新・ことば事情
7179「北里柴三郎の読み」
新・千円札に採用が決まった、
「北里柴三郎」
の「北里」の読み方(ルビの振り方)に関して、
「キタサトか?キタザトか?」
つまり「里」を濁るのか?濁らないのか?ということについて、5月に新潟で開かれた新聞用語懇談会春季合同総会の席で、北里の地元・熊本の「熊本日日新聞社」の委員から質問が出ました。
(熊本日日新聞)北里柴三郎の生誕地・熊本県小国町では「キタザト」と「濁って」発言(発音)しています。博物館のアルファベットも「KITAZATO」。ところが、政府発表の時は「キタサト」と清音。一部教科書も「キタサト」。読み方は、「政府」ではなく「地元」を尊重するべきではないか。各社、ルビはどのように振っていますか?ちなみに地方局(地元テレビ局)では、テレビ朝日系列の「熊本朝日放送」だけが、キー局の方針に逆らって(?)「キタザト」と濁っているそうだ。
(テレビ朝日)たぶん「キー局に逆らって」と言うことはなく、「ローカル放送」では「ザト」と濁り、全国ネットに送る際は「サト」と清音で読んでいるのではないか?放送の場合は「濁る・濁らない」は大問題。今回は「北里大学」「北里病院」は「キタサト」と濁らないと公式発表している。本名は「キタザト」と濁るのは間違いない。本人はドイツ留学時代に「サト」(SATO)とサインしていた。どっちも間違いではないが、キー局としては「サト」で統一。お札を発行する財務省も「サト」。
(日本テレビ)「金栗四三」(カナクリ・シソー)も、最初は「カナグリ・シゾー」と濁っていたが、地元の方たちの運動が功を奏して「カナクリ・シソー」になったのだから、これも熊本の地元が頑張って「ザト」だと運動してみては?
(熊本日日新聞)北里柴三郎の孫は、ある製薬会社の社長になっているのだが、社長就任時の取材に「『サト』か?『ザト』か?」と聞かれて「どちらでも良い」と答えてしまい、共同通信の配信で「ザト」と出てしまった・・・。
その後の懇親会の席で、テレビ朝日の委員から、こんな話を聞きました。
「たぶん柴三郎は、ドイツ留学時に『ザト』と読んでもらうために、サインを『SATO』としたのだろう。ドイツ語で『SA』は『ザ』だ。もし『サ』と読ませるなら『S』を重ねて『KITASSATO』にしたはずだ。しかし。その『SATO』のサインが英語圏で流れて『サ』と読まれるようになってしまったのではないか?」
これは、なかなか説得力があるなと思いました。