新・読書日記
2019_061
『しあわせしりとり』(益田ミリ、ミシマ社:2019、4、25)
著者は1969年生まれの漫画家でエッセイスト。大阪生まれ・大阪育ち。『週刊文春』の見開きの漫画でおなじみ。益田ミリ、お父さん亡くなってたのか。知らなかった、『週刊文春』の漫画では元気なのに。著者は私より8つ年下。『週刊文春』連載の漫画には大阪弁は出てこないが、エッセイでは出てくる。エッセイ読むのは2冊目かな。これは「朝日新聞」での連載エッセイをまとめたもので、「各エッセイのタイトル」が「しりとり」になっている。エッセイのタイトルが、次につながるように、なんだかちょっと訳の分からない絵画のタイトルのようになっている所もあるが、それはご愛敬。これ、おもしろい発想だね。マネしてみようかな。
「ミリ」という名前から小柄な人をイメージしていたが「Lサイズ」なのか。意外。お店などショーウインドー越しに覗くそうだ。漱石の「硝子の中」の感覚か。
「スマホ店の青年と機械音痴」(174~175ページ)に書かれた、
「時代は後戻りしない。これから最新のスマホが開発されつづける。最新最新を繰り返した先にはどんなスマホが待っているのか。虫歯治療くらいはやってくれそうな気がする」
これには声を出して笑いましたね。
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(2019、5、27読了)
2019年5月27日 22:52
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新・読書日記
2019_060
『「声」とメディアの社会学~ラジオにおける女性アナウンサーの「声」をめぐって』北出真紀恵、晃洋書房:2019、3、30)
著者は、関西のラジオのフリーアナウンサーから大学の先生(東海学園大学教授)になった人。不勉強で存じ上げないが、同世代か少し先輩に当たるのではないだろうか?
ラジオとテレビで少し世界は違うが、同じ関西での話がたくさん出て来るので、同時代の同業界人としては共感しやすい。
そんな放送業界での「女性アナウンサーの立ち位置・待遇に関する同時代的かつ歴史的視点での論文集」。
「論文」なので少し堅苦しく回りくどく、面白いかと言うと、そうでもないというのが正直なところ。興味深くはあるのだが。
これを基にしたエッセイを書いた方が、絶対に面白いのに...とは思いました。
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(2019、5、7読了)
2019年5月10日 12:22
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新・読書日記
2019_058
『ゴジラ音楽と緊急地震速報』(伊福部達・監修、筒井信介・著、ヤマハミュージックメディア:2012、1、10)
「令和」に入って初めて読み終えたのは、「ゴジラ」「緊急地震速報」の本だった。
あの「♪チャンラャーン」という、不安を想起させる『半音階』で上がるチャイム音。あれを創った・決めたのは、「ゴジラ」の音楽の作曲者として有名な「伊福部昭」の甥である「伊福部達(いふくべ・とおる)東京大学名誉教授・北海道大学名誉教授」だった。
伊福部達は、福祉工学の専門家。聴覚障害者の人に伝わりやすい音とは?などの研究を行って来た。その実績などから「緊急地震速報」の作成を依頼されたのが、2007年4月だったという。その際の条件は、5つ。
-
注意を喚起させる音であること
-
すぐに行動したくなるような音であること
-
既存のいかなる警報音やチャイム音とも異なること
-
極度に不快でも快適でもなく、あまり明るくも暗くもないこと
-
できるだけ多くの聴覚障碍者に聴こえること
だったそうだ。なるほど。難しい条件ですね。
それでたどり着いたのは、叔父である作曲家・伊福部昭の作品、
「『シンフォニア・タプカーラ』の第3楽章・Vivace(ヴィヴァーチェ)の冒頭」
だったのだ。
この功績が認められて、伊福部達は今年3月、「第70回日本放送協会放送文化賞」を受賞している。その受賞のテレビニュースをたまたま見ていて、伊福部の名前を見つけ、
「そうか、緊急地震速報の功績でもらったんだ!」
と気付き、本書をしっかり読もうと思ったのだ。
その前に、実はよく行く谷町四丁目のビルの地下にある中華料理屋(まるで、ドラマ「私、定時で帰ります。」に出て来る「上海飯店」のような感じですが)の入り口のドアのチャイムが、まるで「緊急地震速報」で、お客さんが来るたびに、
「♪チャンラーン、チャンラーン」
と不気味に鳴るのも、気になっているのだが・・・。
ちなみに「♪チャンラーン」が半音階ではなく、同じ高さの高めの音だと、
「♪チャンラーン!林家こん平でーす!」
になります。あれも一種の「ゴジラ登場」のようなものだったか・・・。
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(2019、5、4読了)
2019年5月10日 12:19
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新・読書日記
2019_057
『河鍋暁斎 暁斎百鬼画談』(安村敏信・監修解説、2009、7、10第1刷・2015、8、30第2刷)
兵庫県立美術館で開かれている『河鍋暁斎展』のグッズ売り場で購入。
大きな図録が2500円で、この文庫本が1080円。文庫本としては少し高いが、カラーの写真も多く、その意味ではお得。
絵を見ていると「鳥獣戯画」のようでもあり、「浮世絵」のようなものもあり、「屏風絵」のようなものもあり、「水木しげるの妖怪」のようでもある。ネットで検索したら、実際に過去の展覧会で、河鍋暁斎の絵の中に『目玉の親父』や『鬼太郎』をコラボさせたグッズもあったそうだ。その画像を見てみると、何の違和感もなく溶け合っていた。
骸骨が酒を飲んでいる絵画は「妖怪もの」と言うよりは「人間の骨格標本」を正確に書いたものではないか?そういう意味では「ターヘル・アナトミア(解体新書)」のようでもある。変幻自在の画風だなあと思いました。
以下、読んですぐに書いたメモです。
『鳥獣戯画から北斎漫画、水木しげるからジブリ宮崎駿・千と千尋の神隠しに繋がる系譜。蛙を題材に取る、魅力を感じるのは草野心平を想起させる。骸骨の絵は、ターヘルアナトミア、解体新書。人間を書くのに、その骨格をわかっていなくてはならないという意図か。そして骨格が分かると、肉は皮相に過ぎず、骨格のみで描いた方が、より伝わると感じたのではないか。』
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(2019、5、4読了)
2019年5月10日 12:18
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新・読書日記
2019_056
『河鍋暁斎展図録』(兵庫県立美術館、2019、4)
いつもよく行くスペインバルで、知り合いの落語家さんが連れて来た、後輩の落語家さんが、
「きょう、これ行って来たんですよ!僕、大好きなんです『河鍋暁斎』。良かったですよ!」
と教えてくれたのが、今、兵庫県立美術館で開かれているこの「河鍋暁斎展」だ。
「かわなべ・きょうさい」
と読む。幕末から明治初期に生きた絵師であり、浮世絵師であり、はたまた漫画家?明治3年に東京・上野で、酔っ払って不敬な絵を描いているのが見つかって官警に取っつかまる前は、
「狂斎」
と名乗っていたそうだが、逮捕にこりて「狂」の字を「暁」に換えた。でも読み方は、そのままで、
「きょうさい」
だ。こういう人の存在を、全然知らなかった。美術展も、ほどよく空いていて、見やすい。
が、展示の中の説明文に"不親切さ"が目立った。たとえば、
「麹町四丁目の依頼で描いた」
とした横に、
「現在も麹町三丁目の町会が持っている」
と写真のキャプションに書いてあり「三丁目」か「四丁目」かがわかりにくい。どちらも間違いではないようだが、説明不足。
また、
「関心ごと」
という表記が2回も出てきたが、これは正しくは、
「関心事」
で、読みは、
「かんしんじ」
であろう。そして、
「『下絵』では蒸気機関車の煙突から煙が出ているが、『完成図』ではその上に天女が舞っている」
と説明文にあるのに、どこにも「完成図」の写真すら展示していないのは、不親切すぎる。そして、それを説明できる係員も学芸員も不在だった。
そういう意味では、珍しく不親切な展覧会だった。
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(2019、5、4読了)
2019年5月10日 12:17
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新・読書日記
2019_055
『平成新語 出どこはどこ?』(中村三郎、柏書房:2019、4、10)
サブタイトルは「平成を象徴する言葉の『起源』!」。
ほとんど同時代で経験してきた言葉たちだから「ああ、あった、あった」という感じで懐かしく、それこそ「高校時代のアルバム」をめくるような手つきで読み進めた。
再確認していく感じ。中には「へー、そうだったのか!」というものもありましたが。
「言葉」によって「平成30年史」を振り返った感じでしたね。
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(2019、4、29読了)
2019年5月10日 12:15
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新・読書日記
2019_054
『日本の国難~2020年からの賃金・雇用・企業』(中原圭介、講談社現代新書:2018、4、20第1刷・2018、5、21第4刷)
1年前に出た本なので、もう、少しズレている部分もある。たった1年でこんなに変わったのか!ということを再確認しながら、もう来年=2020年に迫った「国難」とはどんなものが来るのか、と読み進めた。衝撃に耐えねばならないし、できればその国難を避けたいと思う。
「世界金融危機再来の恐れ」「30年前から放置されてきた少子化による労働力不足問題」。虫歯のように進行か。そして「雇用」の問題、「賃金」の問題。生き残る自治体、転げ落ちる自治体。本当にこの先、日本はどうなってしまうのか?これに対する対策を、本気で丁寧に真摯に向き合っているのか?口先だけではないのか???読めば読むほど現実の政治に対して不安は募るばかりだ。
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(2019、4、16読了)
2019年5月10日 12:05
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新・読書日記
2019_053
『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』(片山杜秀、文春新書:2018、11、20第1刷・2018、12、10第2刷)
西洋音楽の歴史は、当然のことながら、その時代背景と無関係ではない。
言われてみれば当たり前のことだが、言われるまで気付かなかった。
「絵画」に関しては、その昔、スペイン・マドリードのプラド美術館に行った際、時代ごとに並べられた絵の作者(画家)の「所属国」が、
「その時代の"世界を支配した国"である」
ことに気付き、
「画家のパトロンはお金持ち、つまりその時代に栄えていた国なのだろう」
と推測が付きましたが、いろんな意味で「音楽」はその傾向がもっと強いのかもしれません。そういった視点で音楽家・作曲家の曲と人物を読み解いていく。面白そうではありませんか!!実際、面白かったです!
グレゴリオ聖歌は「一神教」だと。ポリフォニー・楽器は「多神教」につながっていくと。「オペラ」は「俗」の世界だと。それはそう思う。カトリックの大本「バチカン」を抱える「イタリア・ローマ」で、「俗世間の音楽」として「オペラ」が人気を博し成長を遂げた。「俗と聖」、おお、まさに「ダヴィンチ・コード」「天使と悪魔」「インフェルノ」「オリジン」などで知られる作家、ダン・ブラウンの描く世界ではないですか!
そして「ベートーベンの時代」の交響曲は「うるさい」音楽でその「うるさい」のが「新しかった」のだと。
ワーグナーの時代にナショナリズムの勃興があり、それが結びついて行くのを見ても、音楽と時代は共に寄り添って影響し合っているのだなということが、よくわかりました!勉強になりました!
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(2019、3、28読了)
2019年5月10日 12:04
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