新・ことば事情
7138「年経る」
4月10日に行われた「天皇陛下即位三十年奉祝感謝の集い」で、
「天皇陛下の読まれた和歌(=御製=ぎょせい)」
「皇后さまが詠まれた和歌(=御歌=みうた)」
に、松任谷正隆・由実夫妻が曲を付けた歌が披露されました。
このうち「御製」のほうの歌詞は、こういうものでした。
「我が国の 旅重ねきて 思ふかな 年経る毎に 町はととのふ」
この中の「年経る」の、
「経る」
をどう読むか。普通は、
「へる」
ですよね。でも私は、和歌は「文語」であるから、
「ふる」
と読むのではないか?と思い、「ふ」とルビを振ったのですが、実際に国立劇場で歌われた歌の歌詞は、
「へる」
でした。間違ってしまいました・・・。
しかし、よく考えたら、きっと「へる」の古語が「ふる」であり、「年ふる」ものが、
「ふるい(古い)」
の語源なのではないでしょうか?そう感じたのでした。
『精選版日本国語大辞典』で、「としふる」を引くと、
「としふる(年旧・年古)=年月がたって古びる」
とありました。用例として梶井基次郎の、『冬の蠅』(1928)2から、
「年古りた杉の柱廊が続いた」
とあったので、あながち間違いでもないでしょうね。