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『道浦TIME』

新・ことば事情

7146「剣の読み方」

4月の新聞用語懇談会放送分科会で、TBSの委員から、

「三種の神器の『剣」は『けん』と読むか?それとも『つるぎ』と読むか?

弊社では、政治部は『けん』、社会部は『つるぎ』でルビを振って出稿してくるのだが・・・。」

そこで各社の委員に挙手でアンケートをしたところ、

*「けん」=なし

*「つるぎ」=全社

と全社、

「つるぎ」

ということになりました。MBSの委員からは、

「弊社の『皇室アルバム』のナレーションでは、『けん(剣)』と『まがたま(曲)』と読んだ。毎日映画社の原稿。宮内庁に聞いたら『どちらでもよい』とのことだった。」

そして平成最後の日、4月30日午後5時からの皇居宮殿・松の間での「退位礼正殿の儀」を伝えた、日本テレビ藤井貴彦アナウンサーは、

「けん」

と読み、テロップには、

「剣(つるぎ)」

と出ていて、両方でバランスを取ったような感じに見えました。

(2019、4、30)

2019年4月30日 19:10 | コメント (0)

新・ことば事情

7145「かざす」

会社においてある手指の消毒液に書かれている文字。だいぶ前からあるのに、つい先日、気付きました。

20190430.jpg

「この『かざす』は、おかしくないか?」

と。

そう、ここには、こう書かれています。

「手をかざすと自動で噴射!ノータッチで簡単消毒!」

でも、手を、

「ノズルの下に出す」

のですから、正しくは、

「手を差し出すと」

とすべきではないか?と思ったのですね。どうでしょうか???

「かざす」については以前(2014年10月)関西地区の新聞用語懇談会で話されたことがあります。そのとき時の様子を、残しておきましょう。その際は、

「本来とは異なる意味合いで使用される言葉への対処に関するアンケート」

の結果を基に、各社から活発な意見が出ました。

○=「そのまま使うもの」、×=「直すもの」、▲=「各社で意見が割れたもの」

< >内が直す場合の各社の「正解」。

▲バーコードリーダーを商品にかざして値段を読み取る

*【直す】6、5社=共同・産経・福井・中国・神戸・徳島・△MBS

→<バーコードリーダーで商品の値段を読み取る・バーコードリーダーを商品に当てて値段を読み取る>

*【直さない】14、5社=朝日・毎日・読売・日経・サンスポ・スポニチ・日刊スポーツ・時事・ABC・KTV・YTV・TVO山陽・愛媛

=「ストーブに手をかざす」と同じ。「かざす」は「翳す」なので「覆って陰にする」というのが語源だから、必ずしも「太陽に手をかざす」のように、手を上にあげなくても良い。

ということでした。

(2019、4、29)

2019年4月30日 12:15

新・ことば事情

7144「御製」

「御製」

は「ぎょせい」と読み、

「天皇陛下が詠まれた御歌」

のことなんだそうです。なんか、こちら(提供する側)が「謹んで作った」感じがしますが、それは、

「謹製」

ですね。「紅白まんじゅう」とかに書かれていそうな感じ。そして、

「御歌」

は「みうた」と読み、

「皇后さまが詠まれた和歌」

のことだそうです。

今回の改元を巡って、何度か出て来たので、覚えることができました。

上皇様・上皇后さまになられてから詠まれる歌のことは、何と呼ぶんでしょうね?

(2019、4、29)

2019年4月29日 21:27 | コメント (0)

新・ことば事情

7143「ひかるとひかり」

「ミヤネ屋」のナレーターさんから報告。

「『爆笑問題』の『太田光(ひかり)』を、ルビが無かったので『ひかる』と誤読してしまいました・・・すみません」

とのこと。

こういうこともあるので、原稿の人名・地名には「必ずルビを」振るように、ディレクターには言ってるんですけどねえ・・・。

漢字で書いてなくとも「ひかる」「ひかり」は覚えにくいですよね。

そこで、

「紛らわしい『光』さん一覧」

を作って、スタッフにメールしました。

【ひかり】

太田光、大江光(作曲家/大江健三郎の息子)、山田光(女子柔道・ソウル五輪金メダリスト/旧姓・佐々木)、福岡晶(元・女子プロレスラー/ひかり)、満島ひかり

【ひかる】

伊集院光、光源氏、伊藤光(横浜DeNAベイスターズ捕手)、稲葉光(ジャニーズJr.)、浦野光(声優=ポパイ、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」ナレーター。2018年86歳で死去)、奥泉光(芥川賞作家)、早乙女 光(氣志團)、林光(作曲家)、緑川光(声優)、宮田光(俳優・声優)、室積光(作家/むろづみ)、弓月光(漫画家/ゆづき)、与謝野光(昭和時代の医学者、与謝野鉄幹・晶子夫妻の長男)、宇多田ヒカル、だいたひかる(お笑いタレント)、ミラクルひかる(ものまねタレント)西田ひかる(タレント)

【あきら】六塚光(ライトノベル作家/むつづかあきら)

こうやって見ると、やはり、

「ひかる」

が多くて、例外的に

「ひかり」

とか「あきら」と読む人がいるようですね。

名前の読み方の確認は、しっかりしましょう!自戒を込めて。

(2019、4、29)

2019年4月29日 21:24 | コメント (0)

新・ことば事情

7142「同級生3」

「同級生」

というのは、普通は、

「同じ学年で同じクラスの人」

を指すと言われます。しかし最近は、

「同学年でクラスが違う人の場合」

にも「同級生」を使ってしまうことがあり、

「間違いだ!」

と言われることもあります。

しかし『三省堂国語辞典』では「同級」の意味に、

  1. 同じ学級(2)同じ学年

を載せていますが、どちらかと言えばそれは少数派でしょう。

でも、本当に「同じ学年は間違い」でしょうか?実在は、古くから使われてあるケースもあるのです。古くて使われているケースでは、

「1学年1クラス」

の場合ではないでしょうか。また、田舎の小学校で

「1年から6年までで1クラスの場合」

だと、

「同じクラスというだけで、学年が異なること」

もあるということになりますね。

「平成ことば事情277同級生」「平成ことば事情473同級生2」もお読みください。

(2019、4、29)

2019年4月29日 21:20 | コメント (0)

新・読書日記 2019_052

『朝日新聞用語の手引 改訂新版』(朝日新聞社用語幹事、朝日新聞出版:2019、4、30)

久々に出た朝日新聞の用語の手引き。私がこれまで手元に持っていたのは2005年の物だから、その後新しいのが出たかもしれないけど、買ってなかった。

今回、ザーッと目を通しました。大変勉強になります。誤りやすい語句の所なんかは、必読ですね。さっそく赤ペンで線を引いたりしました。今後活用させていただきます!


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(2019、4、20読了)

2019年4月29日 21:17 | コメント (0)

新・読書日記 2019_051

『小林秀雄講演第七巻「ゴッホについて」「正宗白鳥の精神」』(小林秀雄、新潮社CDブック2007、7、25)

小林秀雄の講演の録音。合唱団の先輩が「これはおもしろいよ!」と貸してくれた。なかなか聞く機会(気持ち)のないまま、あっという間に数年たち、「そろそろ、返さないと...」と思って、頑張って聞いた。

聞いてみると、まるで噺家の様な語り口。江戸っ子のしゃべり。最初は全然乗り気じゃないようなんだけど、徐々にエンジンがかかってくる感じが、とても面白い。間の取り方も、巧まざるして、上手い!面白いなあ。そう思いました。

2つめの「正宗白鳥の精神」は録音が1980年とわかっているが「ゴッホ」のほうは不詳、でも「ゴッホ」のほうが声が若い気がします。

こうした講演を聞くCDブックというのも、面白いですね。大変貴重な経験でした。


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(2019、4、22聞き終わり)

2019年4月29日 21:13 | コメント (0)

新・読書日記 2019_050

『わたし、定時で帰ります。』(朱野帰子(あけのかえるこ)、新潮文庫:2019、2、1第1刷・2019、3、20第6刷)

他局ですが、ドラマの1回目を見て「これは面白い!」と。原作をたまたま見つけてすぐ購入。時代を反映してますよねえ。今年2月1日第1刷ですぐに3月20日にはもう第6刷!売れてます!よく見たら原作者のペンネーム「朱野帰子(あけのかえるこ)」、「(徹夜)明け」で「帰る子」ですよ!!

タイトル通り「定時で」帰る30代の女性が主人公。仕事と上司と恋と闘いながら、また実は「モーレツ社員だった父の影」を引きずりつつ、その背景には何と、祖父も関わったという「インパール作戦」まで出て来るという。

難題を自ら安請け合いで引っ張り込んできて「責任は取る」と言うだけで実際は何もしないで、失敗は部下の責任にしてしまう困った上司・福永を見ていると、自然と安〇総理を思い浮かべてしまう・・・。

ドラマでは主役が吉高由里子で、これはイメージがぴったり。上司で元・婚約者の晃太郎の役は、ドラマでは向井理だけど、もう少し強引な感じの人がイメージ。松岡修造とか、小澤征悦とか。年齢が少し釣り合わないかな?


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(2019、4、27読了)

2019年4月29日 21:05 | コメント (0)

新・読書日記 2019_049

『誰かが私をきらいでも』(及川眠子(ねこ)、KKベストセラーズ:2019、1、25第1刷・2019、2、10第2刷)

Winkの「悲しい熱帯魚」や、やしきたかじんの「東京」、「新世紀エヴァンゲリオン」の主題歌『残酷な天使のテーゼ』といった名曲を生み出した作詞家・及川さん。最近、ツイッターでその存在を知って、ツイッターでこの本尾存在を知って購入。まさにこの本はツイッターでのつぶやきを基に作られたものだそうだ。対象は、ティーンエイジャーから20代の女性なんだろうなあ。そんな感じの本でした。最後に中村うさぎさんとの同世代対談もあって面白かった。

この本を読んでいたら、スヌーピーが出て来る漫画「ピーナッツ」の登場人物ライナスがいつも持っている毛布「セーフティーブランケット」の話(32ページ)が出て来たんだけど、これがたまたま並行して読んでいた『イスラムが効く!』(中田考・内藤正典、ミシマ社:2019、3、5)でも出て来て、その「セレンディピティー」(偶然の出会い)にびっくりしました。


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(2019、4、28読了)

2019年4月29日 21:03 | コメント (0)

新・読書日記 2019_048

『2019高校サッカー年鑑』(講談社:2019、2、12)

毎年2月ごろ(?)に出る年鑑。奥付けはそうだけど、本当に2月には、出てないんじゃないかな?4月になって手元に届きました。

毎回、母校の成績をこの本で確認しています。

うーん、夏も冬も3回戦までで負けている。もう少し頑張って欲しいなあ。

でも少子化の中でチーム数が減らってないのか、たくさんのチームが戦っています。

頑張れ!


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(2019、4、17読了)

2019年4月29日 21:02 | コメント (0)

新・ことば事情

7141「切っても切り離せない」

4月23日の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」を見ていたら、特集のリード部分で、

「私たちの生活と、切っても切り離せないお金」

というナレーションがあり、違和感を覚えました。この、

「切っても切り離せない」

は、正しくは、

「切っても切れない」

ではないでしょうか?ニュアンスはわかりますけど。

いくつか辞書を引いても載っているのは「切っても切れない」だけでした。

おそらく、「切っても切れない」と「切り離せない」との「混交表現」でしょうね。

気を付けましょう。

(2019、4、23)

2019年4月23日 21:28 | コメント (0)

新・ことば事情

7140「投げキッス」

「キス」と「キッス」

普通は「キス」と言い、「キッス」はちょっと古風な感じですね。「ザ・ヴィーナス」が歌った曲の曲名で、

「キッスは目にして!」

というのがありました。ベートーベンの「エリーゼのために」に日本語の歌詞を付けてオールディーズ風にアレンジした曲。作は何と阿木燿子さん!(その昔、同じ「エリーゼのために」に日本語の詞を付けた「情熱の花」という曲を「ザ・ピーナッツ」も歌っていましたが。)

これは「キッス」ですが、この曲が発売されたのは、

「1981年7月25日」

です。すでに、そのときでも「キッス」は古風な感じだったと思います。でもその2年後の1983年4月には松田英子の13枚目のシングルで、

「天国のキッス」

が出ています。作詞は松本隆。ということは子の頃「キッス」が流行っていたのかもしれません。

それはともかく、意味上は「キス」=「キッス」で同義ですが、使われ方が違う、ということに気付きました。つまり、何かというと、

「投げキッス」

とは言っても、

「投げキス」

とは言わない、ということですね。

グーグル検索では(4月22日)、

「投げキッス」=106万0000件

「投げキス」 = 39万8000件

でした。「投げキス」も結構出て来ましたが、普通は言わないでしょう。何だか、

「魚のキス(鱚)」

を投げているみたいです。

(2019、4、22)

2019年4月23日 21:26 | コメント (0)

新・ことば事情

7139「米でバウンドさせて」

2019年1月の「ミヤネ屋」の街頭インタビューコメントにかぶせられたコメントフォロースーパーをチェックしていたら、

「お肉を、米でバウンドさせて」

という表現が出て来ました。取材に行った若いディレクターに、

「これ、どういう意味?」

と聞くと、

「あれ?言いません?焼き肉で、たれに付けたお肉を一旦、お茶碗のご飯の上に載せてから食べることです」

という答えが返って来ました。

ああ、なるほど!お肉やおかずを、白いご飯の上にチョンと(たしかに)、

"バウンドさせる"

ようにしてから口に入れる行為・・・やってますね。でも、そんな表現は知らなかったなあ。

ネット検索したところ(4月11日)、

「肉をバウンドさせる」=443件

あまり多くはありません。と言うか、極端に少ないです!

しかもこの食べ方、

「贅沢―!!」

と、うらやましがる人もいれば、

「お行儀が悪い!!」

と否定的な意見もありました。まだそんなに一般的ではないようですね、この言葉は。

(2019、4、11)

2019年4月11日 21:52 | コメント (0)

新・ことば事情

7138「年経る」

4月10日に行われた「天皇陛下即位三十年奉祝感謝の集い」で、

「天皇陛下の読まれた和歌(=御製=ぎょせい)」

「皇后さまが詠まれた和歌(=御歌=みうた)」

に、松任谷正隆・由実夫妻が曲を付けた歌が披露されました。

このうち「御製」のほうの歌詞は、こういうものでした。

「我が国の 旅重ねきて 思ふかな 年経る毎に 町はととのふ」

この中の「年経る」の、

「経る」

をどう読むか。普通は、

「へる」

ですよね。でも私は、和歌は「文語」であるから、

「ふる」

と読むのではないか?と思い、「ふ」とルビを振ったのですが、実際に国立劇場で歌われた歌の歌詞は、

「へる」

でした。間違ってしまいました・・・。

しかし、よく考えたら、きっと「へる」の古語が「ふる」であり、「年ふる」ものが、

「ふるい(古い)」

の語源なのではないでしょうか?そう感じたのでした。

『精選版日本国語大辞典』で、「としふる」を引くと、

「としふる(年旧・年古)=年月がたって古びる」

とありました。用例として梶井基次郎の、『冬の蠅』(1928)2から、

「年古りた杉の柱廊が続いた」

とあったので、あながち間違いでもないでしょうね。

(2019、4、11)

2019年4月11日 21:51 | コメント (0)

新・ことば事情

7137「関心ごと」

4月5日「朝日新聞」夕刊の記事、「もっと知りたい~投票先の選び方5」で、

「自分の関心ごと 見定めることから」

という見出しを見つけました。この、

「関心ごと」

という言葉、本来は、

「関心事」

と書いて、

「かんしんじ」

と読むのが正しいと思います。本文を読んでみたら、本文の中でも、

「投票先選びで大切なのは『自分の関心ごと』を見定めることだという。」

と、投票先の判断材料を提供するサイト「政治山」を運営するベンチャー会社の市ノ澤充社長(42)という人の言葉として使われています。「関心ごと」と言ったのは、この市ノ澤社長なのかな?

でも、そのあとには、若者と政治をつなぐNPOの菅将大さん(24)という人が、高校の授業で使う方法として教えてくれたのは、

「まず関心ごとを一つ、紙に書く。」

だそうで、ここでまた「関心ごと」が出てきました。

これが「取材先の人の言葉」なのか、この記事を書いた「荻原千明記者」の言葉かはわかりませんが、整理部(?)が「見出し」に取り、校閲部もそのまま通ったということは間違いないですね。

(2019、4、11)

2019年4月11日 21:02 | コメント (0)

新・ことば事情

7136「結了」

10年前の「2009年8月19日」に、タイトルの

「結了」

とだけ書いたままのもので、棚ざらしだったのですが、10年経って、またこの言葉を目にしました。

「2019年4月7日」の統一地方選挙の投票結果に関して、ツイッターに載っていた、

「KBS京都」の京都市議会下京区の開票状況で、画面の「開票」の後ろのスペースに、

「結了」

という文字が記されていたのです。これは、開票途中だったら「50%」とか「75%」とか示される欄に、読売テレビだったら、

「開票率 100%」

と出るのと同じですね。

『精選版日本国語大辞典』で「結了」を引くと、

「すべて終わること。終結。終了。」

とあって、用例は、坪内逍遥『当世書生気質』20(1885-86)で、

「僅に説洩せし条を拾ひて、ここに顛末を結了すべし」

と、何だか難しい文章が載っていました。

『日本国語大辞典』には、坪内逍遥以外にも徳富蘆花の『思出の記』10(1900-01)から、

「初めて首尾よく結了した」

という用例も載っていました。

『デジタル大辞泉』の「結了」の用例は夏目漱石の『こころ』からで、

「自分のなすべき凡(すべ)ての仕事が既に決了して」

とありました。『新潮現代国語辞典』『広辞苑』にも「結了」は載っていましたが、用例はありませんでした。

『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『旺文社標準国語辞典』『三省堂国語辞典』『現代国語例解辞典』『三省堂現代新国語辞典』『NHK日本語発音アクセント新辞典』には、「結了」は載っていませんでした。

よく似た文字の、同じ音の言葉に、

「決了」

も『精選版日本国語大辞典』に載っていましたが、こちらの意味は、

「あることの、その本来の意味を決定して、真実を明らかにすること。」

とちょっと難しい。用例は『正法眼蔵』行持(1251―53)からで、

「すでに決了することをえたらん、また一日をいたづらにせざるべし」(法華経―法師品)

というものでした。

「結了」のほうは、

「選挙の開票」

で使うことが分かりました。

しかも恐らく、漢文にも親しみのあった明治時代には「ふつうに」使われていたのが、現代ではあまり使われなくなった言葉であろうこともわかりました。

(2019、4、11)

2019年4月11日 20:59 | コメント (0)

新・読書日記 2019_047

『ドラマへの遺言』(倉本聰・碓井広義、新潮新書:2019、2、20)

テレビ関係の本は大体見つけたら買うが、すぐに読むかといううとそうでもなくて積んどくになる物も多い。この本も読みさしになっていたが、ショーケン(萩原健一さん)が亡くなって「傷だらけの天使」に注目が集まったことで、「傷だらけの天使」の脚本家・倉本聰のことについて「読むなら今だ!」と読みだしました。

倉本聰を師と仰ぐ元テレビマンユニオンのディレクターで現在、上智大学教授の碓井広義が、倉本聰に対してロングインタビューする形式で綴られているが、これは本当に面白い「歴史書」のように感じた。(装丁に関して注文を付けると、倉本の発言部分が「濃い太字」で、碓井の発言や地の文が「薄めの字」で書かれているのだが、老眼にとってこれはきつい。同じ濃さで段落を一つ下げるとか、そういった工夫をしてほしかった。)

倉本は昭和10年の早生まれで、うちの両親も昭和10年生まれで、ほぼ親の世代。学年は1つ上だが、2浪して東大に入っているので大学卒業はうちの親より1年下。同世代だな。

実は私は「傷だらけの天使」も「北の国から」も「やすらぎの郷」も見ていないのですが、それでも、大変興味深く、面白く読めました。

昔のテレビ局、無茶苦茶やなあと。そういう時代だったんだよなあ、というエピソード。

ドラマの打ち上げを、熱海かどっかの温泉旅館でやったときに、愛人を連れて来た上司の部長がいて、ムカついたので別の局の別のドラマで、何と倉本さん、「実名」でそのエピソードを入れたドラマ作っちゃったと。今なら大問題だよなあ。

これは笑いながら、呆れました。

でも、テレビマンは必読の書だと思う。


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(2019、4、7読了)

2019年4月11日 20:42 | コメント (0)

新・読書日記 2019_046

『イスラムが効く!』(中田考・内藤正典、ミシマ社:2019、3、5)

イスラム法学者でムスリム(イスラム教信者)である中田考先生と、イスラム地域研究者の内藤正典先生の対談。イスラムの専門家同士だが、内容は、素人が読んでもわかりやすいように、特に内藤先生が司会と言うかそのあたりを配慮して、中田先生の話を引き出してくれているような感じ。内藤先生が1956年生まれ、中田先生が1960年生まれで、内藤先生の方がちょっと先輩。

タイトルの「イスラムが効く!」だが、「イスラム」が「何に効く」のか?

目次を見てみると、イスラムは、「人生」「心の病」「高齢社会」「家族」に効くようだ。つまり「イスラム」というのは、「宗教」というより「ものの考え方」であるということかな。

われわれ現代日本人は当たり前のように「西洋資本主義社会」の中にどっぷりと浸かって仕事や生活をしているが、世界にはそういう形でない考え方の中で仕事をし(あるいは、せず)生活をしている人たちが、何十億人もいるという現実を、もっと知ることも必要だと。

イスラムは「神の法」のみが大切。ムスリムの人は、

「人が作った『人の法』なんて、どうせ破られるに決まっている」

と思っている、と。その意味では「性善説」ではないよね。「人間」に対するある種の「諦め」があるような。

そして、イスラムは本当の意味では「国家」を造れないと。現代世界は「民族主義に根差した国民国家」が行き詰まりを見せている。そこに「イスラムの考え方は効く」と。うーん、どうなんだろうなあ。でも、

「人と人のあいだに線を引く、そして優劣をつける、『うち』と『そと』を分ける。『うち』は優れていて『そと』は劣っている。この発想は民族主義や領域国民国家というものをつくりだした西欧の発想そのもの」

という内藤先生の意見には賛同します。


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(2019、4、6読了)

2019年4月11日 20:40 | コメント (0)

新・読書日記 2019_045

『団地と移民~課題最先端『空間』の闘い』(安田浩一、角川書店:2019、3、23)

人口が減少に転じた日本で、人口増加時代に出来た「団地」が、日本人の高齢化と共に居住人口が減り、そこに移民が住み着くというようなことが、タイトルから容易に想像できる。帯には、

「団地はこの国の"未来"である」

「そこは外国人、高齢者をネトウヨが襲う空間と化していた」

「外国人実習生や排外主義者(ネトウヨ)の問題を追い続ける著者の最前線ルポ」

と煽って来る。

著者自身が、子どもの頃は「団地」で暮らし育った。いわば団地は「故郷」でもある。高齢の母親と一緒に、かつて住んでいた団地を42年ぶりに訪ねるところから"物語"は始まる。

本書では第1章「都会の限界集落~孤独死と闘う」で現状を見、

第2章「コンクリートの箱~興亡をたどる」で「団地妻」以来の歴史をさかのぼり、

第3章「排外主義の最前線~ヘイトへ抵抗する」では、たくさん住み始めた中国人たちへの「ゼノフォビア(外国人嫌い)」の現状を報告。

第4章では海外へと飛ぶ。フランス・パリ。移民たちの郊外での現状。ゼノフォビアは日本だけの問題ではなかった。世界的な傾向・流行なのか?

そして第5章、日本に戻って、広島。映画「仁義なき戦い」のロケ地。中国残留孤児の問題。最後に第6章は「『日本人』の境界」。4月から始まった外国人人材拡大のための法律だが、「外国人人材」を、日本人はどのように考えて・感じて、どのように扱おうと・接しようとしているのか、その一例が示されている。

日本と世界と、町内と世界を同時に感じられる一冊だ。


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(2019、3、31読了)

2019年4月11日 20:37 | コメント (0)

新・読書日記 2019_044

『イントロの法則80's』(スージー鈴木、文藝春秋:2018、10、5)

スージー鈴木さんが「去年の秋」にこんな本を出していたなんて知らなかった。ツイッターで情報を得ました。

「80年代日本最強イントロ40」に顔を出しているのは、沢田研二の「TOKIO」から始まって寺尾聰「ルビーの指輪」、テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」、上田正樹「悲しい色やね」、松田聖子「青い珊瑚礁」、大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」、オフ・コース「Yes・No」などなど。まあ、ほとんどイントロから歌えるね。確かに最強だわ。

「売り上げ枚数」とか「ヒットチャート順位」などのデータも載っていて、

「あれ?あんなに流行ったのに、あんまり売れてないの?」

という曲が結構あったのが、印象的でした。


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(2019、3、20読了)

2019年4月11日 20:35 | コメント (0)

新・読書日記 2019_043

『大マスコミが絶対書けない事 この本読んだらええねん!』(辛坊治郎、光文社:2019、3、30)

辛坊さんが週刊誌『FLASH』に連載しているコラムをまとめたもの。どうも本のタイトルが長すぎて、どんどん、くだけた感じで、親しみやすく・・・品が下がって・・・ダイレクトな・・・。まあタイトルは、編集担当者が決めているんだと思いますが。このところ、長すぎないですか?タイトルが。

大体毎週、会社にある『FLASH』を読んでいるので、すでに読んだことがあるコラムが多いですが、まとめて読むと、また違った印象を持つこともありますね、毎週違うネタを少しずつ読むよりも。単行本の特長ですね。

内容は「なるほどなるほど」と納得したり「そうだったのか!」と思うところもあるが、中には「それは違うんじゃないの?肝心なところを無視しているのでは?」というところもあって、玉石混交の印象。

「違うのでは?」を思ったところは「消費税の負担」。

全体の1割強の年収800万円以上の人が全体の6割の税金を払っている、というのは事実であり真実でしょう。しかし、「だから所得の低い人は、税金をあまり払っていない」というのは、マクロ的には間違いだと思います。「収入に対する税負担率」で見ないと、「個別の税金負担感」は説明できません。「たくさん税金を払った人の意見を通すべきだ」というならば、「金で何もかも買える、金持ちがエライ」ということになります。国の運営は、それではダメです。「ノーブリス・オブリージュ」が必要だと思いました。


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(2019、4、8読了)

2019年4月11日 19:46 | コメント (0)

新・ことば事情

7135「店名に『さん』付け」

「最近、地図に載っているような店の名前に『さん』が付いていることがある。付いている店と付いていない店は、どういう違いがあるのか?」

ということが、ツイッターに載っていました。

「地図に出て来る店の名前や施設の名前に『さん』なんか付けるか?見たことないぞ」

と、私は思いました。そこで実際に、

「新聞のチラシ」

で調べてみることにしました。普段はすぐに捨てている新聞のチラシに「地図」が付いている物を集めてチェックしました。地図の付いていたチラシ、

「76枚」

のうち、

*「『さん』が付いていないもの」=69(多いもの順)

不動産店13

学習塾6

大型電気店、大規模洋品店 各5

リフォーム店4

整骨院、質店、パチスロ店、スーパー 各3

葬儀会館、ハンバーガー店、音楽教室、養護老人ホーム、求人広告、スポーツクラブ、

クリーニング店、中古車店 各2

メガネ店、クリニック、霊園、ペット店、ファミレス、レンタルDVD店、政治広報、

ビューティーサロン 各1

*「『さん』が付いているもの」 = 6

パチスロ店1、紳士服店1、ガソリンスタンド1、タイヤ店2、DIY店1

201904101.jpg

201904102.jpg

でした。あるは「さん」付け!

「イエローハットさん」「auショップさん」「アウトレットパーク大阪鶴見さん」「ミニストップさん」「ファミリーマートさん」「出光さん」「サイゼリアさん」「王子コンテナー大阪工場さん」

と、みな「さん」が付いています。その地図の中で「さん」が付いていないのは、

「山田池公園」と「地名」

ぐらいでしょうか。

そして、さらにチラシを睨み続けて1週間が経った4月3日、ついに、次の段階へと自体は進んだのです!

何が起こったのか?

「『様』付け」

の地図を発見したのです!

201904103.jpg

「ステーキガスト様」「ハロースポーツ様」「トヨタカローラ様」「ミニストップ様」

「クレイン京都乗馬クラブ様」

など。「様」が付いていないのは、

「摂南大学薬学部」「八幡洞ケ峠」「美津山交番」「松井山手駅」「長尾駅」「欽明公園」

など、地名や公共の施設・学校などですえん。

「企業名に『さん』を付ける傾向」

は、関西では昔から多かったようですが、その影響もあるんですかねえ?

とにかく、驚きました。

(2019、4、9)

2019年4月10日 19:14

新・ことば事情

7134「バンか?とワンボックスカーか?」

報道の若い記者に質問を受けました。

「引っ越しシーズンなのですが、引っ越しで荷物を運ぶ車は『バン』でしょうか?『ワンボックスカー』でしょうか?」

私は、こんな感じで答えました。

『「車の呼び名の分類」には、いくつか基準がありますね。

(1)形態=セダン、クーペ、オープンカー、ワンボックスカー、

(2)用途(使用目的)=パトロールカー(パトカー)、消防車、タクシー、宣伝カー、街宣車(街頭宣伝車)、スポーツカー、キャンピングカー、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル=スポーツ用多目的車)、RV(レクレーショナル・ビークル=余暇を楽しむための車。アメリカではキャンピングカーのこと。ステーションワゴン、ワンボックスカー、ミニバン、オフロードの全てをひっくるめた総称)、バン

(3)所属=トヨタ車、日産車、ホンダ車、日本車、ドイツ車、アメ車など

(4)動力源など=ハイブリッドカー、ガソリン車、ディーゼル車、4WDなど

「バン」は「キャラバン」の省略形で、基本的に「商用車」。

その「目的」から分けられた名称です。

一方「ワンボックスカー」は、車の「形態」から採られた名前。「ボックス」=「箱・空間」を意味し、その車にいくつの箱や空間があるか、車の形によって決まります。

★「ワンボックス」=四角いカタチの箱型で、エンジンはフロントシート下に配置されボンネットはない。乗員空間と荷物室空間が1つの空間にあるスタイルの車。軽自動車、普通車、商用車を問わない。代表車種は、トヨタ「ハイエース」、日産「キャラバン」。ワゴン車またはバン。

★「ツーボックス」=ボンネット付きエンジンはフロントボンネット内に配置。乗員空間と荷物室空間が共通の車。ハッチバック、ステーションワゴン、ミニバン(=1.5ボックス)、SUV(=車高が高くタイヤが大きく最低地上高がセダンタイプなどより高い。乗車人数は問わず、レジャー目的で悪路走破性に優れているのが特長)。軽自動車・普通自動車・ワゴン・バンは問わない。代表車種はトヨタ「カローラフィールダー」やスバル「レヴォーグ」、ホンダ「フィット」やトヨタ「ヴィッツ」のコンパクトカー、スズキ「ワゴンR」や「アルト」、ダイハツ「ムーヴ」など軽自動車。

★「スリーボックス」=ボンネット(エンジンルーム)・乗員空間・荷物空間それぞれ隔離されている車。セダン、サルーン。代表車種はトヨタ「クラウン」や日産「スカイライン」。

つまり「バン」は、普通は、

「ボンネットなし・乗員空間・荷物室空間が一体」

なので、

「ワンボクスカーの一種」

ですが、「引っ越し業者」が「貨物運搬」という業務目的で使うのであれば「商用」なので、今回は、

「バン」

と呼んでいいのではないでしょうか。』

更にいろいろ調べてみると、「バン」の中でもトヨタ「ハイエースバン」は「ワンボックス」、トヨタ「サクシード」や日産「AD」は「ツーボックス」の「ライトバン」。

また、「後部座席が長い場合」には「ワゴン」、

「荷室の長さが長い場合」には「バン」

となり、コンパクトな「バン」は「後部座席が狭くなる傾向」にあります。

そして「2つの空間がある」(ツーボックス)が「フロントのボンネットが短いタイプ」のワゴン車は一般的には、

「ミニバン」

と呼ばれています(3列シートのもの)。「1、5ボックス」と呼ぶこともあるそうです。

国産車では、1982年に日産「プレーリー」が初めて発売され、当初はまだ「ミニバン」という言葉ななかったため、

「6人から8人乗れるステーションワゴン」

と呼ばれたそうです。代表車種はマツダ「MPV」や、トヨタ「エスティマ」「アルファード&ヴェルファイア」「ノア&ヴォクシー」、日産「エルグランド」「セレナ」、ホンダ「オデッセイ」「ステップワゴン」。

トヨタ「アルファード」や日産「エルグランド」が、

「そんなに『ミニ』ではない」

のに「ミニバン」と呼ばれている理由は、

「アメリカの『フルサイズ・バン』と比較して『小さい』ワゴンタイプだから」

のようです。

車に関しては、ほとんど、このサイトから情報を頂きました。ありがとうございます。

https://www.lineup-car.com/blog/5066.html

(2019、4、10)

2019年4月10日 18:32 | コメント (0)

新・ことば事情

7133「現在の時刻は、午前9時半ごろです」

お昼のニュースを見ていたら、女性記者が、

「現在の時刻は、午前9時半ごろです」

と言っているのが耳に入り、違和感を覚えました。

「現在の時刻」

と言っているのに、「9時半ごろ」と、

「時刻に『ごろ』が付いている」

なんで「アバウト」なんでしょうか?普通は、

「現在の時刻は、午前9時32分です」

などと言うのではないでしょうか?もう少しアバウトに言うにしても、

「現在の時刻は、午前9時半すぎです」

と言うでしょう。「すぎ」はOKです。でもこの「ごろ」はダメ。

時計をちゃんと見たのか?

「自分の『腹時計』によると、現在午前9時半ごろです」

ならわかりますが、リポートするときには「腹時計」を使わず、ちゃんとした時計を見てくれ!と思います。

こんな伝え方をされたら、

「今起こっている事実を、この記者はちゃんと把握してリポートしているのか?」

ということにも不信感が募ります。

「ことば」「表現」は大切ですよね、この仕事は。

(2019、4、9)

2019年4月10日 18:30 | コメント (0)

新・ことば事情

7132「4度目か?4回目か?」

4月4日午前6時ごろ、日産のカルロス・ゴーン前・会長が再逮捕されました。

これで逮捕は、

「4度目」

二なります。この「回数」(度数)について、「ミヤネ屋」では、

「4度目」

と表記しましたが、同じ日の夕方の日本テレビ「every.」は、

「4回目」

と表記していました。この日の夜のTBSニュースでも、

「4回目」

フジテレビは

「4度目」

でした。

また、この日の夕刊各紙は、

(読売)4度目

(朝日)4度目

(産経)4度目

(毎日)4回目

(日経)4回目

でした。

一般的には「回」も「度」も「同じ」でどちらを使ってもよさそうですが、一部に、

*「回」=ある期間に繰り返し行われることが定着しているもの

*「度」=必ず定期的にあるとは限らないもの

という使い分けがあるという説を『数え方の辞典』の著者・飯田朝子中央大学教授が主張されています。

これまでにもこの問題については書いてきましたが、

「横綱・白鵬の優勝回数」

について書くことが多い気がします。

*「平成ことば事情5070『度』か『回』か」=2013年4月24日

香川選手所属「マンチェスター・ユナイテッド」20度目の優勝

*「平成ことば事情5562『度』か『回』か2」=2014年9月29日

横綱・白鵬31度目の優勝~このときは「毎日」だけ「回」であとの4紙は「度」

*「平成ことば事情7037『度』か『回』か3」=2019年1月8日

北朝鮮・金正恩委員長4度目の訪中~「産経」と「日経」が「度」、「読売」「朝日」「毎日」は「回」。

でした。

この件に関しては、2014年2月新聞用語懇会放送分科会で質問しました。

『横綱・白鵬の優勝回数を、NHKは「28回」と「回」を使っていましたが、各社「回」と「度」の使い分けに、基準はあるのでしょうか?(必ず回って来るものの回数は「回」、「優勝」のように必ずできるとは限らないものについては「度」を使うと聞いたことがあるのですが)

(NHK)決まりはない。優勝は「回」が多い。「度」は回数が少ない場合(1~4度ぐらい)に使うのではないか。「度」のほうが使用範囲が狭い。「度」は主観が入り、「回」は客観的な気がする。

(読売新聞)『数え方の辞典』の著者・中央大学の飯田朝子さんが「『回』は繰り返しが期待されるので、『3回目の結婚』などの使い方はよくない」と書いているが、新聞では使い分けはしていない。「仏の顔も三度まで」「二度あることは三度ある」など、慣用句には「度」がよく使われている気がする。』

という意見が出ました。

(2019、4、4)

2019年4月10日 18:29 | コメント (0)

新・ことば事情

7131「お飴さん」

先日、京都の三条通を歩いていたら、こんな看板を見かけました。

「お飴さん」

20190409.jpg

普通、大阪の(関西の)おばちゃんなんかは、というか「子どもの言葉」として、

「飴ちゃん」

「ちゃん付け」で呼ぶことは、おそらく全国的に知られていると思います。また、「ちゃん」ではなく「さん付け」で、

「飴さん」

ということがあることも知っていました。しかし、さらにそれに「お」を付けて、

「お飴さん」

と言うことがあることは、知りませんでした。

でも、よく考えたら、食べ物に関して関西人は、

「お芋さん」「お豆さん」

など「お〇〇さん」の形は使っていますから、これが「飴」使われても、全然、不思議ではないということですねえ。

(2019、4、8)

2019年4月10日 09:21 | コメント (0)

新・ことば事情

7130「マトリョーシカのような」

きのう、電車の中で座っていたら、前に立っていた女子大学生らしき2人の会話が自然と耳に入って来ました。聞くと話に聞いていたら、こんな言葉が。

「もう、門限とかも早くて、マトリョーシカぐらいの箱入り娘やわあ」

マトリョーシカぐらいの箱入り娘!

いきなり「マトリョーシカ」が出てきてビックリしました。

「マトリョーシカ」というのは、ロシアの民芸品で、大きな木製の人形の中に、少し小さな人形が入っていて、その中にさらに小さな人形が...という「入れ子状態」のあれですね。

つまり、彼女は何を言いたかったかというと、

「防護策として何重もの箱の奥の奥に閉じ込められて大事にされている娘」

ということなんでしょうね。

それだと「安全」だけど、ふだんは「不便」ということなのかな。遊びにも行けなくて。

おもしろい表現ですね。

(2019、4、8)

2019年4月 9日 21:11 | コメント (0)

新・ことば事情

7129「電気工事会社のアクセント」

4月9日午後8時45分からのNHK関西ローカルニュースで、大阪市建設局の汚職事件で業者を脱税で起訴したというニュースを読んでいたベテラン男性アナウンサーが、

「電気工事会社」

を、

「デ\ンキ・コ/ージガ\イシャ」

というアクセントで読んだので、「なぬ?」と思いました。

これは2語に分けずに「コンパウンド」して、

「デ/ンキコージガ\イシャ」

しかないと思うのですが、いかがでしょうか?

『NHK日本語発音アクセント新辞典』を引いても、「電気工」は載っていましたが、「電気工事会社」は載っていません。「電気工事会社」は複合語で、

「電気工事」+「会社」

だと思います。ですから、

「デンキコージ」+「カイシャ」=「デ/ンキコージガ\イシャ」

となると思うのですね。でもこのアナウンサーは、

「電気」+「工事会社」

という分け方をしてしまって、「2語」に区切ったままにしてしまった。「コンパウンド」すればよかぁったのに・・・と思いました。残念。

(2019、4、9)

2019年4月 9日 21:09 | コメント (0)

新・ことば事情

7128「破天荒~内田也哉子さんの送る言葉」

4月3日に東京・青山葬儀所で、先月17日に亡くなった内田裕也さんのお別れの会、

「内田裕也 Rock'n Roll葬」

が行われました。その際に、愛娘で喪主の内田也哉子さんが贈ったお別れの言葉が、哲学的で思慮深く感動的でした。そのことは「平成ことば事情7125安らかに眠るな」で書きました。以下、也哉子さんの「送る言葉」全文です。

*****************************

「本日は大変お忙しいところ、父、内田裕也のロックンロール葬にご参列いただきまして、誠にありがとうございます。親族代表として、ご挨拶をさせて頂きます。

私は正直、父をあまりよく知りません。「わかりえない」という言葉の方が正確かもしれません。けれどそれは、ここまで共に過ごした時間の合計が数週間にも満たないからというだけではなく、生前、母が口にしたように「こんなにわかりにくくて、こんなにわかりやすい人はいない。世の中の矛盾をすべて表しているのが内田裕也」ということが根本にあるように思えます。私の知りうる裕也は、いつ噴火をするかわからない火山であり、それと同時に、溶岩の狭間で物ともせずに咲いた野花のように、清々しく無垢な存在でもありました。

率直に言えば、父が息を引き取り、冷たくなり、棺に入れられ、熱い炎で焼かれ、ひからびた骨と化してもなお、私の心は、涙でにじむことさえ戸惑っていました。きっと、実感のない父と娘の物語が、はじまりにも気付かないうちに幕を閉じたからでしょう。

けれども、きょう、この瞬間、目の前に広がる光景は、私にとっては単なるセレモニーではありません。裕也を見届けようと集まられたお一人、お一人が持つ、父との交感の真実が、目に見えぬ巨大な気配と化し、この会場を埋め尽くし、ほとばしっています。父親という概念には、到底、おさまりきらなかった内田裕也という人間が叫び、交わり、噛みつき、歓喜し、転び、沈黙し、また転がり続けた震動を、皆さんは確かに感じ取っていた。

「これ以上、お前は何が知りたいんだ」

きっと、父もそう言うでしょう...。

そして、自問します。私が唯一、父から教わったことは、何だったのか?それは、たぶん、大袈裟に言えば、生きとし生けるものへの畏敬の念かもしれません。彼は破天荒で、時に手に負えない人だったけど、ズルイ奴ではなかったこと。地位も名誉もないけれど、どんな嵐の中でも駆けつけてくれる友だけはいる。

「これ以上、生きる上で何を望むんだ」

そう、聞こえてきます。

母は晩年、自分は妻として名ばかりで、夫に何もしてこなかった、と申し訳なさそうに呟くことがありました。「こんな自分に捕まっちゃったばかりに...」と遠い目をして言うのです。そして、半世紀近い婚姻関係の中、折り折りに入れ替わる父の恋人たちに、あらゆる形で感謝をしてきました。

私はそんな綺麗事を言う母が嫌いでしたが、彼女はとんでもなく本気でした。まるで、はなから夫は自分のもの、という概念がなかったかのように。勿論、人は生まれもって誰のものでもなく個人です。歴とした世間の道理は承知していても、何かの縁で出会い、メオトの取り決めを交わしただけで、互いの一切合切の責任を取り合うというのも、どこか腑に落ちません。

けれども、真実は、母がその在り方を自由意志で選んだのです。そして、父もひとりの女性にとらわれず心身共に自由な独立を選んだのです。

二人を取り巻く周囲に、これまで多大な迷惑をかけたことを謝罪しつつ、今更ですが、このある種のカオスを私は受け入れることにしました。まるで蜃気楼のように、でも確かに存在した二人。私という二人の証がここに立ち、また二人の遺伝子は次の時代へと流転していく...。この自然の摂理に包まれたカオスも、なかなか面白いものです!

79年という永い間、父がほんとうにお世話になりました。最後は、彼らしく送りたいと思います。

 Fuckin' Yuya Uchida,

 don't rest in peace 

 just Rock'n Roll!!!

2019年4月3日 喪主 内田也哉子』

お母さんの故・樹木希林さんにそっくりの声と口調、そして容貌も。まさに、

「DNA万歳!」

と言いたくなるような感じで也哉子さんが読まれた"送る言葉"の中に、

「彼は破天荒で、時に手に負えない人だったけど、ズルイ奴ではなかったこと。」

というふうに、

「破天荒」

という言葉が含まれていました。

「平成ことば事情7115破天荒」で書いたように、内田裕也さんが亡くなった際(3月)に「ミヤネ屋」で内田さんのことを" "付きで、

"破天荒"

と表現したのですが、娘の也哉子さんも「破天荒」と感じていたのなら、

「もう、新しい意味での『破天荒』も市民権を得ている」

と考えていいのかもしれませんね。

(2019、4、9)

2019年4月 9日 20:47 | コメント (0)

新・ことば事情

7127「熱が入ると・・・」

塚田一郎国交相副大臣(参議院議員・新潟、55歳)が山口・下関の講演で、麻生副総理の地元や安倍総理の地元に「忖度」して予算を付けたと、いわゆる「リップサービス」で言ってしまったことについて、野党は「利益誘導だ!」と「副大臣罷免を」と声を挙げ、与党内からも「極めて軽率」という声が聞こえています。

当の本人は質問に答えて、

「たくさんの人の前で、つい熱が入ってしまって、事実とは違うことを言ってしまって...」

との弁明をしています。

「嘘をついたということですか?」

との質問にも、

「嘘をつきました」

とは答えず、

「(言っちゃいけない)本当のことを言ってしまいました」

とも言わず、

「事実とは違うことを言ってしまった」

と答えています。

"アホらしやの鐘が鳴る"ですが、どこが、どう「アホらしい」か、おかしいのか。

私の持った疑問や意見は、次のとおりです。

(1)「事実では違うこと」は、一般社会では「嘘」と呼ぶ。

(2)大勢の人のいる前では「事実とは違うことを言ってしまう」人は、政治家には向いていない。

(3)そういう「重責を担う政治家には向いていない」ことが露呈した政治家は、自らその役から降りるべきである。

(4)本人がその役を降りる判断すらできないのならば、任命責任者(首相)は速やかにその役を解き、より適任の別の人をその役職に充てるべきである。

(5)その状態を放置する(決断しない・できない)のであるならば、任命責任者の任命権を返上するべきである。

これって、当たり前のことだと思うのですが、いかがでしょうか?

国を代表する政治家(副大臣)が、嘘を言っても、「ごめん」と言ったら許されるのですか?

明らかにおかしいですよね。

(追記)

これを書いた翌日、塚田国交副大臣は「辞表」を提出、辞任しました。

記者から、

「辞表を出したことも、忖度ですか?」

と聞かれて「え?」と一度聞き返した後に、

「違います」

と答えていました。

(2019、4、9)

(2019、4、4)

2019年4月 9日 20:43 | コメント (0)

新・ことば事情

7126「ド家元」

倉本聰さんへのインタビューをまとめた『ドラマへの遺言』(新潮新書、聞き手=碓井広義)の207~208ページで、倉本さんが、自宅に天皇皇后両陛下がいらっしゃったときのことを話しています。すごいな、どうも。家に両陛下が来ちゃったの?

その際、両陛下が倉本さんの家に上がる時に、ちゃんと膝をついて自分の靴を揃えて向きを変えられた、と。さらに出ていかれる時にも、土間に膝をついて吐いていたスリッパの向きを変えていらしたと。倉本さんはそれを見て、衝撃を受けたそうです。そして、こう思ったと。

「天皇家っていうのはお作法の家元なんだってことが分かったんです。家元の中の家元、ド家元なんですね(笑い)」

すごいこと言っちゃってますね、倉本さんは。ここで出て来た、

「ド家元」

という言葉、普通は使いません。使いませんが、あえて違和感を持たせる"セリフ"を、倉本さんは使ったんでしょうね。

「ど」「ド」の付く言葉、私はこれまでにも書いています。

平成ことば事情0486「どキレイ」、2946「ド平日」、4500「ドハマリ中」、4660「ドハンサム」、4827「どがいしょなし」、5444「ど生鮮」、5476「ど真ん前」、5481「ド真面目」、6053「どびつこう」、6062「どはやい」、6169「どストライク」、6182「どびつこう」、7063「ど真ん中」等もお読みください。

あ、「どびつこう」が2つあるな。

(2019、4、8)

2019年4月 9日 20:37 | コメント (0)

新・ことば事情

7125「安らかに眠るな」

4月3日に行われた故・内田裕也さんのお別れの会。

1983年公開の映画「十階のモスキート」を監督した崔洋一さん(69)は弔辞で、最後に、

「安らかに眠るな」

と言いました。普通は、

「安らかにお眠りください」

と言うところなのですが反骨のロックンローラーの内田さんには、それはふさわしくないと考えられたのでしょう。また、

「なんで死んじゃうんだよぉ!」

という思いも込められていると思いました。

驚いたのは、喪主の内田也哉子さんも、弔辞・お礼の言葉の最後に、亡き父に対して、英語でこう言ったのです。

「Fuck'in Yuya Uchida

Don't Rest In Peace

Just Rock'n Roll

この中の、

「Don't Rest In Peace」

は、日本語にすれば、崔監督が言ったのと全く同じ、

「安らかに眠るな」

です。この一致に驚くとともに、「内田裕也」という人は、たしかにそういう人だったのだな、ということがよくわかる感銘深いコメントでした。

内田也哉子さんの弔辞は、本当に文学的で哲学的な思索に富んだもので、とっても良かったです。声も容貌もお母さんの故・樹木希林さんにそっくりだし。DNAは完全に受け継がれているのだなと思いました。

そうそう、お母さんの本、100万部を超えるベストセラーになっているそうですよ。女性の読者が多いと。私も読みましたが。(2019読書日記016『一切なりゆき~樹木希林のことば~』樹木希林、文春新書)

「Rest In Peace」は、頭文字を取って、

「R.I.P.」

と、欧米ではよく使われるそうです。私は、以前この「R.I.P.」の意味が分からずに調べた際に、英語では「Rest In Peace」ですが、元々のラテン語では、

「Requiescat In Pace」

だと書いてあるのを見て、

「あ、それなら知ってる!」

と思いました。学生時代に「コバケン」こと小林研一郎先生の指揮で、東京交響楽団の演奏で歌った、ベルリオーズ作曲の、

『ファウストの劫罰(ごうばつ)』

の歌詞中に、ラテン語で「Requiem In Pace」が出て来たのを覚えていたからです。

「ア―メンのフーガ」

の直前です。あれか!と。

そのあたりのことは以前(7年前!)「平成ことば事情4878R.I.P.」に書きましたので、あわせてお読みください。

(2019、4、4)

2019年4月 4日 16:00 | コメント (0)

新・ことば事情

7124「『古典』のアクセント」

4月2日、新元号「令和」が「万葉集」から採られたというニュースを、NHK夜9時のニュースで伝えていました。その中で、桑子真帆アナウンサーが、

「古典」

という言葉を、「頭高アクセント」で、

「コ\テン」

と、「4回」発音しました。

しかし『NHK日本語発音アクセント新辞典』には、「平板アクセント」の、

「コ/テン」

しか載っていませんでした。

彼女が間違って覚えてるのだな、と思ったのです。

しかし!

翌日、今度はテレビ朝日の羽鳥アナウンサーがやっている朝のワイドショーに出ていた、岡本梨奈さんというネット予備校の人気講師という方が、

「コ\テン」

という「頭高アクセント」で話していたのです。それを聞いて、もしかしたら、この「頭高アクセント」の「コ\テン」は、

「専門家アクセント」

なのではないかな?と思いました。

(2019、4、3)

2019年4月 4日 15:51 | コメント (0)

新・読書日記 2019_042

『宇宙兄弟35』(小山宙哉、講談社 2019、3、22)

シャロン月面天文台、ついに完成!ムッタの

「私たちが来なければ、ここはただの暗闇だった

私たちが来なければ、ここは動かない景色だった」

このセリフには感動!

そしてロシアも、ムッタたちの救出作戦に参加!

そのメンバーに・・・というのは次の巻だな。

これで大団円に持っていく、ラストが見えてきたぞ!


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(2019、3、31読了)

2019年4月 3日 21:21 | コメント (0)

新・読書日記 2019_041

『三好達治詩集』(三好達治・河盛好蔵編、新潮文庫:1951、2、10第1刷・2016、2、10第62刷)

すごいなあ、ロングセラーだなあ。大阪・天満橋のジュンク堂では見つからず、枚方市のTサイト・TSUTAYA書店で、中島みゆきの詩集と並んでいるのを発見、購入した。

第62刷!!!

去年の9月、三好達治の詩に多田武彦さんが曲を付けた「わがふるき日のうた」を歌って、すっかり三好達治ファンになってしまった。やはり「七五調」のリズムが良いんだろうな。

今回、発見した新しい詩は、原爆・水爆実験を題材としたと思われる詩「灰が降る」。

「灰が降る灰が降る 

 成層圏から灰が降る」

で始まる詩は、

「死の総計の灰をまく

 とんだ花咲爺さんだ」

と続き、

「それから六千五百年

地球はぐっすり寝るだらう

 それから六万五千年

それでも地球は寝てるだらう」

そして、

「お月様が

囁いた

昔々あの星に

悧巧な猿が住んでゐた」

で結ばれる。珍しくかなり直接的な詩であるが、この詩が書かれて半世紀以上、今こそ、日本国民は、この詩を読んでかみしめるべきだと思う。


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(2019、3、29読了)

2019年4月 3日 21:19 | コメント (0)

新・読書日記 2019_040

『手帳と日本人~私たちはいつから予定を管理してきたか』(舘神龍彦、NHK出版新書:2018、12、10)

サブタイトルにあるように「手帳」は「時間を管理する道具」。そんな風には考えずに使っているけど、言われてみれば確かにそうだ。

日本に「手帳」を持ち込んだのは福沢諭吉らしい。へー、知らなかった。最初は「日記」のようなもので、それが「手帳」に変わっていった。言われてみれば、これも合点がいく気がする。そして日本では「軍隊の手帳」の時代があり、それが、企業戦士が戦った高度経済成長の時代には「企業への忠誠心」を養うための道具として、会社から社員にタダで配られた。軍隊への帰属心を高めるのと同じやり方。

それを崩したのがバブル期のファィロファクスのような差し替え式・バインダー式の一冊何万円もする高級手帳。数年間、私も使ってましたね、その頃。手帳が、それまでの日本社会の構造を崩したのか、それまでの日本の社会が崩れたから、そういった手帳が受け入れられたのか?因果関係はわからない。

その後、「紙の手帳」ではない、スケジュール管理の「電子化」が進んだのだが、今なお、「紙の手帳」は売れ続けているらしい。それどころか、売り上げも伸びているという。

日本人にとって「手帳」とは何なのか?また、その裏にある時代の流れは?など、思いのほか面白い考察を導き出してくれる一冊だ。


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(2019、3、22読了)

2019年4月 3日 21:18 | コメント (0)

新・ことば事情

7123「意気込みを話しました」

4月1日、NHK夜7時ニュースを会社で見ていたら、水泳の日本選手権に向けて、選手にインタビューをしていました。そのVTRの前に、アナウンサーが、こういうふうに言いました。

「選手が意気込みを話しました」

これに違和感が。

「意気込みを」

と来た場合のコロケーション(言葉の結びつき)は、

「語りました」

ではないでしょうか?

「話しました」

は、すごく居心地の悪さ、据わりの悪さを感じます。

たとえ原稿にそう書かれていても、

「意気込みを語りました」

になぜ直さないのだろうか?と、頭の中に、

「???」

が、たくさん浮かんだのでした。

(2019、4、3)

2019年4月 3日 21:13 | コメント (0)

新・ことば事情

7122「すぎ現在」

3月29日のテレビ朝日のお昼のニュースで、埼玉・川越市の火事を伝えていました。

その際に女性アナウンサーが、

「午前11時すぎ現在」

と言っていたのが気になりました。

最近「現在」の代わりに「時点」を使うケースが増えているのも気になりますが、今回はちゃんと「現在」を使っていたのですが、違和感があったのは、

「すぎ」

です。「現在」を使うのであれば、その前の「時刻」は「アバウト」なものである「すぎ」や「ごろ」ではなく、

「午前11時現在」

であるとか、

「午前11時15分現在」

のように言うべきだと、思ったのでした。

(2019、4、3)

2019年4月 3日 21:12 | コメント (0)

新・ことば事情

7121「『107日ぶり』の読み方」

3月6日、日産のカルロス・ゴーン前会長が保釈されました。逮捕から、

「107日ぶり」

ということでしたが、この「107日」の読み方は、

  1. 「ヒャクナナニチ」

  2. 「ヒャクシチニチ」

  3. 「ヒャクナノカ」

のどれでしょうか?と他局のアナウンサーから質問を受けました。

「100+〇日ぶり」

の読み方ですね。いろいろ、考えてみました。

「数字の読み方は、和語か?漢語か?」

ということですね。

*「漢語読み」=「数字」プラス「ニチ」

*「和語読み」=「百の位」プラス「和語の『かよみ』」

この「かよみ」と言うのは、

「フツカ」「ミッカ」「ヨッカ」「イツカ」「ムイカ」「ナノカ」「ヨーカ」「ココノカ」「トーカ」

と「日」を「カ」と読む読み方です。

「暦(こよみ)」

も、語源は「かよみ」で、それが訛って「こよみ」になったんですよね。

日本語の数の中では「忌み言葉」で、「4」を「シ(=死)」と読むことを避けて、

「よっ(つ)・よん」

と読むことがありますね。つまり「4日」は「シニチ」ではなく、

「ヨッカ」「ヨンニチ」

と読みます。こういうものが交じっているのも、問題を難しくしています。

「かよみ」=「こよみ・暦の範囲内(31日まで)」では、「和語のかよみ」が強いが、その範囲を超えると、「漢語プラス『ニチ』」が強くなる傾向があります。

「14日」=ジューヨッカ

「24日」=ニジューヨッカ

ですが、これが「34日」になると、「サンジューヨッカ」とも読みますが、

「サンジューヨンニチ」

が多くなるのではないか?「44日」ならば、まず間違いなく、

「ヨンジューヨンニチ」

でしょう。

ただし「日付」と「期間」でも違ってきます。

「あと44日」

という場合は、

「あとヨンジューヨンニチ」

でしょうけれども、

「44日間」

ならば、

「ヨンジューヨッカカン」

と言う人の方が多いのではないか?

つまり「〇〇日」の後に「間(カン)」や「ぶり」が付くと「かよみ」をする可能性が高くなる。「後ろに付くもの」(間・ぶり)との結びつきが、「前に付く数字」とのつながりよりも、強く感じられるからではないではないか。

だから、後ろに「日間」「ぶり」の付く「107日間」「107日ぶり」の「7日」も(「ナナニチ」とも、もちろん読みますが)、「ナノカ」と読みたくなるのでしょうね。

昔の「和語」の日にちの読み方ででは、「11日以上」の場合は、例えば、

「11日」=トー・アマリ・ヒトヒ

「12日」=トー・アマリ・フツカ

「13日」=トー・アマリ・ミッカ

というように区切っていました。その名残りも、あるかもしれません。

その証拠に「警察の電話番号」は「ヒャクジューばん」ではなく、

「ヒャクトーばん」

ですよね「10番」を「トーばん」と読みます。

さて、そしてきょう(4月3日)は「ミヤネ屋」のナレーターの藤田さんから、

「『20日ぶり』の読み方は『ハツカぶり』でしょうか?それとも『ニジューニチぶり』でしょうか?」

と質問を受けました。私は、

「『ハツカぶり』でしょう」

と答えたのですが、考えてみると、「〇〇日ぶり」の読み方は、

「1日ぶり」=イチニチぶり

「2日ぶり」=フツカぶり

「3日ぶり」=ミッカぶり

「4日ぶり」=ヨッカぶり

「5日ぶり」=イツカぶり

「6日ぶり」=ムイカぶり

「7日ぶり」=ナノカぶり

「8日ぶり」=ヨーカぶり

「9日ぶり」=ココノカぶり

「10日ぶり」=トーカぶり

とここまでは「1日ぶり」以外は、全部、

「和語の日にちの数え方(かよみ)」

ですね。そして「11日ぶり」からは「漢語読み」で、

「ジューイチニチぶり」「ジューニニチぶり」・・・「ジュークニぶり」

まで行って、「20日ぶり」は、

「ハツカぶり」

と、また「和語の日にちの数え方」に戻り、「21日ぶり」からは「ニジューイチニチぶり」・・・と「漢語読み」になりますね。

そして、またもとに戻って、「107日ぶり」の読み方ですが、結論から言うと、

「ヒャクナノカぶり」「ヒャクナナニチぶり」

の、

「どちらも可」

としか、言いようがないよなあ。

(2019、4、3)

2019年4月 3日 21:09 | コメント (0)

新・ことば事情

7120「進級生」

3月も残すところわずか。4月からは新学期ですね。

電車通学で定期券を買い換えなくてはならない学生さんもいらっしゃるでしょう。

つい先日、京阪電車の駅で、こんな張り紙を目にしました。

なぜ写真を撮ったかというと、この中の赤字で書かれた、

「進級生」

という文字に目が留まったからです。聞き慣れない・見慣れない言葉です。

20190403.jpg

グーグル検索してみたら(3月25日)

「進級生」=1万2100件

と、比較的少ないですね。トップに出て来たのが、

「三菱鉛筆 スーパーマリオ(進級生向け) 鉛筆3本入り 2B」

というもの。その他は「大阪調理製菓専門学校」の、

「新学期スタート~毎日実習~進級生編」

というものや、「鳥取大学医学部」の、

「平成28年3月31日開催 進級生オリエンテーションについて」

というものでした。新しい言葉なのか?学校関係では昔から使われているのか?

「落第生」

なら知っているんだけどな。こちらは、

「落第生」=6万0700件

でした。

えーっと、皆さん、進級おめでとう!!

(2019、3、25)

2019年4月 3日 20:15 | コメント (0)

新・読書日記 2019_039

『自分からの人生~加藤登紀子のひらり一言』(加藤登紀子、大和書房:2019、3、10)

きょう(3月28日)森昌子さんの引退会見でも名前の出て来た加藤登紀子さん。一時期、「ミヤネ屋」のコメンテーターをしていただいたこともあった。

本の体裁は、見開き2ページで1つのコラムという大変読みやすい形。どこからでも読める。手軽。文字も大きいので、老眼でも大丈夫。「2019読書日記016」で読んだ、樹木希林さんのお言葉集『一切なりゆき』(文春新書)と同じ体裁だ。最近、有名人のこういった本が流行っているのかも。

これを見て「そうか!」と気付いた。これは、

「教訓カレンダー」

と同じなんだ。

簡単な教訓めいた一言があって、毎日サラっと読んでいくような。

これ、本当に「日めくりカレンダー」にしたらいいんじゃないのかな。きっと売れるよ。


star3

(2019、3、18読了)

2019年4月 1日 13:11 | コメント (0)

新・読書日記 2019_038

『南三陸日記』(三浦英之、集英社文庫:2019、2、25)

著者は朝日新聞記者。東日本大震災から1年間、南三陸駐在として、大震災直後の南三陸の街と人に寄り添い、記事を書いた。それを集めた一冊。

東日本大震災から8年が経った。記憶は風化しつつある。しかし、まだ何も癒されてはいないのだと、改めてあの日を思い起こす一冊である。でも確かに歳月は流れ、人は生きて行かなくてはならない。

表紙の写真の、小学校の校庭にランドセルを背負ってたたずむ、とってもかわいらしい女の子。モデルさんかな?と思ったが、実はあの東日本大震災の後に生まれた女の子だ。しかも、父は3月11日に婚姻届を役所に出しに行って津波にのまれて亡くなった。彼女はその4か月後の2011年7月に、著者が立ち会う形で生まれたという。月日の流れが、確実に形になっているのだと、目に見えて思わざるを得ない。

見開きのモノクロの写真も、ほとんどが、著者が撮影したもの。

くじけずに、この本をきっかけに力強く生きてほしい。

私たちも東日本大震災を忘れてはいけない。


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(2019、3、18読了)

2019年4月 1日 13:09 | コメント (0)