新・ことば事情
7115「破天荒」
内田裕也さん(79)が3月17日に亡くなったことを「ミヤネ屋」でお伝えした際に、
「破天荒」
という表現を " "を付けて「"破天荒"」と使いました。
「荒くれ者」「型破り」「豪快」
というニュアンスです。しかし本来の「破天荒」の意味は、
「(「天荒」は、天地未開の時の混沌たるさまで、これを破りひらく意)今まで誰もしなかったことをすること。未曽有。前代未聞。(例)破天荒の大事業」(『広辞苑・第7版』)
です。『精選版日本国語大辞典』には
「唐代に荊州から官吏の採用試験の合格者が一人も出ず、天荒と呼ばれたが、大中年間(846ー860年)に劉蛻(りゅうぜい)が初めて及第したので、それを天荒を破ったと称したという。」
とありました。
しかし『三省堂国語辞典・第7版』では2番目の意味として、
「【2】(俗)型破りで豪快なようす。(例)破天荒な人」
と、新しい意味を載せています。『三省堂現代新国語辞典・第6版』も2番目の意味で、
「【2】(俗用で)型破りだ。(例)「破天荒ないきざま」(注意)【1】が本来の意味」
と(注意)付きで載せています。
この意味を載せている手元にある国語辞典では、
『三省堂国語辞典・第7版』と『三省堂現代新国語辞典・第6版』
だけで、『新明解国語辞典』には、わざわざ、
「(単に豪快で大胆な性格の意に用いるのは誤り)」
と書いています。
また、漢字学者の阿辻哲次氏は、2017年9月10日付の「日本経済新聞」のコラム「遊遊漢字学」の中で、
『今の日本語では、単に「前代未聞」とか「驚くべき」という意味に使われている。「破天荒な偉業」というのは正しい使い方なのだが、「がんばっていた社員を離島の営業所に左遷するのは、破天荒な人事だ」というのは、語源から考えれば正しい使い方ではないことになる。』
と記しています。(『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『明鏡国語辞典』『現代国語例解辞典』『岩波国語辞典』『新潮現代国語辞典』『旺文社標準国語辞典』には載っていませんでした。)
『共同通信記者ハンドブック第13版』の「誤りやすい語句」(486ペー)には、
「破天荒(注)本来はこれまでになし得なかったことをすることで、未曽有と同義。近年意味が拡大し、豪快で大胆な人の様子を表す場合にも使われている。」
と、注意を促しています。
もし、言い換えるとすると、
「野放図、無軌道、型破り」
と言ったところですかねえ?