市の大蔵海岸で起きた砂浜陥没事故(2001年12月)で、02年5月26日に亡くなった、金月美帆ちゃん(死亡当時5歳)。今年の5月26日のニュースで、「17回目の命日を迎えたきょう」という表現が出て来ました。しかし、「『命日』は亡くなった日を含む」と考えると、「18回目ではないか?」という意見が出ました。ところが、「祥月命日」を辞書で引くと、「1周忌以後に巡って来た、故人の亡くなったのと同じ月日」とあり、一般的には「『祥月命日』の省略形として『命日』が使われている」と思われます。そうすると、「17回目の(祥月)命日」も正しいことになります。ややこしいので、「命日」を使わずに、「亡くなってから丸17年」としたほうが良いとアドバイスしたのですが、「命日」は「亡くなった当日」を含むのか含まないのか、どのようにお考えでしょうか。』

これに対する各社の意見は、以下の通りです。

(NHK)辞書では「死んだ日」となっているが、放送では「亡くなった日」は数えないので「17回目の命日」。「結婚記念日」が「結婚1周年」=「1回目」と同じ。

(日本テレビ)NHKとほぼ同じ。辞書では「命日=1周忌以降」なので「17回目」とする。関連で「終戦の日」「原爆慰霊の日」は「当日」を含むかどうかで悩む・・・。

(TBS)辞書では「亡くなった日のこと」とあるので「当日を含む」だろう。しかし「東日本大震災から10年」と言えば「2021年3月11日」のことになる。亡くなって「1年」は「1周忌」なのに、「2年」は「3回忌」なので迷うな、と。

(テレビ朝日)NHKと同じ。「命日」を回数で数えると、ややこしい。「亡くなって〇年」と故人を偲ぶ日が「命日」。

(テレビ東京)原稿検索で「〇回目の命日」は、1件も出て来なかった。

(フジテレビ)「命日」は回数では数えない。辞書の記述を読むと、迷う。誤解を招かないような表現にする。

(朝日放送テレビ)去年5月26日の原稿は「亡くなってから丸17年」だったが、今年は確認していない。

(毎日放送)個人的には、「命日」は「亡くなった当日」は含まないと思う。「亡くなって丸〇年」が分かりやすい。「命日」というのは、仏教用語か?使って大丈夫か?

(新聞協会用語専門委員)「命日」は本来「月命日」を指したが、ここでの「命日」は「祥月命日」の省略形のこと。普通「祥月命日」は「〇回忌」を使う。

(テレビ大阪)知恩院で聞いたら、「葬儀の日」を「1回忌」とし、翌年の亡くなった日は「1周忌」=「2回忌」。だから翌々年(丸2年)は「3回忌」となる。先ほども言ったが仏教には「ゼロ」の考え方・概念がない。「零の発見」は「7~8世紀」なので、最初は「1

」から始まる。

(共同通信)「命日」は「祥月命日」のこと(省略形)なので「翌年から」始まる。

1997年に起きた「神戸・酒鬼薔薇事件」の被害者・土師(はせ)淳君のお父さんに手記を書いてもらっているが、「2016年」に書かれた手記には「19回目の命日がやって来ます」と記されていた。また、「1912年」に亡くなった「明治天皇没後100年式」は「2012年7月30日」の「100回忌の命日」に行われた。「1914年」に亡くなった昭憲皇太后も、100年後の「2014年4月」に「100回忌」が行われているので「次の年から」数えている。

(時事通信)原稿検索で「命日」は出てきたが、「〇回目の命日」は出て来なかった。

というような意見が出ました。

(2019、7、8)

2019年7月 8日 17:54