新・ことば事情
7136「結了」
10年前の「2009年8月19日」に、タイトルの
「結了」
とだけ書いたままのもので、棚ざらしだったのですが、10年経って、またこの言葉を目にしました。
「2019年4月7日」の統一地方選挙の投票結果に関して、ツイッターに載っていた、
「KBS京都」の京都市議会下京区の開票状況で、画面の「開票」の後ろのスペースに、
「結了」
という文字が記されていたのです。これは、開票途中だったら「50%」とか「75%」とか示される欄に、読売テレビだったら、
「開票率 100%」
と出るのと同じですね。
『精選版日本国語大辞典』で「結了」を引くと、
「すべて終わること。終結。終了。」
とあって、用例は、坪内逍遥『当世書生気質』20(1885-86)で、
「僅に説洩せし条を拾ひて、ここに顛末を結了すべし」
と、何だか難しい文章が載っていました。
『日本国語大辞典』には、坪内逍遥以外にも徳富蘆花の『思出の記』10(1900-01)から、
「初めて首尾よく結了した」
という用例も載っていました。
『デジタル大辞泉』の「結了」の用例は夏目漱石の『こころ』からで、
「自分のなすべき凡(すべ)ての仕事が既に決了して」
とありました。『新潮現代国語辞典』『広辞苑』にも「結了」は載っていましたが、用例はありませんでした。
『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『旺文社標準国語辞典』『三省堂国語辞典』『現代国語例解辞典』『三省堂現代新国語辞典』『NHK日本語発音アクセント新辞典』には、「結了」は載っていませんでした。
よく似た文字の、同じ音の言葉に、
「決了」
も『精選版日本国語大辞典』に載っていましたが、こちらの意味は、
「あることの、その本来の意味を決定して、真実を明らかにすること。」
とちょっと難しい。用例は『正法眼蔵』行持(1251―53)からで、
「すでに決了することをえたらん、また一日をいたづらにせざるべし」(法華経―法師品)
というものでした。
「結了」のほうは、
「選挙の開票」
で使うことが分かりました。
しかも恐らく、漢文にも親しみのあった明治時代には「ふつうに」使われていたのが、現代ではあまり使われなくなった言葉であろうこともわかりました。