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『道浦TIME』

新・読書日記 2019_037

『定年ラジオ』(上柳昌彦、三才ブックス:2018、9、1)

著者は、元ニッポン放送アナウンサー。今もアナウンサーとして仕事を続けている。

1957年生まれなので、私より4つ年上。一浪して立教大学へ。放送研究会。1981年入社。ということは社歴で言うと3つ先輩、ほぼ同世代の先輩だ。しかし「東京の」「ラジオ局」のアナウンサーということで、不勉強な私は、失礼ながらお名前を存じ上げなかったが、ツイッターでフォローさせてもらっている放送作家の河野虎太郎さんの情報で知り、購入、読んでみた。

タイトルの「定年ラジオ」は、早稲田大学の学生だった頃に一緒に仕事をした「いとうせいこう」さんの「想像ラジオ」から取ったそうだ。

上柳アナは「オールナイトニッポン」(ANN)も担当されて、ビートたけし、高田文夫、笑福亭鶴瓶、所ジョージ、明石家さんま、永六輔、久米宏、テリー伊藤をはじめとする大御所や、中島みゆき、桑田佳祐、久保田利伸等々のミュージシャンとの交流は、煌めくばかり。桑田さんの初監督作品、あの「稲村ジェーン」にも出演していたというのだから驚く。見ましたよ、映画。出てたっけ?

定年を機に、これまでのアナウンサー人生をまとめた自伝。様々な著名人と一緒に番組を担当してきたということがよく分かったが、感想としては、

「やはりアナウンサー。自分のことを書いているようで、一緒に仕事をしたタレントさんたちのことを書いている」

という感じが。相手を立ててしまう「アナウンサーとしての習性」が文章にも表れている。自分のことを書いても、誰も興味を持たないだろうという感じで、つい著名人との交流について書いてしまうのかもしれないが。その交流の話も「へー、そうだったのか」と興味深いのと、やはり「テレビとラジオは違うなあ」ということも。買収騒ぎのあった渦中の「ニッポン放送社員」として、当時の状況などについても書かれていて興味深い。定年と時を同じくして「前立腺がん」が判明、「ダヴィンチ」を使った内視鏡手術を受けた話も!

また、新人当時、東京にいながら「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」のリスナーであったというのもビックリ!「ぬかる民」だったのですね!

それと、もう一つビックリしたのは、ちょうどこの本を読み終える日の「ミヤネ屋」で、宮根さんが新大関の貴景勝に生でインタビューしている様子を生中継をしたのだが、その中で新大関が、

「相撲を取っている時の自分を、少し上から客観的に見ることができる」

というような話をしていた。まさにその話が、この本でも出て来るのだ!

少し長くなるが引用する。

「今も伊集院さんと合うと、必ずその頃の話になり『あの時上柳さんと話していたら「本番中、調子のいい時はマイクに向かっている自分の姿を、もう一人の自分が上から見ていることがあるんだよぉ」と言われたことを覚えています』と言われる」

「後に元ヤクルトスワローズの古田敦也さんが『もう一人の自分が、肩の後ろ辺りから見ている』と言い、大リーガーのイチロー選手が『自分の斜め上にはもう一人の自分がいて、その目で自分がしっかりと地に足がついているかどうかをちゃんと見ていなければならない』という趣旨のことを述べていることを知った。このことを鶴瓶さんに話した時に『うえちゃん、それは世阿弥の言葉にあるでぇ』と教えてもらった。役者は舞台の上野自分の姿を見ることが出来ない。だからこそ客観的に観客席からの目で自分を観ることが大切だと説く『離見の離』という言葉だ。」(110~111ページ)

一流の人は、同じ感覚を共有しているのだなと思った。

また、「そうそう!」と共感した部分は、「超二流」という言葉について書かれたところ。

「未来永劫その名が残る一流のラジオパーソナリティになることは遠い昔に諦めている。ならばと『超二流』を目指して悪戦苦闘した結果が、この本に書いた様々なお間抜けなすったもんだであったというわけだ。ちなみに『超二流』とは野村克也さんが監督時代に残した『一流は無理でも超二流にはなれる』という言葉から来ている。」(213ページ)

そうだったのか!私はそれは知らないままに、入社時の社報に「超二流のアナウンサーになる」と書いていたが。同じ思いの人がいたのですね!

勉強になった一冊でした。

あ、誤字・脱字も発見した。

×「見城美恵子」→〇「見城美枝子」(52ページ)

×「『また呼んでくださいね』と言ってもう事が

→〇「『また呼んでくださいね』と言ってもらう事が」」(147ページ)

×「一件一件店の中を覗き込んでは」→〇「一軒一軒店の中を覗き込んでは」(154ページ)

ぜひ、第2刷では修正を!


star4

(2019、3、27読了)

2019年3月28日 20:39 | コメント (0)