新・ことば事情
7125「安らかに眠るな」
4月3日に行われた故・内田裕也さんのお別れの会。
1983年公開の映画「十階のモスキート」を監督した崔洋一さん(69)は弔辞で、最後に、
「安らかに眠るな」
と言いました。普通は、
「安らかにお眠りください」
と言うところなのですが反骨のロックンローラーの内田さんには、それはふさわしくないと考えられたのでしょう。また、
「なんで死んじゃうんだよぉ!」
という思いも込められていると思いました。
驚いたのは、喪主の内田也哉子さんも、弔辞・お礼の言葉の最後に、亡き父に対して、英語でこう言ったのです。
「Fuck'in Yuya Uchida
Don't Rest In Peace
Just Rock'n Roll」
この中の、
「Don't Rest In Peace」
は、日本語にすれば、崔監督が言ったのと全く同じ、
「安らかに眠るな」
です。この一致に驚くとともに、「内田裕也」という人は、たしかにそういう人だったのだな、ということがよくわかる感銘深いコメントでした。
内田也哉子さんの弔辞は、本当に文学的で哲学的な思索に富んだもので、とっても良かったです。声も容貌もお母さんの故・樹木希林さんにそっくりだし。DNAは完全に受け継がれているのだなと思いました。
そうそう、お母さんの本、100万部を超えるベストセラーになっているそうですよ。女性の読者が多いと。私も読みましたが。(2019読書日記016『一切なりゆき~樹木希林のことば~』樹木希林、文春新書)
「Rest In Peace」は、頭文字を取って、
「R.I.P.」
と、欧米ではよく使われるそうです。私は、以前この「R.I.P.」の意味が分からずに調べた際に、英語では「Rest In Peace」ですが、元々のラテン語では、
「Requiescat In Pace」
だと書いてあるのを見て、
「あ、それなら知ってる!」
と思いました。学生時代に「コバケン」こと小林研一郎先生の指揮で、東京交響楽団の演奏で歌った、ベルリオーズ作曲の、
『ファウストの劫罰(ごうばつ)』
の歌詞中に、ラテン語で「Requiem In Pace」が出て来たのを覚えていたからです。
「ア―メンのフーガ」
の直前です。あれか!と。
そのあたりのことは以前(7年前!)「平成ことば事情4878R.I.P.」に書きましたので、あわせてお読みください。