新・読書日記 2019_068
『橋を渡る』(吉田修一、文春文庫:2019、2、10第1刷・2019、3、5第2刷)
2014年~2015年にかけて『週刊文春』誌上で連載された小説。『週刊文春』は毎週読んでいるが、連載小説は全く読んでいないので、こんな作品だとは知らなかった。
他の本を読んでいて「これは読むべきだ」と思い、文庫を購入して読んだ。(単行本は2016年に出ていたが、知らなかった。)
物語は大きく分けて「4つ」に分かれている。まず、別々の人物(主人公)の、現代における「3つ」の物語・エピソードが語られる。最初は、
「これは一体、どういうことなんだ?」
と思う・それが4つ目の物語、これは「未来」の話なんだが、そこに収斂していく。ある種の「パラレルワールド」的な、また「縁(えにし)」とでもいうべき感じか。すべてのことはつながっているんだよ、という感じで、「点」と「点」だった内容が「線」に繋がり「面」を構成して立体的になっていく。
これ、単行本や文庫本で一冊になっているからいいけど、「週刊誌の連載」で読者が全体像をつかむのは、相当難しかったのではないか?
この、ある種「ディストピア的小説」から、「現代」を生きる我々は、「未来」を見据えた(予測した)行動を取らなくてはならないと、強く感じた。
そういうことを言いたかったんじゃないのかな?吉田修一は。
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