新・ことば事情
7155「花々と花」
ことしの春、「桜の花」が満開の様子を指して書かれた原稿で、
「桜の花々が満開です」
というような表現が出て来て、「ちょっと待てよ」と思いました。
というのも私の語感では、
「花々」=「花の種類がたくさんある」
ことを意味し、
「単に『花』の複数形ではない」
のではないか?と思ったのです。
つまり「1種類の花」は、いくら数が多くても「花々」とは呼ばないのではないか?と。
例えば、「人」の複数形である「人々」や、「村」の複数形である「村々」(注・「ムラムラ」ではない)も、「人」「村」を「々」で繰り返してはいるので「複数」ではあるが、その一つ一つは「決して同じではない」ように思うのですね。すなわち、この繰り返し記号「々」が示す同音の反復は、
「多様な個性」
を示していると思うのです。それに対して「桜の」を断定された「ソメイヨシノ」は、
「多様性に欠ける」
ように思うのですね。
ということで、ここは、「桜の花々が満開」ではなく、
「(総体としての)桜の花が満開」
とすべきではないか?と思い、そのように原稿を直しました。