新・読書日記 2019_046
『イスラムが効く!』(中田考・内藤正典、ミシマ社:2019、3、5)
イスラム法学者でムスリム(イスラム教信者)である中田考先生と、イスラム地域研究者の内藤正典先生の対談。イスラムの専門家同士だが、内容は、素人が読んでもわかりやすいように、特に内藤先生が司会と言うかそのあたりを配慮して、中田先生の話を引き出してくれているような感じ。内藤先生が1956年生まれ、中田先生が1960年生まれで、内藤先生の方がちょっと先輩。
タイトルの「イスラムが効く!」だが、「イスラム」が「何に効く」のか?
目次を見てみると、イスラムは、「人生」「心の病」「高齢社会」「家族」に効くようだ。つまり「イスラム」というのは、「宗教」というより「ものの考え方」であるということかな。
われわれ現代日本人は当たり前のように「西洋資本主義社会」の中にどっぷりと浸かって仕事や生活をしているが、世界にはそういう形でない考え方の中で仕事をし(あるいは、せず)生活をしている人たちが、何十億人もいるという現実を、もっと知ることも必要だと。
イスラムは「神の法」のみが大切。ムスリムの人は、
「人が作った『人の法』なんて、どうせ破られるに決まっている」
と思っている、と。その意味では「性善説」ではないよね。「人間」に対するある種の「諦め」があるような。
そして、イスラムは本当の意味では「国家」を造れないと。現代世界は「民族主義に根差した国民国家」が行き詰まりを見せている。そこに「イスラムの考え方は効く」と。うーん、どうなんだろうなあ。でも、
「人と人のあいだに線を引く、そして優劣をつける、『うち』と『そと』を分ける。『うち』は優れていて『そと』は劣っている。この発想は民族主義や領域国民国家というものをつくりだした西欧の発想そのもの」
という内藤先生の意見には賛同します。