新・ことば事情
7109「『方たち』がおかしく感じる理由」
「平成ことば事情7065」で書いた、
「方たち」
という言葉使い。「おかしい」と私は感じたのですが、その理由について考えてみました。普通は、
「人たち」
か、または、
「方々(かたがた)」
を使いますね。
「方」は"敬称"ですが、「人」は"敬称"ではありません。
そして、「たち」にも"敬意"がありません。
"敬称"の「方」の後に、"敬意"のない「たち」を組み合わせるのは、「重箱読み」や「湯桶読み」と同じく、本来は違和感のある表現ですね。
その意味では、安倍首相が、
「こんな"人たち"に、負けるわけにはいかないんです」
と言った、
「こんな"人たち"に」
には"敬意"がないので正しい使い方です、内容は別にして。
もっと"敬意"と"品位"をなくすと、
「こんな"奴ら"に、負けるわけにはいかへんのや!」
と言うように「奴ら」になりますね。なんで大阪弁になっとるんや!
また、もしこれが、
「こんな"方々"に負けるわけにはいかないんです」
と言ったのなら"慇懃無礼"ですし、
「こんな"方たち"に負けるわけにはいかない」
は"卑屈な感じ"の中途半端な表現になるでしょう。